それぞれに愛する人を失い心に傷を負った男女が再生していく姿を、涙と笑いでつづるヒューマン・コメディー。オスカーで6部門にノミネートされた『ザ・ファイター』のデヴィッド・O・ラッセル監督が、人生の再起に懸ける男女をハートフルに描く。
主演は、『ハングオーバー!』シリーズのブラッドリー・クーパーと『ウィンターズ・ボーン』のジェニファー・ローレンス。さらにロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァーらベテランが脇を固める。
あらすじ:妻が浮気したことで心のバランスを保てなくなり、仕事も家庭も全て失ってしまったパット(ブラッドリー・クーパー)は、近くに住んでいるティファニー(ジェニファー・ローレンス)と出会う。その型破りな行動と発言に戸惑うパットだったが、彼女も事故によって夫を亡くしており、その傷を癒やせないでいた。人生の希望を取り戻すためダンスコンテストに出ることを決めたティファニーは、半ば強制的にパットをパートナーに指名する。(作品資料より)
<感想>ヒロイン役のジェニファー・ローレンスがアカデミー賞主演女優賞を受賞し、さらに彼女がステージに向かうときにつまずいて転んだこともあって、がぜん注目度が上がったのがこの作品。と言うわけでもないが、前から観たいと思っていたので、ミニシアターだけかと思っていたら、シネコンでも6日から上映してくれてよかった。実は今回のアカデミー賞では、主要部門すべてでノミネートされていたというのだ。
そうならどんなにすごい作品なのかと、期待してしまったのだが、内容はある意味、他愛もないどこにでもありそうなお話なのだ。最愛の人を失うことで、心が壊れてしまった男女が主人公で、家族や友人との交流やダンスを通じて、少しずつ希望の光を掴んでいく。
物語そのものは特に目新しいものではないが、とにかく面白い。正直いって、深く考えさせられるとか、人間の深層心理の複雑さを感じさせるといった要素はない。何だ、心に傷を負った二人が出会い、癒されるお話なんて他にもあるじゃないの、と思った。そう、どこにでもありそうな話がこの映画なのである。
「ダンス大会の成績は?」「パットと妻は元にもどるの?」とそれなりにハラハラもさせられ、結末の意外性もあるが、それでも結局は「やっぱりそうだよね」ダンス大会に向けて、二人が一生懸命練習するのを見て、息が合わないと上手く踊れないもの。それにしても二人の会話の早口な台詞にうんざり気味。その他の役者さんもそれに合わせて早口言葉で喧々囂々と台詞の応酬。母親だけゆっくりと話して貫録あり。
しかしながら、これは平凡な映画なのに何故アカデミー賞のすべての部門にノミネートされたのか?・・・実はここがもっとも興味深い点なのですね。それは楽しく面白くそれなりにジーンとなる場面が散りばめられてあるから。
主人公二人はもし自分の隣にいたら、けっこう迷惑なタイプなのだ。パットはキレやすく、ちょっとしたことが原因で喧嘩をしてしまうのだ。特にトラウマとなっているのが、スティーヴィー・ワンダーの曲の「マイ・シェリー・アモール」で、自分と妻の結婚式で流れていた曲でありながら、妻と別の男性との不倫を目撃した時にこの曲がかかっていたこともあり、曲が流れてくるだけで頭の血が逆流してしまう。
一方の、ティファニーは毒舌家で、相手の気持ちなどおかまいなしに、考えたことを相手にすべてぶっつけてしまう。さらにロバート・デ・ニーロが演じるパットの父親も面倒くさい性格で、彼はレストランの開業資金を稼ぐためアメフトのノミ屋をしている。地元のアメフトチーム、イーグルスの熱狂的ファンなのだが、イーグルスの勝敗に一喜一憂している。ちょっと変な主人公ばかりだが、みんな家族や友人たちと一緒にいると元気になれるし、観客としても欠点を抱えた彼らのことが好きになっていく。この世に完璧な人間などいるはずもなく、必死に今のダメな自分と折り合いをつけながら生きる姿を応援したくなるからだろう。
パットにしても、兄貴にコンプレックスを抱いているという設定だが、二人の壁はイーグルスの試合を見に行くことでわだかまりも消え、最後のダンス・コンテストでは、家族がパットに声援を送る絆が最高。
挫折を経験した息子がダンスで立ち直ろうとするのを応援する父だが、「息子が試合を見ないとイーグルスが負ける」という根拠のないジンクスを信じていて、パットと思わず言い争いになるのも何ともおかしな話である。
そして、イーグルスの試合の日にダンス・コンテストがあるのを、そのコンテストでの点数が5点を取れば勝ちという賭けまで友達としてしまう父親。確かにダンスが上手いとは決して言えないが、主人公の二人はコンテストの日、ティファニーが白いコスチュームで踊る姿が綺麗で、過去のトラウマから乗り越えようとする彼らの決意が感じられた。
ちなみにパットは最初っからダンスがやりたかったのではなく、ティファニーから「接近禁止令を出されている妻に、手紙を渡してあげる」という条件を提示されたのがきっかけだったのだ。その手紙の返事も、ダンスの練習を嫌々ながらするパットに、ティファニーが元気づけるように楽しい曲を選曲する。やっぱり手紙の返事はティファニーが書いたものだと、観客にも分かっていた。
最初は心の通わなかった男女が、ダンス大会という共通の目的のために練習を重ねるうち、次第に距離が近づいてくる感じも自然でよかった。その男女ふたりも、さえない面、歪んだ面もダンスの中では輝く瞬間もあり、とても魅力的。そして、テファニーが見せる切ない思い、後半のロマンチックな展開もステキで、とってもいい気分で席を立つことができた。
2013年劇場鑑賞作品・・・75 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ
主演は、『ハングオーバー!』シリーズのブラッドリー・クーパーと『ウィンターズ・ボーン』のジェニファー・ローレンス。さらにロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァーらベテランが脇を固める。
あらすじ:妻が浮気したことで心のバランスを保てなくなり、仕事も家庭も全て失ってしまったパット(ブラッドリー・クーパー)は、近くに住んでいるティファニー(ジェニファー・ローレンス)と出会う。その型破りな行動と発言に戸惑うパットだったが、彼女も事故によって夫を亡くしており、その傷を癒やせないでいた。人生の希望を取り戻すためダンスコンテストに出ることを決めたティファニーは、半ば強制的にパットをパートナーに指名する。(作品資料より)
<感想>ヒロイン役のジェニファー・ローレンスがアカデミー賞主演女優賞を受賞し、さらに彼女がステージに向かうときにつまずいて転んだこともあって、がぜん注目度が上がったのがこの作品。と言うわけでもないが、前から観たいと思っていたので、ミニシアターだけかと思っていたら、シネコンでも6日から上映してくれてよかった。実は今回のアカデミー賞では、主要部門すべてでノミネートされていたというのだ。
そうならどんなにすごい作品なのかと、期待してしまったのだが、内容はある意味、他愛もないどこにでもありそうなお話なのだ。最愛の人を失うことで、心が壊れてしまった男女が主人公で、家族や友人との交流やダンスを通じて、少しずつ希望の光を掴んでいく。
物語そのものは特に目新しいものではないが、とにかく面白い。正直いって、深く考えさせられるとか、人間の深層心理の複雑さを感じさせるといった要素はない。何だ、心に傷を負った二人が出会い、癒されるお話なんて他にもあるじゃないの、と思った。そう、どこにでもありそうな話がこの映画なのである。
「ダンス大会の成績は?」「パットと妻は元にもどるの?」とそれなりにハラハラもさせられ、結末の意外性もあるが、それでも結局は「やっぱりそうだよね」ダンス大会に向けて、二人が一生懸命練習するのを見て、息が合わないと上手く踊れないもの。それにしても二人の会話の早口な台詞にうんざり気味。その他の役者さんもそれに合わせて早口言葉で喧々囂々と台詞の応酬。母親だけゆっくりと話して貫録あり。
しかしながら、これは平凡な映画なのに何故アカデミー賞のすべての部門にノミネートされたのか?・・・実はここがもっとも興味深い点なのですね。それは楽しく面白くそれなりにジーンとなる場面が散りばめられてあるから。
主人公二人はもし自分の隣にいたら、けっこう迷惑なタイプなのだ。パットはキレやすく、ちょっとしたことが原因で喧嘩をしてしまうのだ。特にトラウマとなっているのが、スティーヴィー・ワンダーの曲の「マイ・シェリー・アモール」で、自分と妻の結婚式で流れていた曲でありながら、妻と別の男性との不倫を目撃した時にこの曲がかかっていたこともあり、曲が流れてくるだけで頭の血が逆流してしまう。
一方の、ティファニーは毒舌家で、相手の気持ちなどおかまいなしに、考えたことを相手にすべてぶっつけてしまう。さらにロバート・デ・ニーロが演じるパットの父親も面倒くさい性格で、彼はレストランの開業資金を稼ぐためアメフトのノミ屋をしている。地元のアメフトチーム、イーグルスの熱狂的ファンなのだが、イーグルスの勝敗に一喜一憂している。ちょっと変な主人公ばかりだが、みんな家族や友人たちと一緒にいると元気になれるし、観客としても欠点を抱えた彼らのことが好きになっていく。この世に完璧な人間などいるはずもなく、必死に今のダメな自分と折り合いをつけながら生きる姿を応援したくなるからだろう。
パットにしても、兄貴にコンプレックスを抱いているという設定だが、二人の壁はイーグルスの試合を見に行くことでわだかまりも消え、最後のダンス・コンテストでは、家族がパットに声援を送る絆が最高。
挫折を経験した息子がダンスで立ち直ろうとするのを応援する父だが、「息子が試合を見ないとイーグルスが負ける」という根拠のないジンクスを信じていて、パットと思わず言い争いになるのも何ともおかしな話である。
そして、イーグルスの試合の日にダンス・コンテストがあるのを、そのコンテストでの点数が5点を取れば勝ちという賭けまで友達としてしまう父親。確かにダンスが上手いとは決して言えないが、主人公の二人はコンテストの日、ティファニーが白いコスチュームで踊る姿が綺麗で、過去のトラウマから乗り越えようとする彼らの決意が感じられた。
ちなみにパットは最初っからダンスがやりたかったのではなく、ティファニーから「接近禁止令を出されている妻に、手紙を渡してあげる」という条件を提示されたのがきっかけだったのだ。その手紙の返事も、ダンスの練習を嫌々ながらするパットに、ティファニーが元気づけるように楽しい曲を選曲する。やっぱり手紙の返事はティファニーが書いたものだと、観客にも分かっていた。
最初は心の通わなかった男女が、ダンス大会という共通の目的のために練習を重ねるうち、次第に距離が近づいてくる感じも自然でよかった。その男女ふたりも、さえない面、歪んだ面もダンスの中では輝く瞬間もあり、とても魅力的。そして、テファニーが見せる切ない思い、後半のロマンチックな展開もステキで、とってもいい気分で席を立つことができた。
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