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ディストラクション・ベイビーズ★★★

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「イエローキッド」「NINIFUNI」の真利子哲也監督が、「誰も知らない」の柳楽優弥を主演に迎えて贈る衝撃のバイオレンス・ドラマ。屈強な相手を見つけては所構わず喧嘩をふっかける狂気の男と、そんな彼の危険なゲームに巻き込まれていく若者たちの運命を生々しい暴力描写とともに鮮烈なタッチで描き出す。共演は菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎。
あらすじ:愛媛県のこぢんまりとした港町・三津浜の造船所に2人で生活している芦原泰良(柳楽優弥)と弟の将太(村上虹郎)。けんかばかりしている泰良はある日突然三津浜を後にし、松山の中心街で相手を見つけてはけんかを吹っ掛けていく。そんな彼に興味を抱いた北原裕也(菅田将暉)が近づき、通行人に無差別に暴行を働いた彼らは、奪った車に乗り合わせていた少女・那奈(小松菜奈)と一緒に松山市外へ向かい……。

<感想>「暴力って世の中からなくならないのは何でだろう」って、観ていて思ってしまった。本作では痛快さや格闘技の軸では描いていない。主人公の芦原泰良はそれが自己破壊の口実でもあるかのように、ヤクザたちに血まみれで路上に転がされても、ヘラヘラと笑って立ち上がる。相手が退いたり、彼自身が微妙に強くなることで勝つ。だが、勝つことも重要ではない。

主人公の芦原泰良を演じている柳楽優弥は、登場するやいなや、いきなり乱闘を繰り広げたあと、港町から姿を消す。その間、ほとんど顔はわからない。次に昼間の繁華街の裏通りをぶらついているが、後ろ姿であたりを見渡し振り向く時に、不敵な面構えがやっと見える。すれ違ったバンドマンらしい長身の男を追い、男の背中の楽器ケースを路上に叩きつけるやいなや、やにわに殴りつけるのだ。格闘になり、何度もぶちのめされてもすぐに立ち上がって襲い掛かり、殴り倒される。相手は呟くのだが、柳楽優弥は一言もしゃべらない。

そして、男をライブハウスまで追跡し、殴られながら殴り倒し、満足げな表情を浮かべるのだ。主人公は全編、喧嘩の繰り返しと暴力の伝染、ほとんどそれだけなのだ。この調子で見ず知らずの男たちと殴り合いを演じていく。セリフは無いに等しく、暴力衝動については「楽しいいからいいやん」と言うにすぎないのだ。だからといって、狂人ではないことは、行動からわかる。武器を使わず肉体で闘い、襲うのは男だけで、ぶちのめされようと相手を倒すまで闘うのだ。

これは、途中でコンビを組む菅田将暉扮する北原裕也が、ベラベラと喋り女に暴力を振るい、車を運転するのと対照をなしている。それにだ、コンビを組む直前に、柳楽優弥が菅田将暉と強引に上着を交換するのが印象に残る。
この2人の男は、方や行き場のない鬱憤ばらしに暴れ、方や徹底して理不尽な暴力に生きることが、根底的な違いであろう。だから柳楽優弥はつねに獲物だけを追い求め、周りのことは視野に入らないが、路上で殴り合う以上、通行人の目に止まってしまう。
その流れが拡大するのが、繁華街のアーケードで菅田将暉が次々と女を襲い、止めに入った男たちを柳楽優弥が殴り倒すときで、野次馬がケータイで動画を撮り、ネットに載せてマスコミの話題になる。

単なる殴り合いは18歳の少年2人の、暴力沙汰として一気に社会化し、2人はキャバクラで働く少女小松菜奈をまき込んで、車で逃避行に出て、殺人にまで突き進むのであります。だから、事態がずるずると別の次元へと移っていく。

冒頭で、主人公は弟の村上虹郎扮する将太の視点で登場し、街での出来事の間には、弟が兄を捜す模様が映される。だから兄の柳楽優弥は、菅田将暉と弟の村上虹郎から、二重に相対化されるわけで、最終的にはそれは何処へ向かうのかと、息を詰めて画面を見つめる。ラストで弟の村上虹郎がそのまま兄の柳楽優弥になり、少し前に消息を絶った兄も現れる。
この映画の中の柳楽優弥が、文句なしに強烈であり、そこに描写の力が凝結しているが、主人公の精神状態は何ら描かれていない。生まれ育ちも仄めかし程度に留まっているのだ。その意味では、普通にいう人物像は成立していない。では彼は何なのか。純粋暴力の像、これである。

それは現実社会で突然に起こる不条理な暴力、或いは、世界を震撼とさせるテロを暗喩させているようでもあります。監督は、暴力描写に賛否が起こることなど承知の上で、観客は痛みを感じるたび、「過酷な現実から目を逸らすな」と叱咤されているようにもとれた。

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