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フレンチアルプスで起きたこと★★★.5

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お披露目となった2014年のカンヌ国際映画祭で評判を呼び、その年の全米賞レースを席巻するなど世界的に話題を集めた北欧発のシニカル・コメディ。アルプスの高級リゾートにバカンスにやって来たスウェーデン人一家を主人公に、父親のとっさの行動が引き金となって家族の絆に思いがけない亀裂が生じていくさまとその顛末を、辛辣な眼差しで赤裸々かつユーモラスに描き出す。監督はスウェーデンの俊英、リューベン・オストルンド。
あらすじ:フレンチアルプスの高級リゾートにスキー・バカンスにやって来たスウェーデンの一家4人。いつも仕事で忙しい父親のトマスは、ここぞとばかりに家族サービスに精を出す。ところが2日目、テラスレストランで昼食をとっていた一家を不測の事態が襲う。スキー場が起こした人工雪崩が、予想を超えた規模に成長しながらテラスへ向かってきたのだ。幸い大事には至らなかったが、その時トマスは、妻と2人の子どもを置き去りにして、自分だけで逃げ出してしまったのだ。何事もなかったかのように、その場を取り繕うトマスだったが、妻のエバはおろか子どもたちの目もごまかすことはできなかった。以来、家族の中には不穏な空気が漂い、楽しいはずのバカンスが一転して息詰まる修羅場の様相を見せ始め、次第に追い詰められていくトマスだったが…。

<感想>父親はこうでなきゃいけない、夫婦はこうであるべきだといった観念を、雪崩が見事に粉砕していくのだ。雪崩が起きた時、家族を捨てて一目散に逃げた夫を許せない妻は、夫婦間の不協和音を感じとって、グズつきまくる子供たちの引っ張りも手伝って、イライラとモヤモヤがじんわりと重く迫ってくるのだ。
夫は、雪崩はスロープ整備の人工的に起こした爆破であり、まさか、それがレストランで食事をしていた目の前まで雪崩が落ちてくるとは想定外のことだったらしい。それは、アルプスでスキーを楽しむセレブ家族の中に監督が投げ込んだ一発の爆弾だと思う。
何故、こんな時にと、間の悪さが次々と積み重なり、それはまるで雪崩のごとく主人公一家を呑みこむだけでなく、たまたま居合わせただけの知人や、さらには赤の他人までをもなぎ倒して行く。

観客は、誰にも感情移入しないで一家の心理的葛藤を客観的に眺めているだけ。まさに、これが監督の狙いなのだろう。幸せな家族を襲う危険な雪崩、それが一番家族を守らなければならない父親が、一番先に家族を置いて逃げてしまうのだから。映画的ではない卑怯なテーマでユニークであり、刺激的な作品に仕上がっているようだ。
当人たちにとっては、身の破滅の瀬戸際だが、傍から見たら哀しくも滑稽に映る。だけど、同時に激しく身につまされるのだ。もし、自分の家族に、夫が自分たちを放り出して自分だけ助かりたいと逃げ出すことは、やっぱり理解できないし、許せないことです。

夫は、引き返して来て、苦笑いをして子供たちが恐怖に怯えて泣いているのを見て、火に油を注ぐような言い訳をして「逃げた」ことを認めようとしない態度がムカツク。これは一大事だと気づくき、直ぐに謝って、子供たちを抱きしめるなり、奥さんにも謝り赦しを乞うとか、この夫はそれをしない。

それでもある程度は、「分かる分かる」、「こういうことってよくある」とクスクスできる範囲に収めてくれた監督の配慮に感謝し、手腕に感嘆した。それに、夜の爆発音とロープウェイのゴンドラのきしむ音、電動歯ブラシの音、不協和音の音響が、雪崩と夫婦の絆が壊れていくような感じで良かった。

友人たちが3日後に来て、一部始終を話す妻の憤慨たるや、男同士は納得づくで、こういうケースはまれにあることだと頷く。それに、ゲレンデでビールを飲み休憩している時に若い可愛い子ちゃんが声を掛けて来るのだ、二人の男はニヤニヤして、それが、人違いだったことが判る。部屋へ帰れば、妻はまだ怒っているし、女性は許すことが出来ないし、子供たちは夫婦喧嘩をしているのを見て、離婚するのではとヒヤヒヤもんだ。嘘泣きをして妻の赦しを乞う夫のしらじらしさに激怒してしまう観客。

だが、やっぱり後悔したのか、後で泣きながら詫びを入れる夫に、子供たちも許すのだ。家族の絆とは、やはり父親が一番しっかりしなければいけないことで、次の日には、その修復をするために家族サービスをして、ゴンドラで上まで行き一緒に滑る。
しかし、母親が行方不明になる。子供二人を置いて吹雪の中探しに行く夫、そして見つけてママをお姫様抱っこして戻ってくる。これって妻の偽遭難でしょう、妻は機嫌を直し、子供たちも家族が元どうりになったことを確認するのだ。

とはいえ、めでたしめでたしの後で、意地悪いラストを用意するあたり、やっぱり油断できないオチが待っていた。
それが、帰りのバスの中のことなんですが、運転手のドライバーテクニックが酷くて、山のカーブを曲がる度にゴッツンコとぶつかり、バックしては切り返してまた壁にぶつかるというデンジャーな運転手だったのです。
妻のエバは、先頭に立ってこんな危ない運転手ではと、皆をバスから降りるように説得するのです。バスの危険を思ってのことで、リーダーシップを取りたい人っているんですよ。でも、みんなバスから降りて、寒い下り坂を歩いて降りる乗客たちを見て、気の毒にと思いましたね。何かバツの悪そうな妻の不機嫌な顔。これで映画は終わりなんですが、何か物足りなさを感じました。
もしかして、帰りのバスに雪崩が降りかかり、せっかく仲直りした家族たちを乗せたバスが雪崩の下敷きにでもなるのかと思ってしまった。
2015年劇場鑑賞作品・・・170映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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