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ヴィヴィアン・マイヤーを探して★★★.5

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第87回アカデミー賞にノミネートされたドキュメンタリー。15万点以上もの優れた作品を撮りながらも、1枚も発表せずに亡くなった女性ヴィヴィアン・マイヤーの秘密と彼女が歩んだ軌跡や、知られざる素顔を追っていく。ヴィヴィアンが遺(のこ)したネガをオークションで手に入れたジョン・マルーフと、テレビドキュメンタリーなどの製作を手掛けてきたチャーリー・シスケルが監督を務める。
あらすじ:シカゴに暮らすジョン・マルーフは、すでに故人であるヴィヴィアン・マイヤーという女性が撮影した写真のネガをオークションで落札する。大量のネガから厳選した作品を自身のブログに掲載すると、その独特のセンスに対してすさまじい反響が押し寄せる。それを機にヴィヴィアンへの興味をかきたてられたジョンは、彼女の調査を始めることに。なぜ、乳母だった彼女がカメラに興味を持ったのか? なぜ、15万点以上もの作品を死ぬまで発表しなかったのか? さまざまな謎の答えを探し求めていくが……。

<感想>家政婦が日々撮り続けていたストリート写真。誰に見せることも無く、独自の視点で世界を記録した15万枚以上にもおよぶ写真が、彼女の死後まもなく、若い歴史研究家によって偶然発見された。それが、本作の監督ジョン・マルーフなのだ。
2007年の冬、シカゴのとあるオークションハウスで、倉庫代を払えなくなった雑貨類の競売が行われた。その中には古い写真のネガフィルムがぎっしりと入ったトランクがあり、ジョン・マルーフという青年が380ドルで競り落とした。それがヴィヴィアン・マイヤーという誰も名前が知らなかった写真家が、いきなり大ブレイクするきっかけになるのだ。

トランクの中のネガをスキャンしてみると、街の情景を撮影した素晴らしい写真群が姿をあらわしたわけ。マルーフは写真を選らんでブログにアップする。その反響は凄まじいものだった。
あちこちから絶賛の声が寄せられ、写真展が開催され、写真集が次々に刊行された。むろん生前は不遇で、死後に評価が高まった写真家はたくさんいる。ですが、マイヤーの場合はかなり極端な例と言える。

彼女は独学で写真を撮り始め、2009年に亡くなるまで、まったく写真を発表したことがないのだ。監督は女性のルーツを探り、ニューヨークからフランスの田舎までの足跡をたどる。彼女が各地の人々を捉えた白黒写真のなんという美しさ、彼らは生きて語りかけるのであります。
1951年頃からニューヨークで住み込みの乳母の仕事を始め、56年にシカゴに移っておなじ仕事を続ける。52年に高級カメラ、ローライフレックスを買ったことから写真撮影にのめり込んでいく。以後、コンスタントに撮影を続け、90年代までその総数は15万カット以上に達していた。
マイヤーの写真を見て驚かされるのは、その力強さと精度の高さであります。獲物を狙う豹のように被写体に近づき、大胆に、だがきめ細やかに注意を働かせて画面に収めていくのだ。写真家としての才能は言うまでもないが、驚くべきことは被写体の選択の幅の広さだろう。

その好奇心の対象は自分自身に向けられ、マイヤーは自分の姿を撮影しているのだ。鏡を見つけて、自分を映してシャッターを切っている。身長が180㎝の長身で、髪の毛は短く切り、独特のファションセンスの持ち主でもあった。

監督は膨大な量のネガなどを時間をかけて収集。それらは、世界写真芸術史を飾るほどの作品と評価されていくのだ。これは人間とそのアートについて、観る者を深い想像と思索の旅へといざなう素晴らしい記録映画だと思う。
写真家に負けずこの映画も作者も相当な偏執狂とみた。ヴィヴィアンを知る誰もが昨日のことのように彼女を語り、遺された写真が次つぎに息づいてゆくその官能は、まるで写真の可能性そのものに触れるようでもある。
とにかく、ヴィヴィアン・マイヤーという人の存在も作品も、20世紀の日道を抱え込んでいるようで、危険な魅力がいっぱいです。彼女の怪物級の才能をしぶとく世の中に還元する監督も凄いと思う。
時空を超えた縁の不思議を感じさせると共に、アートが人類に与える価値を改めて考えさせてくれる。
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