リメイク版「死霊のはらわた」のフェデ・アルバレス監督が再びサム・ライミ製作の下で撮り上げた戦慄のサスペンス・スリラー。盲目の老人の家に盗みに入った若者3人が、相手の思わぬ反撃に遭い、逃げ道を塞がれた真っ暗闇の家の中で想像を絶する恐怖に見舞われるさまを緊張感あふれる筆致で描き出す。出演は若者3人に「死霊のはらわた」のジェーン・レヴィ、「プリズナーズ」のディラン・ミネット、「イット・フォローズ」のダニエル・ゾヴァット。彼らを恐怖のどん底に突き落とす盲目の老人に「アバター」のスティーヴン・ラング。
注意:全部ネタバレで書いてます。結末を知りたくない方には、ご了承下さい。
<感想>この映画は、観る者の価値観をゆさぶる作品であります。この映画がホラー・サスペンス・スリラーの境界にまたがるような、快作となっているのは、良い感じの節度と思慮深さがあったからだろう。とても思慮深い、恐怖の88分でした。いったい、正しいのは誰なのか?・・・。
舞台はデトロイトであり、空き家だらけの街並みに一軒だけ残る小さな家。かつて、交通事故で娘を亡くし、その賠償金を貯め込んでいるという噂の家に、コソ泥まがいの空き巣を繰り返してきた主人公の若者3人が忍び込む。
物語の中心が、この人生に行き詰った3人の若者、ロッキー(ジェーン・レヴィ)にその恋人アレックス(ディラン・ミネット)、そしてマニー(ダニエル・ゾヴァット)である。この3人、リーダーはマニーのように見えるのだけれど、実際はロッキーを中心に成り立っているよう。何故なら、彼らが盲目の老人(ダニエル・ゾヴァット)の家に忍び込むきっかけを作ったのがロッキーだから。彼女の両親は、生活能力がなくて、妹の世話をすべてロッキーに任せっきりだから。ロッキーはこの荒廃として街デトロイトを、そして両親から離れて妹と新たな人生を歩み始めるために、資金が必要だったから。
この3人の関係性は非常に興味深い。例えば老人の家に侵入する時に、率先して動くのがロッキーで、よじ登って天窓をこじ破り、スルリと身を家の中へと入り込む。そして、玄関のドアを開けて2人を入れる。いくら、アレックスが「やめろ」と言っても彼女は進んでやってしまう。
こうして、彼らは出口の見えない闇に足を踏み入れていくのだ。ここで重要なのが、彼らの生死を決めるのは老人ではなく、ロッキーだということ。もちろん老人は彼らにとって危険な人物であり、命がけで何かの秘密を守ろうとしている。
けれども、前に進むか否かを決めるのはロッキーであるから。彼らは絶妙なバランスで成り立っているに見えるのだが、観ている観客としては、男2人が泥棒として頑張らなくてはと思っていた。
物語の前半では、確かに彼らは強盗で悪人、老人は被害者で正しい人間に見える。だが、まともに働かないでいる3人は、強盗という犯罪を犯しているわけであり、盲目の老人の家には賠償金が金庫にあるという情報を元に大金をゲットして「人生の一発逆転だぜ!」と目論んでいたのだ。
しかし、彼らのそんな甘い考えが、軍隊帰りの老人の屈強な肉体と超絶な聴覚、そしてサイコパスな罠の数々が、無情にたたき潰していくわけ。それに獰猛な番犬が、狂犬病みたいで怖かった。この設定だけでも、ゴアな描写がいくらか思いつけそうなのだが、拍手したいのは、アルバレス監督が優先したのが何よりもリアリティだったと言うこと。
ようは老人がどのくらいモンスターに設定するかという点であり、そのさじ加減はかなりヘビーであった。ホラー映画の定石として、得体のしれない凶悪な人気キャラが生まれれば、それは次回作でも商売の可能性に繋げるからである。
しかし、男のマニーが拳銃を持っており、それを老人に向けるのだが、感が鋭い老人は反対にその拳銃をもぎ取り、マニーを撃ち殺してしまう。それを見た2人は驚き、逃げるのだが、ただ逃げては損だとばかりに、女のロッキーが金庫を見つけて札束をリュックに詰め込み、それに恋人のアレックスがロッキーが危険なのを察知すると、老人の目を自分に向けるという連携プレイ。
地下室を見つけてそこへ逃げ込むロッキーだが、そこで発見したのが、老人が交通事故で娘を死なせた容疑者の女で、親が示談金を払って罪を逃れたらしい女の子。死んだ自分の娘と同じくらいの女の子を誘拐拉致して地下室へ閉じ込めていたわけ。
それだけで済めばいいものが、じつは変態爺で、その女の子に自分の精液を冷蔵庫の中に保管しており、女の子をレイプして妊娠させたくないと、自分の精液をその女の子に注入して妊娠させたというわけ。これには、観客もびっくらこくし、ドン引きですよ。盲目の老人の家に強盗に入って、なけなしの金を盗むなんて最低なやつらだと思っていたのに。
このラストの締めくりが、どうなるのかとかたずを呑んで見守る中、ロッキーが女の子を助けようと、地下室から外へ出る扉をこじ開けると、そこには老人が待っていて、拳銃で撃ってくるではないか。そして、その拳銃の弾に当たって死んだのが、その誘拐されて監禁され、妊娠をしていた女の子。だから、老人はそのお腹の子供が自分の子供で、生き甲斐に育てようと思っていたわけで。誤って撃ち殺してしまった女の子の代替えにと、ロッキーをはがいじめにして、その女の子の身代わりに老人の子供を妊娠させようと、必死になって冷蔵庫から自分の精液を出し注入しようとする。もちろん、銃で殺された監禁娘は、地下室の床板を開けて、そこへ埋めてしまうのだ。
飛んだエロ変態爺の結末はと、そう、アレックスがまだ生きていて、ロッキーを助けに来るのね、でも老人を襲うも自分が老人にヤラレテしまい殺されてしまう。その間に、ロッキーが逃げるんだけど、見つかって連れ戻されるも、盲目の老人の弱点を使って、ロッキーが金を持って、何とか逃げ出すのであります。
空港にいる助かったロッキーと妹が映し出され、TVでは盲目の老人の家に2人組の強盗が入り、老人が拳銃で殺したということが報道されて、老人は病院で健康な体に戻ったということで終わるのだが、絶対にこの老人は、ロッキーを探して仕返しをすると思うよ。
ラストで、盲目の老人がまさか女子を監禁して妊娠させていたことに、観客は決して老人に対して同情はしない。助かったロッキーにしても、盲目の老人の家から、賠償金100万ドルを盗み、その金で妹と2人でロスで新しい暮らしをするのも、何だかなぁ~。それでいいのかいと、観ていて吐き気がするほど嫌ぁ~な感じが残ってしょうがなかった。
映像にしても、小さな一軒家の中で、夜中であり、行われるアクションにもかかわらず、色彩や構図は美しく、音響も絶妙なる緊張感で惹きつけるホラー・サスペンスもの。まるでスマホで自撮りをしているようなローファイ映像であり、パニック感を煽る安易な風潮とは一線を画していると感じた。
2016年劇場鑑賞作品・・・275<映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング/
注意:全部ネタバレで書いてます。結末を知りたくない方には、ご了承下さい。
<感想>この映画は、観る者の価値観をゆさぶる作品であります。この映画がホラー・サスペンス・スリラーの境界にまたがるような、快作となっているのは、良い感じの節度と思慮深さがあったからだろう。とても思慮深い、恐怖の88分でした。いったい、正しいのは誰なのか?・・・。
舞台はデトロイトであり、空き家だらけの街並みに一軒だけ残る小さな家。かつて、交通事故で娘を亡くし、その賠償金を貯め込んでいるという噂の家に、コソ泥まがいの空き巣を繰り返してきた主人公の若者3人が忍び込む。
物語の中心が、この人生に行き詰った3人の若者、ロッキー(ジェーン・レヴィ)にその恋人アレックス(ディラン・ミネット)、そしてマニー(ダニエル・ゾヴァット)である。この3人、リーダーはマニーのように見えるのだけれど、実際はロッキーを中心に成り立っているよう。何故なら、彼らが盲目の老人(ダニエル・ゾヴァット)の家に忍び込むきっかけを作ったのがロッキーだから。彼女の両親は、生活能力がなくて、妹の世話をすべてロッキーに任せっきりだから。ロッキーはこの荒廃として街デトロイトを、そして両親から離れて妹と新たな人生を歩み始めるために、資金が必要だったから。
この3人の関係性は非常に興味深い。例えば老人の家に侵入する時に、率先して動くのがロッキーで、よじ登って天窓をこじ破り、スルリと身を家の中へと入り込む。そして、玄関のドアを開けて2人を入れる。いくら、アレックスが「やめろ」と言っても彼女は進んでやってしまう。
こうして、彼らは出口の見えない闇に足を踏み入れていくのだ。ここで重要なのが、彼らの生死を決めるのは老人ではなく、ロッキーだということ。もちろん老人は彼らにとって危険な人物であり、命がけで何かの秘密を守ろうとしている。
けれども、前に進むか否かを決めるのはロッキーであるから。彼らは絶妙なバランスで成り立っているに見えるのだが、観ている観客としては、男2人が泥棒として頑張らなくてはと思っていた。
物語の前半では、確かに彼らは強盗で悪人、老人は被害者で正しい人間に見える。だが、まともに働かないでいる3人は、強盗という犯罪を犯しているわけであり、盲目の老人の家には賠償金が金庫にあるという情報を元に大金をゲットして「人生の一発逆転だぜ!」と目論んでいたのだ。
しかし、彼らのそんな甘い考えが、軍隊帰りの老人の屈強な肉体と超絶な聴覚、そしてサイコパスな罠の数々が、無情にたたき潰していくわけ。それに獰猛な番犬が、狂犬病みたいで怖かった。この設定だけでも、ゴアな描写がいくらか思いつけそうなのだが、拍手したいのは、アルバレス監督が優先したのが何よりもリアリティだったと言うこと。
ようは老人がどのくらいモンスターに設定するかという点であり、そのさじ加減はかなりヘビーであった。ホラー映画の定石として、得体のしれない凶悪な人気キャラが生まれれば、それは次回作でも商売の可能性に繋げるからである。
しかし、男のマニーが拳銃を持っており、それを老人に向けるのだが、感が鋭い老人は反対にその拳銃をもぎ取り、マニーを撃ち殺してしまう。それを見た2人は驚き、逃げるのだが、ただ逃げては損だとばかりに、女のロッキーが金庫を見つけて札束をリュックに詰め込み、それに恋人のアレックスがロッキーが危険なのを察知すると、老人の目を自分に向けるという連携プレイ。
地下室を見つけてそこへ逃げ込むロッキーだが、そこで発見したのが、老人が交通事故で娘を死なせた容疑者の女で、親が示談金を払って罪を逃れたらしい女の子。死んだ自分の娘と同じくらいの女の子を誘拐拉致して地下室へ閉じ込めていたわけ。
それだけで済めばいいものが、じつは変態爺で、その女の子に自分の精液を冷蔵庫の中に保管しており、女の子をレイプして妊娠させたくないと、自分の精液をその女の子に注入して妊娠させたというわけ。これには、観客もびっくらこくし、ドン引きですよ。盲目の老人の家に強盗に入って、なけなしの金を盗むなんて最低なやつらだと思っていたのに。
このラストの締めくりが、どうなるのかとかたずを呑んで見守る中、ロッキーが女の子を助けようと、地下室から外へ出る扉をこじ開けると、そこには老人が待っていて、拳銃で撃ってくるではないか。そして、その拳銃の弾に当たって死んだのが、その誘拐されて監禁され、妊娠をしていた女の子。だから、老人はそのお腹の子供が自分の子供で、生き甲斐に育てようと思っていたわけで。誤って撃ち殺してしまった女の子の代替えにと、ロッキーをはがいじめにして、その女の子の身代わりに老人の子供を妊娠させようと、必死になって冷蔵庫から自分の精液を出し注入しようとする。もちろん、銃で殺された監禁娘は、地下室の床板を開けて、そこへ埋めてしまうのだ。
飛んだエロ変態爺の結末はと、そう、アレックスがまだ生きていて、ロッキーを助けに来るのね、でも老人を襲うも自分が老人にヤラレテしまい殺されてしまう。その間に、ロッキーが逃げるんだけど、見つかって連れ戻されるも、盲目の老人の弱点を使って、ロッキーが金を持って、何とか逃げ出すのであります。
空港にいる助かったロッキーと妹が映し出され、TVでは盲目の老人の家に2人組の強盗が入り、老人が拳銃で殺したということが報道されて、老人は病院で健康な体に戻ったということで終わるのだが、絶対にこの老人は、ロッキーを探して仕返しをすると思うよ。
ラストで、盲目の老人がまさか女子を監禁して妊娠させていたことに、観客は決して老人に対して同情はしない。助かったロッキーにしても、盲目の老人の家から、賠償金100万ドルを盗み、その金で妹と2人でロスで新しい暮らしをするのも、何だかなぁ~。それでいいのかいと、観ていて吐き気がするほど嫌ぁ~な感じが残ってしょうがなかった。
映像にしても、小さな一軒家の中で、夜中であり、行われるアクションにもかかわらず、色彩や構図は美しく、音響も絶妙なる緊張感で惹きつけるホラー・サスペンスもの。まるでスマホで自撮りをしているようなローファイ映像であり、パニック感を煽る安易な風潮とは一線を画していると感じた。
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