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しゃぼん玉★★★

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乃南アサの同名ベストセラーを宮崎県北部の椎葉村(しいばそん)を舞台に映画化したご当地ムービー。女性や老人ばかりを狙った無軌道な犯罪を繰り返してきた青年が、ひょんなことから流れ着いた山奥の村で、村人の温かな心に触れて改心していくさまを描く。主演は林遣都と市原悦子、共演に藤井美菜、相島一之、綿引勝彦。監督はTV「相棒」シリーズの東伸児。本作が劇場初監督となる。
あらすじ:親の愛情を知らずに育った伊豆見翔人。女性や老人を狙って通り魔や強盗傷害を繰り返し、当てのない逃亡生活を続けていた。ある日、宮崎県の山深い椎葉村で道端に倒れていた老婆スマを偶然助けたことがきっかけで、彼女の家に居着いてしまう。そして、彼をスマの孫だと勘違いした村の人々や、出戻りの美女・美知との思いがけない交流が始まる伊豆見だったが…。

<感想>若者が、女、老人を襲いバックを引ったくりして生活をしているようだ。最後のバック引ったくりは、若い女に暴れられてナイフで傷つけたらしい。冒頭が、余りにもハードだったので、どうなることかと固唾を飲んで見ていたら、どうやら、この若者は山奥の田舎村まで歩いてきたのだろうか。どこで、道路の真ん中にバイクが横倒しになっているのを発見。バイクを盗んで行こうとすると、助けてくれという老婆の声が道端から聞こえる。若者は、そのまま知らんぷりしてバイクを盗み走ろうとするも、余りにも切なく今にも死にそうな老婆の声がするので、道端を見ると老婆が頭にケガをして、足も歩けないのだ。このままにして、バイクだけを盗んで行くに忍びなく、つい老婆をおんぶして助けてしまう。

それからが、その老婆の家に居候をして、孫という噂が広まり毎日お昼まで寝てばかり、何にもしないでテーブルにある飯を食う。お婆さんは、自分の田んぼや畑に朝から出かけて、ケガの方もそんなに大事には至らなかったのだろう。

近所のおばさんたちが、家庭料理を作ってスマ婆ちゃんの家へお喋りに来る。犬がいるのに、散歩にくらい連れてってもいいだろうに。それに、お婆さんに付いていって、畑の仕事をするもよし。それが、何日か家で寝てはブラブラして、本当にダメ人間になってしまう
それに、婆さんが働きに行っている隙に、仏壇の下や引き出し、とお金がないかあら探しである。金目のものがないか、現金でもあったらそれを盗んでまたもや逃げるのだろう。

村のシゲ爺様が車で来て、山へ連れて行くというのだ。バイト料はいくらくれるのか、とか聞くと、山で採ったものを祭りの時に売れば収入になるというのだ。この辺は自供自足で、現金を稼ぐのには、米や野菜をたくさん作って農協へ納めて金にするのだろう。
何となく地方振興企画映画を多数扱うために、地方よいとこ一度はお出でみたいなものを良く観る。しかし、単なる地方アピールを超えて、都会では生が次代までも持続可能なものとして感じられない。

山間の寂れた村で、細々と農家で生計を立てている老婆。何処かにお金が隠してあるだろうと、物色する若者に、何故に働かないのか。手に汗して1日働いてこそ、その働いた額に見合った手当が出るのに。手っ取り早くに、他人の金を引ったくり、そんな毎日を送る生活は、その内にバチが当たる。

婆さんのいない間に家探しをして、金がないかと冷蔵庫を開けるとそこに札束があった。それを見つけて手にした時、婆さんが帰ってきて、「泥棒、お前はやっぱし泥棒なのか」と。そこへ、婆さんのドラ息子が帰ってきて、金の無心だ。家探しをして暴れまくる息子に、つい居候が口を出し殴られて首を絞められる。婆さんが助けてくれたからいいようなものの。
この家の婆さんもいい人で、若者の箸の持ち方を教えて、治すようにと諭す。そのことが、人生をやり直すことのメタファーとなるようにと。

それに、主人公の姿は、平家落人のお祭りの由来と重なってゆく。ひなびた村のお祭りも素敵で、村の若い娘と知り合いも、その娘は、街で働いている帰り道で、引ったくりに遭い乱暴されたことが原因で、故郷へ帰って来たという。その話を聞き、己のしたことを反省でもするのか。
その彼が、老婆と出会って、何も聞かないでネグラとごはんを食べさせてくれた。いつまでも居候はできない。金目のものはないのか、と暇さえあれば家探しをするバカ者だ。「働かざる者、食うべからず」誰かが言った言葉だ。

椎葉村の平家の落人の祭りも賑やかで、村人総出で楽しそう。婆ちゃんが若者のことを全て飲み込んでいて、若者が道を誤らないようにと、進むべき道を教えてくれ、それゆえに映画の冒頭と終盤の彼の成長を、去ってゆく後ろ姿で表現しているようにも見えた。今までの俺はしゃぼん玉のように、風にのって何処かへ飛んでいく。しかし、これからはこの婆ちゃんの家が、俺の帰る場所になった。刑務所へ入って出てくるまで、婆ちゃん生きてておくれ、「待っているよ」という言葉が温かいのだ。

同じ後ろ姿なのに、その意味が「逃亡」と「前進」と異なっている点は、秀逸であると思う。しかし、桃源郷のような山間の村での暮らしが描かれる本作。宮崎県の椎葉村の自然は、美しく清浄で、荒む気持ちが消えていく。それに、雄大な山山には、人の心を包み込み、穏やかな気持ちにさせてくれるのだ。

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