2004年9月、米CBSの看板報道番組『60ミニッツII』では、再戦を目指すジョージ・W・ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑という一大スクープを特集するが、根拠となった証拠に偽造の疑いが浮上し、一転して番組の名物アンカーマン、ダン・ラザーが事実上の降板に追い込まれる一大不祥事に発展した。本作は、ダン・ラザーとともに大統領の疑惑追及で中心的役割を担った同番組の女性プロデューサー、メアリー・メイプスの自伝を基に、一連のスキャンダルの真相と、激しいバッシングの渦中で、なおもひるむことのないジャーナリストとしての信念と矜持を描き出していく社会派サスペンス。主演はケイト・ブランシェットとロバート・レッドフォード。監督は「ゾディアック」「アメイジング・スパイダーマン」などの脚本を手がけ、本作が記念すべき監督デビューとなるジェームズ・ヴァンダービルト。
あらすじ:ジョージ・W・ブッシュ大統領が再戦を目指していた2004年。ブッシュ大統領の軍歴を巡る疑惑を追及していたCBSニュースのベテラン・プロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は、その決定的な証拠を入手、ついに伝説的ジャーナリスト、ダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)がアンカーマンを務める番組でそのスクープを放送する。番組は大反響を呼ぶが、その直後、保守派ブロガーによるひとつの指摘をきっかけに、“新証拠”に対する疑惑で蜂の巣をつついたような大混乱となり、一転してダンとメアリーは釈明に追われることに。もはや軍歴そのものの疑惑は議論の外に置かれてしまい、“新証拠”の真偽のみを巡って集中砲火を浴び続けるメアリーだったが…。
<感想>何ともお堅い題名であることか、原題が「トゥルース」真実、真相だから悪くはないが、邦題としてはつまらな過ぎる。しかし、観てみると意外とこれが映画の中身とピタリと合致していて感心した次第であります。
というよりも、主人公のCBSニュースのプロデューサー、メアリー・メイプスを演じるケイト・ブランシェットの演技に始終圧倒されっぱなしだったのが印象に残る。実際に、この映画のケイトは、何かに取り憑かれてたように始終「真相」をめがけて突っ走っているのだ。目をランランと輝かせて獲物を追い求める野生の動物チーターのように。
その獲物とは、2004年にCBSニュースがスクープとして報道したブッシュの軍歴詐称疑惑である。ベトナム戦争への派兵をのがれるためのコネによる入隊と職務怠慢の疑いを立証するものだが、もし本当ならば爆弾級のスキャンダルだ。
ところが放送の終了後、報道の根拠となった文書の1枚が捏造だったと発覚。スクープの核となる資料が偽造だと批判する保守派が現れてメアリー・メイプスらCBS側は苦境に立つ。
局側は、全面謝罪し、プロデューサのメイプスと司会者のダン・ラザーがクビになり、ブッシュは大統領再選を果たした。その後にイラクや中東で起こったことについては、今更改めて振り返ることもないだろう。
プロデューサーのメイプスの自伝をもとにした実話の映画化だというが、それだけに登場するジャーナリストたちは、まるでCBSのオフィスから抜け出してきたようにリアリティーたっぷりに描いている。
伝説的アンカーマンのダン・ラザーに、ロバート・レッドフォードが扮しておりさすがの貫禄たっぷりな演技に拍手。それに取材するチームにはデニス・クェート、トファー・グレースといった面々が、そしてこのスクープの鍵を握る退役軍人には、ステーシー・キーチと個性は揃いなのだ。
結局のところ、メイプスは綿密な調査報道の末に、一度はスクープをものにするものの、保守派の反撃にあって「誤報」と断ぜられ、CBS内部の調査委員会に召喚されることになる。
すべてが実話ということもあって、説得力十分の展開なのだが、ここで何よりも観客の心を動かすのは、その報道は本当にすべてがウソだったのか?・・・真実とはなにか?、真相はどこにあるのかと、必死になって追究するジャーナリスト魂だろう。
この「世紀の誤報」が起こった過程を、真偽の再検証も織り込みつつ、スリリングな報道ドラマへと仕立てていく。その先に見えてくるのは、「テレビのニュースは誰のモノなのか?」という、現代社会の在り方を考える上で興味深いテーマだと思った。
結局、真相は?・・・実は何とも言えない。一筋縄ではいかない物語の内容については、たとえ真実に辿り着けなくとも、決してあきらめない彼女の生き方こそ尊重されるべきという、本作を手掛けたジェームズ・ヴァンダービルト監督の声が聞こえてくるから。
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あらすじ:ジョージ・W・ブッシュ大統領が再戦を目指していた2004年。ブッシュ大統領の軍歴を巡る疑惑を追及していたCBSニュースのベテラン・プロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は、その決定的な証拠を入手、ついに伝説的ジャーナリスト、ダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)がアンカーマンを務める番組でそのスクープを放送する。番組は大反響を呼ぶが、その直後、保守派ブロガーによるひとつの指摘をきっかけに、“新証拠”に対する疑惑で蜂の巣をつついたような大混乱となり、一転してダンとメアリーは釈明に追われることに。もはや軍歴そのものの疑惑は議論の外に置かれてしまい、“新証拠”の真偽のみを巡って集中砲火を浴び続けるメアリーだったが…。
<感想>何ともお堅い題名であることか、原題が「トゥルース」真実、真相だから悪くはないが、邦題としてはつまらな過ぎる。しかし、観てみると意外とこれが映画の中身とピタリと合致していて感心した次第であります。
というよりも、主人公のCBSニュースのプロデューサー、メアリー・メイプスを演じるケイト・ブランシェットの演技に始終圧倒されっぱなしだったのが印象に残る。実際に、この映画のケイトは、何かに取り憑かれてたように始終「真相」をめがけて突っ走っているのだ。目をランランと輝かせて獲物を追い求める野生の動物チーターのように。
その獲物とは、2004年にCBSニュースがスクープとして報道したブッシュの軍歴詐称疑惑である。ベトナム戦争への派兵をのがれるためのコネによる入隊と職務怠慢の疑いを立証するものだが、もし本当ならば爆弾級のスキャンダルだ。
ところが放送の終了後、報道の根拠となった文書の1枚が捏造だったと発覚。スクープの核となる資料が偽造だと批判する保守派が現れてメアリー・メイプスらCBS側は苦境に立つ。
局側は、全面謝罪し、プロデューサのメイプスと司会者のダン・ラザーがクビになり、ブッシュは大統領再選を果たした。その後にイラクや中東で起こったことについては、今更改めて振り返ることもないだろう。
プロデューサーのメイプスの自伝をもとにした実話の映画化だというが、それだけに登場するジャーナリストたちは、まるでCBSのオフィスから抜け出してきたようにリアリティーたっぷりに描いている。
伝説的アンカーマンのダン・ラザーに、ロバート・レッドフォードが扮しておりさすがの貫禄たっぷりな演技に拍手。それに取材するチームにはデニス・クェート、トファー・グレースといった面々が、そしてこのスクープの鍵を握る退役軍人には、ステーシー・キーチと個性は揃いなのだ。
結局のところ、メイプスは綿密な調査報道の末に、一度はスクープをものにするものの、保守派の反撃にあって「誤報」と断ぜられ、CBS内部の調査委員会に召喚されることになる。
すべてが実話ということもあって、説得力十分の展開なのだが、ここで何よりも観客の心を動かすのは、その報道は本当にすべてがウソだったのか?・・・真実とはなにか?、真相はどこにあるのかと、必死になって追究するジャーナリスト魂だろう。
この「世紀の誤報」が起こった過程を、真偽の再検証も織り込みつつ、スリリングな報道ドラマへと仕立てていく。その先に見えてくるのは、「テレビのニュースは誰のモノなのか?」という、現代社会の在り方を考える上で興味深いテーマだと思った。
結局、真相は?・・・実は何とも言えない。一筋縄ではいかない物語の内容については、たとえ真実に辿り着けなくとも、決してあきらめない彼女の生き方こそ尊重されるべきという、本作を手掛けたジェームズ・ヴァンダービルト監督の声が聞こえてくるから。
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