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フタバから遠く離れて ★★★★

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平成23年、3月11日の大震災で起こった原発事故により、集団移住をさせられた福島県双葉町の住民たちの避難生活の記録映画です。WOWOWで鑑賞しました。

2011年3月11日の東日本大震災後、福島第一原発の事故により、町全体が丸ごと移住した福島県双葉町の9ヵ月間に密着したドキュメンタリー。監督は「谷中暮色」の舩橋淳。エンディングテーマ曲“for futaba”を「ラストエンペラー」の坂本龍一が書き下ろしている。3.11のドキュメンタリー映画が多い中、大震災と津波の傷跡は途中まで出てきません。が、原発事故の被害者に焦点を絞ったことが作品をユニークなものにしていると思う。

画面が映し出すのは、避難生活を強いられた人々の現在形である。埼玉県の廃校となった高校で暮らす人々は、避難生活にうんざりし、それぞれの思いを語るのだが、その内実は一様ではない。大多数の人々は早く双葉町へ帰りたいと言う。元の暮らしへの復帰が望まれているのだが、全員がその可能性を素朴に信じているわけではない。
何人もの人が帰りたいと語る口ぶりに、帰れそうにないという状況認識が滲み出るのを感じた。他人ごとではないと思うが、彼らは避難生活で男たちは支給された弁当を食べ、酒を飲みたばこを吸いながら談笑する。女たちは、諦めたかのようにやはりタバコを吸いながら、これからの生活を案じる。莫大なる国からと東京電力からの補償金、まだ何も解決はしてないがその現実認識を踏まえ、数は少ないが別の地へ移転して新生活を始めるしかないと言う人もいる。実際に、沖縄とか原発のない土地へと移転している人たちもいる。

住民のそうした多様な思いが交錯するなかで、双葉町の町長は廃校の仮町長室で、原発に依存してきた町の歴史とその誤りを語り、東京電力や政府との交渉に奔走する。
途中、一時帰宅を許可された住民たちは、バスで自宅へ向かう下りで初めて地震と津波の無残な傷跡が窓の外に登場する。家がなく土台だけの息を飲む津波の恐ろしさ、それぞれの破壊された我が家の姿に、さらに唖然とする。
この後のシーンでは、瓦礫の風景、車内の全身防護服の人々、静かに流れる哀悼の音楽、コンクリートの残骸が転がった家の跡地歩く防護服のロングショット。墓を拝む人、無人の道路にいる痩せた牛、家畜殺処分反対の看板、両手を打ち鳴らして飼い牛を呼ぶ男。

コンクリートの残骸と防護服のロングショットは、避難所へ戻る車内のシーンの後だから、いわば回想シーンであるが、先祖の墓、痩せた牛、殺処分へと連なるので、身震いするほど背筋が寒くなり、その印象が強く心に残り、ラスト、ミイラ化した牛の死骸が牛舎をうめつくしている光景に言葉もでない。

以前映画館で園子温監督「希望の国」を観たが、問題はフィクションのあり方で、強制区域ギリギリの自宅に留まることを決意し、息子は妊娠中の妻と非難する。残った父は認知症の妻を抱きしめ、愛している、死のうかと言う。最期は老夫婦が強制避難するように役場から言われ、長いこと住んでいる我が家を去ることができずに、悲しい結末となる。
注目すべきは過去への執着であれ、今後への不安であれ、新出発への意思であれ、断念を踏まえてのことだろう。原発事故による避難生活という記録の点で、ここには情報が満載されているが、これに終わらずこのドキュメンタリーとして現在を表現した作品になっているのを、今後も別の形で我々に見せて欲しいと思った。

あらすじ:2011年3月12日。双葉町民は福島第一原子力発電所1号機の水素爆発を耳にし“死の灰”を被った。町は全面立入禁止の警戒区域となり、1400人が250km離れた埼玉県の高校へ避難。双葉町長井戸川克隆は、財政破綻した町を救うため7・8号機を誘致した原発推進派だった。しかし、町民が被爆、事故が長期化するにつれ、その信念が変化していく……。建築作業員・中井祐一さんは津波により家を流され、母を失った。農地全てを流された父とともに避難所暮らしを続けながら、震災翌日に予定された救助活動がベント・水素爆発により中止となったことを悔やんでいる。

原発事故により助からなかった命は少なくない、そう訴えつつ、次の人生を模索している彼は、避難から3ヶ月後初めて一時帰宅が許され、無人地帯となった故郷へ帰還する……。原発により1960年代以降経済的繁栄が約束されてきた双葉町の町民は、いまだ奪われた家・土地・財産の補償を受けずに、5年以上とも言われる避難生活を続けている。高校の教室に畳を敷き、10〜20人で寝食を共にする共同生活。東北の復興が加速していく中、取り残されていく避難所の日々をカメラは捉える。
2013年WOWOWで鑑賞・・・1  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ

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