『グラディエーター』などのリドリー・スコットがメガホンを取り、『ボーン』シリーズなどのマット・デイモンが火星に取り残された宇宙飛行士を演じるSFアドベンチャー。火星で死亡したと思われた宇宙飛行士が実は生きていることが発覚、主人公の必死のサバイバルと彼を助けようとするNASAや乗組員たちの奮闘が描かれる。共演は、『ゼロ・ダーク・サーティ』などのジェシカ・チャステインや『LIFE!/ライフ』などのクリステン・ウィグなど。スコット監督による壮大なビジュアルや感動的なストーリーに注目。
あらすじ:火星での有人探査中に嵐に巻き込まれた宇宙飛行士のマーク・ワトニー(マット・デイモン)。乗組員はワトニーが死亡したと思い、火星を去るが、彼は生きていた。空気も水も通信手段もなく、わずかな食料しかない危機的状況で、ワトニーは生き延びようとする。一方、NASAは世界中から科学者を結集し救出を企て、仲間たちもまた大胆な救出ミッションを敢行しようとしていた。
<感想>子供の頃に誰しもが憧れる宇宙飛行士の夢、主人公のマーク・ワトニーを演じたマット・デイモンもそうだった。しかし、まさか火星に取り残されて独りぼっちになるとは。食料はすぐに尽きてしまう。宇宙船が次に火星に着くのは4年~5年は先なのだ。どんなに知恵を絞っても生きて地球へ還れる確率は0%である。
しかし、そこで地球との最低限の通信機能を回復できたとしても、地球にいる頭のいい物理学者や天文学者やロケット開発のプロたちが、みんなで知恵を出し合って、マークの救出を一緒に考えてくれたら。土に埋もれた大昔の探査機を発掘したマーク。わずかなデーターしか送れない旧型機だが、修理をして地球との交信を試みる。
「安心してください、まだ生きてますよ」という通信で、それでも助かる確率は低いけれど、ひょっとしたら「1億分の1」くらいの微かなチャンスが生まれるかもしれない。この映画は、その「1億分の1」のチャンスが、ソーシャルネットワークの環で繋がれた21世紀の地球がポテンシャルとして持っている希望についての美しい寓話のようなSFサバイバル映画なのだ。
そこでサバイバルする唯一の方法は、サバイバルをできると信じることである。マークにとって一番重要な闘いは自分との闘いなのだ。絶望は、火星の環境と同じぐらいに危険だった。そこで、自分の行動をビデオに記録し、それは遺書になるかもしれないからだ。
サバイバルをできるという前提で、そのためには何をすればいいのかを考え、突き進む。マークを演じるマット・デイモンは天才であり、あまりにもハマリ役で、彼の実力には驚きものであります。
このポジティブな作品の中で、現実味のない楽天主義的な主人公を演じているわけではないのだ。スーパーパワーを持っているわけでもなく、植物学者としての知恵を使い、持って来たジャガイモの栽培をするという。そう簡単にジャガイモ栽培ができるはずもなく、クルーの残した排泄物と火星の土に科学肥料を混ぜて、水は温室のように水素燃料から作り、水滴を垂らすようにハブ(人工居住施設)の中を改造して、それは見事にジャガイモが育って行くのが見ていて嬉しかった。ですが、その装置もエアロック部分が気圧差のせいでハブの中が爆発して、屋内農場はメチャクチャになり、氷点下の気温に作物も凍りつき、再び訪れる餓死のピンチに。
それに、NASAのみならず中国がマークに食料を送ろうとロケットを打ち上げるも、作業に急ぎ過ぎたせいでロケットが爆発してしまう。ですが、中国のロケットは打ち上げに成功するのだ。
地球に帰還中だったヘルメス号に、Uターンをして火星に戻ればマークを救えるかも、との報告が届くのだが、それはクルー全員の死亡もありえる危険な賭けだったのです。ですが、ルイス船長は制止するNASAを無視して火星に向かうのです。
自分の人生を犠牲にしても迷うことなくマークを助けようとするクルーなど、ついに火星軌道上に到着した宇宙船ヘルメス号。マークをキャッチできるタイミングは一瞬なのだ。さらに、マークが火星の大気圏外に出るには、着陸船の極端な軽量化が必要で、あまりにも危険で大胆な改造を強いられる。
宇宙船ヘルメス号にいる船長、ジェシカ・チャステインは、自分がマークを救出に行くといいはり、その瞬間がドキドキもので、もしかして、船長もマークも助からないのではという危険迫りくるシーンでありました。信じ難い救出劇には怒涛の感動が待ち受けていますから。
当然ながら恐怖に直面する瞬間もあるが、それは「プロメテウス」の中で主人公が自分で怪我の治療をしたように、ユーモアで笑い飛ばされる。実際のところ、この映画をSFと呼ぶのが正しいかどうか判らない。「空想科学」もここにはほぼ無いし、あるのは科学的事実に基づいたサバイバル術であり、そういう意味では冒険映画、パニック映画の一種とも言える。
要所要所に、絶妙なタイミングで挿入されるダサダサなディスコ・ソングといい、今年度のゴールデン・グローブ賞で、ドラマ部門ではなく「ミュージカル・コメディ部門」に輝いたのも納得ですね。
それでも、火星の地形や気候の描写、NASAが開発した宇宙施設などのデザインにおける徹底的な細部へのこだわりは、やっぱりリドリー・スコット監督ならではと頷けます。現在78歳の巨匠を突き動かしているのは、昔も今も「ブレードランナー」や「エイリアン」の時代から一貫して、科学や歴史に対する人類的スケールの好奇心だと思うのですが、そのあくなき探究心は衰えるどころか、ますます若返っている感さえあります。
2016年劇場鑑賞作品・・・26映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:火星での有人探査中に嵐に巻き込まれた宇宙飛行士のマーク・ワトニー(マット・デイモン)。乗組員はワトニーが死亡したと思い、火星を去るが、彼は生きていた。空気も水も通信手段もなく、わずかな食料しかない危機的状況で、ワトニーは生き延びようとする。一方、NASAは世界中から科学者を結集し救出を企て、仲間たちもまた大胆な救出ミッションを敢行しようとしていた。
<感想>子供の頃に誰しもが憧れる宇宙飛行士の夢、主人公のマーク・ワトニーを演じたマット・デイモンもそうだった。しかし、まさか火星に取り残されて独りぼっちになるとは。食料はすぐに尽きてしまう。宇宙船が次に火星に着くのは4年~5年は先なのだ。どんなに知恵を絞っても生きて地球へ還れる確率は0%である。
しかし、そこで地球との最低限の通信機能を回復できたとしても、地球にいる頭のいい物理学者や天文学者やロケット開発のプロたちが、みんなで知恵を出し合って、マークの救出を一緒に考えてくれたら。土に埋もれた大昔の探査機を発掘したマーク。わずかなデーターしか送れない旧型機だが、修理をして地球との交信を試みる。
「安心してください、まだ生きてますよ」という通信で、それでも助かる確率は低いけれど、ひょっとしたら「1億分の1」くらいの微かなチャンスが生まれるかもしれない。この映画は、その「1億分の1」のチャンスが、ソーシャルネットワークの環で繋がれた21世紀の地球がポテンシャルとして持っている希望についての美しい寓話のようなSFサバイバル映画なのだ。
そこでサバイバルする唯一の方法は、サバイバルをできると信じることである。マークにとって一番重要な闘いは自分との闘いなのだ。絶望は、火星の環境と同じぐらいに危険だった。そこで、自分の行動をビデオに記録し、それは遺書になるかもしれないからだ。
サバイバルをできるという前提で、そのためには何をすればいいのかを考え、突き進む。マークを演じるマット・デイモンは天才であり、あまりにもハマリ役で、彼の実力には驚きものであります。
このポジティブな作品の中で、現実味のない楽天主義的な主人公を演じているわけではないのだ。スーパーパワーを持っているわけでもなく、植物学者としての知恵を使い、持って来たジャガイモの栽培をするという。そう簡単にジャガイモ栽培ができるはずもなく、クルーの残した排泄物と火星の土に科学肥料を混ぜて、水は温室のように水素燃料から作り、水滴を垂らすようにハブ(人工居住施設)の中を改造して、それは見事にジャガイモが育って行くのが見ていて嬉しかった。ですが、その装置もエアロック部分が気圧差のせいでハブの中が爆発して、屋内農場はメチャクチャになり、氷点下の気温に作物も凍りつき、再び訪れる餓死のピンチに。
それに、NASAのみならず中国がマークに食料を送ろうとロケットを打ち上げるも、作業に急ぎ過ぎたせいでロケットが爆発してしまう。ですが、中国のロケットは打ち上げに成功するのだ。
地球に帰還中だったヘルメス号に、Uターンをして火星に戻ればマークを救えるかも、との報告が届くのだが、それはクルー全員の死亡もありえる危険な賭けだったのです。ですが、ルイス船長は制止するNASAを無視して火星に向かうのです。
自分の人生を犠牲にしても迷うことなくマークを助けようとするクルーなど、ついに火星軌道上に到着した宇宙船ヘルメス号。マークをキャッチできるタイミングは一瞬なのだ。さらに、マークが火星の大気圏外に出るには、着陸船の極端な軽量化が必要で、あまりにも危険で大胆な改造を強いられる。
宇宙船ヘルメス号にいる船長、ジェシカ・チャステインは、自分がマークを救出に行くといいはり、その瞬間がドキドキもので、もしかして、船長もマークも助からないのではという危険迫りくるシーンでありました。信じ難い救出劇には怒涛の感動が待ち受けていますから。
当然ながら恐怖に直面する瞬間もあるが、それは「プロメテウス」の中で主人公が自分で怪我の治療をしたように、ユーモアで笑い飛ばされる。実際のところ、この映画をSFと呼ぶのが正しいかどうか判らない。「空想科学」もここにはほぼ無いし、あるのは科学的事実に基づいたサバイバル術であり、そういう意味では冒険映画、パニック映画の一種とも言える。
要所要所に、絶妙なタイミングで挿入されるダサダサなディスコ・ソングといい、今年度のゴールデン・グローブ賞で、ドラマ部門ではなく「ミュージカル・コメディ部門」に輝いたのも納得ですね。
それでも、火星の地形や気候の描写、NASAが開発した宇宙施設などのデザインにおける徹底的な細部へのこだわりは、やっぱりリドリー・スコット監督ならではと頷けます。現在78歳の巨匠を突き動かしているのは、昔も今も「ブレードランナー」や「エイリアン」の時代から一貫して、科学や歴史に対する人類的スケールの好奇心だと思うのですが、そのあくなき探究心は衰えるどころか、ますます若返っている感さえあります。
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