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Channel: パピとママ映画のblog
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ザ・フューチャー  ★★★★

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カンヌ国際映画祭でカメラドールを受賞した「君とボクの虹色の世界」のミランダ・ジュライが監督・脚本・主演を務めたヒューマン・ドラマ。

あらすじ:ソフィーとジェイソンはある日、ケガをした猫を引き取ることになる。私は35歳、彼とは同性4年目。心地よくてそれなりに幸せな生活に訪れた小さな小さな変化、それはケガをした猫“パウパウ”との出会いだった。
パウパウをシェルターから迎えるまでの30日間、二人の生活はゆるやかに変わっていく。
仕事を辞め、インターネットを解約する。ソフィーは30日で30ダンスを創ることを決め、ジェイソンは地球を守ると木を売り歩く。しかし、すぐにソフィーは気が付く。私はなにも出来ずに立ち止まったままだった。
漠然とした焦燥感がぬぐえない毎日。そんな時に出会った、もう一人の彼、彼といると何も成し遂げなくていいように思え、心が軽くなった。そして、彼女は部屋を出た。

<感想>同棲中の男女の関係を変化を促すのは猫。しかも映画の語り手まで務める。なのだが、ファンタジーというわけでもなく、男女の描写や抱えている問題はリアルで切実。野良猫を引き取るまでに残された時間は30日間。4年間も同居生活を送るカップルが、そんな些細な時間の区切りをきっかけに、なぜか崩壊の危機に陥る。
それは恋人のジェイソンに内緒で、おじさんと肉体関係を持ったソフィーが、「事実を話すか嘘をつくかのどちらかだね」、と恋人への対処法アドバイスされて頭を抱える。真実を告げることと嘘をつくこと、それら双方が彼女にとっては論外なのだ。

この作品がフィクションだからこそ、真実でも嘘でもなく、その間にあるものであり、女主人公ソフィーの彷徨いぶりは結構面白くみた。たとえば猫のことにしても、ワイルド(野良猫)であることと平穏(飼い猫)であること。生まれてからずっとワイルドだった猫にとって飼い猫になることが夢であり、逆にソフィーは飼い猫のような生活から、身を分かつかのように中年おじさんとのワイルドな情事を選んでしまう。ミランダのちらりと見えた小さなお尻が綺麗だった。
その結果、彼女は二人の男性の間を彷徨うことになり、ジェイソンもなぜか惹かれる老人の家と自宅の間を行き来する。30代半ばのカップルは、若さ、老いの中間を漂い、本作では全篇にわたりカップルの“間”の出来事が描かれる。
でも、そのおじさんには娘がいる。その娘が自宅の庭に穴を掘り、首だけ出してその穴に潜りこむ。これは彼女が父親との生活の中へ入り込んだことへの娘なりの反発だといえる。
動物病院へ入院しているパウパウ(お手々ちゃん)、足先に包帯を巻いて語り部として登場するのだが、二人が喧嘩をして顔を見に行かなかったことと、期日に迎えに行かなかったのか、最後に亡くなったことを告げられる悲劇は、二人が修復してまた暮らし始めたのだから、最後は元気になった猫ちゃんの姿を見せて欲しかったのに。
だが、物語の後半になってソフィーが部屋に戻ると、思わず追い返しにかかるジェイソンが、慌てて階段の上から彼女を呼び止める場面が感動的に映しだされる。このシーンは、自然なアングルで何気なく映され、そのままやり過ごせば、二人の間の距離は修復不可能になっていたに違いない。だけど、その寸前で二人の間に何かが起こる。
気まずそうにオズオスとやって来たソフィーに対して、一言も声をかけずにただ部屋の扉を閉じずにいたジェイソン。階段のシーンにしても、玄関の扉が開いているがゆえに、ソフィーがまだ立ち去っていないことを彼と観客は察知できるのである。扉とは中間であり、それが閉ざされずにいる以上、2人の間の物語もまた継続のチャンスがあるというもの。
ミランダが凄いのは、現実的な出来事を自然に、つまり普遍的な感情表現として描けてしまうことである。奇妙なのに、それが普通に見える。そんな描写が成立するなんて信じ難いので、何故か胸打たれた。

2013年劇場鑑賞作品・・・66  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ


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