ホロコーストに関与したアドルフ・アイヒマンの裁判が行われていたのと同時期に実施され、世界を震撼(しんかん)させた実験の全貌を描く実録ドラマ。権威への服従心理の実験をし、人間の隠された本性を科学的に実証した心理学者スタンレー・ミルグラム氏を『ニュースの天才』などのピーター・サースガードが演じるほか、『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』などのウィノナ・ライダー、『スター・トレック』シリーズなどのアントン・イェルチンらが共演。『ナディア』などのマイケル・アルメレイダがメガホンを取る。
あらすじ:1960年代、心理学者スタンレー・ミルグラム(ピーター・サースガード)によってある実験が行われる。それは電気ショックを用いて権威者の指示に従う人間の心理状態を調べることで、ホロコーストのメカニズムに迫るためであった。平凡な市民でも一定の条件下では非人道的な行為をすることを科学的に実証した結果は、社会に衝撃を与え……。
<感想>1月7日に公開された「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」では、ナチスの最重要戦犯アドルフ・アイヒマンは1960年に潜伏先のアルゼンチンでイスラエルの諜報機関モサドに拘束され、翌61年にエルサレムで歴史的な裁判にかけられた。本作は、このアイヒマン追跡に大きな役割を果たしたドイツ人検事フリッツ・バウアーの知られざる孤高の闘いを描いた歴史サスペンス・ドラマだった。
不屈の主人公であるナチス戦犯の告発に、執念を燃やしていた検事長のフリッツ・バウアーを演じる「ヒトラー暗殺、13分の誤算」のブルクハルト・クラウスナーの、演技が実にチャーミングで良かった。
こちらでは、ホロコーストに衝撃を受けたユダヤ人の社会心理学者である、スタンレー・ミルグラムが、人間は他人に対する残虐行為をどこまで許容できるか、という実験を行うのだ。主演のピーター・サースガードが、カメラ=観客に向かって自らナレーションするという変わった趣向であります。妻には、パーティで知り合ったウィノナ・ライダーが扮して、やけにガリガリに細い。
これは、多分に小劇場演劇的な映画であると思う。アイク、ケネディの時代に行われた、この実験の学問的価値や、人間の残虐行為の抑制をどれだけ有効かは判らないが、ベトナム戦争、アフリカの民族抗争、パレスチナ紛争など、人間の野蛮な行動は、世界中でその後も絶えることなく続いている。
確かに、服従心理実験の追求としては客観性が薄すぎるようだ。突然カメラ目線で喋り出したり、書き割りのような背景を作った演出も、特に面白いとは思えなかった。
善良な人間に金を払って実験と称して、クイズ式に壁の向こうにいる人物に問題を言う。答えがバツなら電流を流すボタンを押すというのだが、それを何度もテストと称して繰り返し、答えないと電流を高くして流すボタンを押すのだ。壁の向こうにいる人間は、本当は電流など流れてないのに、外しているから。「あっとか、ギャーとか、心臓が痛いとか」その内に声がしなくなるのだ。だから、中には、もうやめると言って帰る人もいるのだ。
そうした手法を使って劇中のミルグラム博士が、自分の実験の正当性を訴えれば訴えるほど、逆説的に浮かび上がって来るのは、正当性がないとはいわないが、正当性を信じるがゆえの彼の狂気であるが、それは意図的にされたものだったのかどうかだ。中には、このような実験とは思わなかった。騙されたと、詐欺行為だと訴える人もいる。
ミルグラム博士の実験は確かに「アイヒマン・テスト」とも呼ばれるのだが、邦題がちょっと狙い過ぎじゃないかと思う。「服従の心理」に詳しく述べられた、社会心理学史上の重大な実験の顛末を中心に、ミルグラムの特異な業績と人生を描いた伝記映画と言っていいだろう。
2017年劇場鑑賞作品・・・70アクション・アドベンチャーランキング
あらすじ:1960年代、心理学者スタンレー・ミルグラム(ピーター・サースガード)によってある実験が行われる。それは電気ショックを用いて権威者の指示に従う人間の心理状態を調べることで、ホロコーストのメカニズムに迫るためであった。平凡な市民でも一定の条件下では非人道的な行為をすることを科学的に実証した結果は、社会に衝撃を与え……。
<感想>1月7日に公開された「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」では、ナチスの最重要戦犯アドルフ・アイヒマンは1960年に潜伏先のアルゼンチンでイスラエルの諜報機関モサドに拘束され、翌61年にエルサレムで歴史的な裁判にかけられた。本作は、このアイヒマン追跡に大きな役割を果たしたドイツ人検事フリッツ・バウアーの知られざる孤高の闘いを描いた歴史サスペンス・ドラマだった。
不屈の主人公であるナチス戦犯の告発に、執念を燃やしていた検事長のフリッツ・バウアーを演じる「ヒトラー暗殺、13分の誤算」のブルクハルト・クラウスナーの、演技が実にチャーミングで良かった。
こちらでは、ホロコーストに衝撃を受けたユダヤ人の社会心理学者である、スタンレー・ミルグラムが、人間は他人に対する残虐行為をどこまで許容できるか、という実験を行うのだ。主演のピーター・サースガードが、カメラ=観客に向かって自らナレーションするという変わった趣向であります。妻には、パーティで知り合ったウィノナ・ライダーが扮して、やけにガリガリに細い。
これは、多分に小劇場演劇的な映画であると思う。アイク、ケネディの時代に行われた、この実験の学問的価値や、人間の残虐行為の抑制をどれだけ有効かは判らないが、ベトナム戦争、アフリカの民族抗争、パレスチナ紛争など、人間の野蛮な行動は、世界中でその後も絶えることなく続いている。
確かに、服従心理実験の追求としては客観性が薄すぎるようだ。突然カメラ目線で喋り出したり、書き割りのような背景を作った演出も、特に面白いとは思えなかった。
善良な人間に金を払って実験と称して、クイズ式に壁の向こうにいる人物に問題を言う。答えがバツなら電流を流すボタンを押すというのだが、それを何度もテストと称して繰り返し、答えないと電流を高くして流すボタンを押すのだ。壁の向こうにいる人間は、本当は電流など流れてないのに、外しているから。「あっとか、ギャーとか、心臓が痛いとか」その内に声がしなくなるのだ。だから、中には、もうやめると言って帰る人もいるのだ。
そうした手法を使って劇中のミルグラム博士が、自分の実験の正当性を訴えれば訴えるほど、逆説的に浮かび上がって来るのは、正当性がないとはいわないが、正当性を信じるがゆえの彼の狂気であるが、それは意図的にされたものだったのかどうかだ。中には、このような実験とは思わなかった。騙されたと、詐欺行為だと訴える人もいる。
ミルグラム博士の実験は確かに「アイヒマン・テスト」とも呼ばれるのだが、邦題がちょっと狙い過ぎじゃないかと思う。「服従の心理」に詳しく述べられた、社会心理学史上の重大な実験の顛末を中心に、ミルグラムの特異な業績と人生を描いた伝記映画と言っていいだろう。
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