フレドリック・バックマンの同名ベストセラーを映画化したスウェーデン製ハートウォーミング・コメディ・ドラマ。愛する妻に先立たれ、長年勤めた職場もクビになった孤独な不機嫌オヤジが、近所に越してきた移民家族に振り回されながらも、彼らとの思いがけない交流によって再び生きる希望を見出していく姿をユーモラスなタッチで綴る。主演は「アフター・ウェディング」のロルフ・ラッスゴード。監督は「青空の背後」のハンネス・ホルム。
あらすじ:最愛の妻ソーニャを病で亡くし、長年勤めてきた仕事も突然のクビを宣告されてしまった59歳の孤独な男オーヴェ。すっかり絶望し、首を吊って自殺を図ろうとした矢先、向いに大騒ぎをしながらパルヴァネ一家が引っ越してきた。自殺を邪魔されておかんむりのオーヴェだったが、陽気な主婦パルヴァネは、そんなことお構いなしにオーヴェを積極的に頼るようになっていく。何度も自殺を邪魔された上、遠慮のないパルヴァネに最初は苛立ちを隠せないオーヴェだったが…。
<感想>原作はスウェーデンの小説家、フレドリック・バックマンのデビュー作にして世界的なベストセラーである。まだ小説は読んでいませんが、最新作の「素晴らしきかな、人生」を観て気になって鑑賞した。59歳の孤独な男オーヴェが主人公で、頑固で横柄な老人で、近所では変人扱い、43年間勤めあげた職場も解雇される。年齢を知って驚いた。まだ59歳とは、私の方が年上だったから。風貌から見て俳優さんが老け顔の老人っぽいので仕方ないが、ロルフ・ラスゴードの重々しい声と語りはいいとして、問題は性格であり彼の頑固さは単に加齢によるものではない。
最愛の妻に先立たれ、孤独で偏屈な老人に進んでなろうとするかのように、共同住宅地域内の規則厳守を要求し、ゴミの分別をしない住民に腹を立てて、区域内に侵入してくるバイクや自動車に目くじらを立てるのだ。世間や社会に幻滅しつつ、彼はとうに絶望している。残された希望は少しでも早く天国の妻野もとに向かうこと。現世には何の未練もない彼は、様々な手段で自殺を試みる。
主人公が失業を機に亡き妻のもとへ旅立とうと、やたらと自殺未遂を繰り返す序盤は、ブラックでシニカルな雰囲気があるが、次第にヒューマンな湿りっけが映画を支配していく。
好みのタイプの映画ではないが、コメディ映画の常として、彼の自殺はきまって邪魔されるのだ。邪魔の主は隣に引っ越してきたパルヴァネ一家である。
ハシゴのレンタル、病院への送迎、娘たちの子守、車の教習などの困りごとが次々と持ち込まれる。イランからの移民であるパルヴァネは妊娠中で、オーヴェの偏屈ぶりにも臆することなく関わり続けてくる。彼女の大らかさや「空気を読まなさ」は、物語の大いなる救いとなっている。
偏屈老人が他者と触れ合うことで心を開いていく、という設定事態は「クリスマス・キャロル」や「グラン・トリノ」まで傑作が数多く存在する。いわばハズレのない王道パターンの一つであるからだ。ですが、本作での新しさは、スウェーデンの社会的背景を絡めてあるところなんですね。だから、主人公オーヴェの孤独の背景には、しばしばスウェーデンの社会の暗部が見え隠れする。今でこそ世界最高水準の福祉国家と評される国ではあるが、最初から完璧だったわけではない。
事故で父親を亡くした彼が、長年住んでいた家は、おそらくは建築基準を満たしていないなどの理由で取り壊しを勧告される。近所で火事が起こった時には、オーヴェの自宅まで延焼するが、居合わせた役人がわざと消火作業を遅らせたために全焼してしまう。
住居を失った傷心の彼が、たまたま乗っていた列車の同じコンパートメントで出会ったのが、後に妻となる女性、ソーニャ(イーダ・エングウェル)がすこぶる魅力的だった。陽気で知性的なソーニャとの結婚生活はオーヴェの人生に幸福のピークをもたらすのであります。
しかし、不幸な事故により、ソーニャは車いす生活となってしまう。彼女は、その障害ゆえに才能に見合った職場を中々得られなかった。当時のスウェーデンの福祉事情は、現在よりもはるかに遅れていたのだった。こうした経験を経て、行政側の人間に対するオーヴェの不振と不満と怒りは決定的なものになっていくわけ。
個人に対する福祉の充実ぶりを象徴するシーンがある。オーヴェが解雇される際に、「餞別」と称してシャベル1本渡される。こんなことが可能なのも、年金制度が極めて充実しているからにほかならない。
北国の猫もいい。その極寒に耐えうるべく分厚く膨らんだ毛をまとっている。そのもこもことした毛皮で着ぶくれした猫が、意外にも人懐っこくて、人間の傍を付いて回るのが可愛い。最愛の妻との思いでや、隣人たちとの触れ合いが、あgン子老人の心を徐々にほぐしていく様が、丁寧に語られテイクが、その中に動物が一匹加わっただけで、心の動きも見え方も大きく前進するのだ。
ラストで心臓の悪いオーヴェは、急死するが、とにかく邪魔者扱いされがちな高齢者や、移民に対する温かい絵エールのような作品であります。
2017年劇場鑑賞作品・・・45映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング/
あらすじ:最愛の妻ソーニャを病で亡くし、長年勤めてきた仕事も突然のクビを宣告されてしまった59歳の孤独な男オーヴェ。すっかり絶望し、首を吊って自殺を図ろうとした矢先、向いに大騒ぎをしながらパルヴァネ一家が引っ越してきた。自殺を邪魔されておかんむりのオーヴェだったが、陽気な主婦パルヴァネは、そんなことお構いなしにオーヴェを積極的に頼るようになっていく。何度も自殺を邪魔された上、遠慮のないパルヴァネに最初は苛立ちを隠せないオーヴェだったが…。
<感想>原作はスウェーデンの小説家、フレドリック・バックマンのデビュー作にして世界的なベストセラーである。まだ小説は読んでいませんが、最新作の「素晴らしきかな、人生」を観て気になって鑑賞した。59歳の孤独な男オーヴェが主人公で、頑固で横柄な老人で、近所では変人扱い、43年間勤めあげた職場も解雇される。年齢を知って驚いた。まだ59歳とは、私の方が年上だったから。風貌から見て俳優さんが老け顔の老人っぽいので仕方ないが、ロルフ・ラスゴードの重々しい声と語りはいいとして、問題は性格であり彼の頑固さは単に加齢によるものではない。
最愛の妻に先立たれ、孤独で偏屈な老人に進んでなろうとするかのように、共同住宅地域内の規則厳守を要求し、ゴミの分別をしない住民に腹を立てて、区域内に侵入してくるバイクや自動車に目くじらを立てるのだ。世間や社会に幻滅しつつ、彼はとうに絶望している。残された希望は少しでも早く天国の妻野もとに向かうこと。現世には何の未練もない彼は、様々な手段で自殺を試みる。
主人公が失業を機に亡き妻のもとへ旅立とうと、やたらと自殺未遂を繰り返す序盤は、ブラックでシニカルな雰囲気があるが、次第にヒューマンな湿りっけが映画を支配していく。
好みのタイプの映画ではないが、コメディ映画の常として、彼の自殺はきまって邪魔されるのだ。邪魔の主は隣に引っ越してきたパルヴァネ一家である。
ハシゴのレンタル、病院への送迎、娘たちの子守、車の教習などの困りごとが次々と持ち込まれる。イランからの移民であるパルヴァネは妊娠中で、オーヴェの偏屈ぶりにも臆することなく関わり続けてくる。彼女の大らかさや「空気を読まなさ」は、物語の大いなる救いとなっている。
偏屈老人が他者と触れ合うことで心を開いていく、という設定事態は「クリスマス・キャロル」や「グラン・トリノ」まで傑作が数多く存在する。いわばハズレのない王道パターンの一つであるからだ。ですが、本作での新しさは、スウェーデンの社会的背景を絡めてあるところなんですね。だから、主人公オーヴェの孤独の背景には、しばしばスウェーデンの社会の暗部が見え隠れする。今でこそ世界最高水準の福祉国家と評される国ではあるが、最初から完璧だったわけではない。
事故で父親を亡くした彼が、長年住んでいた家は、おそらくは建築基準を満たしていないなどの理由で取り壊しを勧告される。近所で火事が起こった時には、オーヴェの自宅まで延焼するが、居合わせた役人がわざと消火作業を遅らせたために全焼してしまう。
住居を失った傷心の彼が、たまたま乗っていた列車の同じコンパートメントで出会ったのが、後に妻となる女性、ソーニャ(イーダ・エングウェル)がすこぶる魅力的だった。陽気で知性的なソーニャとの結婚生活はオーヴェの人生に幸福のピークをもたらすのであります。
しかし、不幸な事故により、ソーニャは車いす生活となってしまう。彼女は、その障害ゆえに才能に見合った職場を中々得られなかった。当時のスウェーデンの福祉事情は、現在よりもはるかに遅れていたのだった。こうした経験を経て、行政側の人間に対するオーヴェの不振と不満と怒りは決定的なものになっていくわけ。
個人に対する福祉の充実ぶりを象徴するシーンがある。オーヴェが解雇される際に、「餞別」と称してシャベル1本渡される。こんなことが可能なのも、年金制度が極めて充実しているからにほかならない。
北国の猫もいい。その極寒に耐えうるべく分厚く膨らんだ毛をまとっている。そのもこもことした毛皮で着ぶくれした猫が、意外にも人懐っこくて、人間の傍を付いて回るのが可愛い。最愛の妻との思いでや、隣人たちとの触れ合いが、あgン子老人の心を徐々にほぐしていく様が、丁寧に語られテイクが、その中に動物が一匹加わっただけで、心の動きも見え方も大きく前進するのだ。
ラストで心臓の悪いオーヴェは、急死するが、とにかく邪魔者扱いされがちな高齢者や、移民に対する温かい絵エールのような作品であります。
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