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シージャック ★★.5

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「偽りなき者」の脚本を手がけたデンマークの気鋭トビアス・リンホルムがメガホンを取り、身代金目的の海賊にシージャックされたデンマーク商船の運命をリアルに描いた心理サスペンス。
あらすじ:あと数日で家族に会える――。長い航海が終わりに近づき、下船の日を待ちわびる料理人ミケルを載せた商船が、インド洋沖で突然海賊にジャックされた。ミケルと仲間たちは狭い船内に軟禁され、常に海賊たちから銃口を向けられる状況に陥ってしまう。一方、彼らが所属するデンマークの船舶会社では、「海賊に乗り込まれる」との連絡を最後に、船との通信が途絶えていた。自社の船舶がジャックされたと知った経営者のペーターは、乗組員の命を他人に預けることはできないと、自らが海賊と交渉することを決断するのだが…。極限状態の船内でサバイバルを続けるミケルと、遥か7,000km先のオフィスで決死の交渉に挑むペーター。愛する家族と仲間のため、生死をかけた2人の戦いが始まる!2012年・第25回東京国際映画祭コンペティション部門で上映。
<感想>海賊による貨物船シージャックを描いたデンマーク映画で、佳作ではあるがドキュメンタリーのようなリアルさに満ちた描き方です。監督は、過去に実際にシージャックされた貨物船を撮影に使用し、実際に海賊が頻発するインド洋沖合で撮影を敢行、根性が入っていますよね。
1990年代から急増した現代版海賊とは、停泊中か、あるいは航行中の貨物船やタンカーに乗り込んで、乗組員を日地自治にとって身代金を要求するという、いわば誘拐ビジネスである。なので、イスラム原理主義テロリストのように異教徒というだけで虐殺するとことはないので、まだマシな連中のようだ。まぁ、そういうように思えてしまうんだから、困った時代になったものです。
とにかく、2005年にはマレーシア領海内でのシージャックで、日本人を含む船員3人が拉致されたり、この事件は6日間でスピード解決。海上自衛隊がソマリア沖の多国籍監視任務に派遣されたり、日本国内でソマリア人海賊裁判が行われたりする昨今、日本にとっても他人事ではないテーマと言えますね。

この映画には、政府も軍も警察も登場しません。主だった登場人物は、料理人のミケルに代表される捕らわれた船員6人。そして海賊の交渉人のオマール。対して、海運会社社長ペーターと重役たちだけである。またイスラエルなら「テロリストとは交渉しない」と即決して軍隊を送り込むだろうが、社長のペーターは身代金を払ってなんとしても船員を救出しようとする。最初に提示した金額が1500万ドルで、会社側がとてもそんな高額には応じないと返事する。
だからハリウッド映画のように、特殊部隊が突入して解決という展開もない。これは人質解放交渉に立ち向かう民間企業トップの、そのリーダーシップと責任を描いた作品なのです。
社長ペーターの業務描写で「3.11 大震災」の影響が語られていたり、貨物船が占拠した海賊たちは、まず腹が減っているとみえて、メシを食いたがるといったような、アフリカ系の海賊でミケルがチャーハンのようなものを作る。それに食料も不足してみんなで魚釣りをして大きな魚を釣り上げ、その魚を料理して海賊も船員も仲良くなり歌を歌ったりする。(ハッピーバースディの歌)そんなちょっとしたディテールの積み重ねが素晴らしい。
特に会社側が、船員家族への説明会の最中に、携帯ゲームに熱中している少女の描写が、映画を柔らかくしてお見事。または、清潔なデンマーク本社と汚い汚臭が漂う船内という、船の中ではミケルのランニングが薄汚れ非常に汚い、それが二つの現場を繋ぐ衛星電話の出し方とFAXの使い方も最高にいい効果を出している。
ハードボイルドとすら言える静かな映像、しかし、会社側が海賊に支払う身代金の金額の折り合いが決まらず、127日目に330万ドルでやっと交渉成立。
だが、海賊たちは小舟に乗ってさっさと引き上げるように見えたのだが、胃潰瘍で苦しんでいる船長を機関銃で撃ち殺すとは。長く重い悔いと恨みを背負った、ミケルの慟哭が響いてくるかのようなラストに戦慄がはしります。
2013年DVD鑑賞作品・・・25   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ


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