『96時間』シリーズなどでアクション俳優としての地位を確立した名優リーアム・ニーソンが主演を務め、ローレンス・ブロックの傑作ミステリーを映画化したサスペンス。引退した敏腕刑事が、猟奇殺人犯と激しい頭脳戦を繰り広げる姿を活写する。『ザ・ゲスト』などのダン・スティーヴンスや、ラッパーのアストロことブライアン・ブラッドリーらが共演。邪悪な猟奇殺人鬼に挑む主人公のパワーに圧倒される。監督は「ルックアウト/見張り」のスコット・フランク。
あらすじ:1999年、ニューヨーク。かつて酒に溺れ、刑事を辞めた冴えない私立探偵マット・スカダー(リーアム・ニーソン)。ある日、ドラッグ・ディーラーの男から、“妻を誘拐して惨殺した犯人を突き止め、捕まえて欲しい”との依頼が舞い込む。やがて犯人は2人組で、警察に通報できない麻薬関係者の身内ばかりを狙い、猟奇的な凶行を繰り返していることが明らかとなってくる。そんな中、新たな誘拐事件が発生する。被害者は別のディーラーの14歳になる娘ルシア。同一犯の仕業と確信し交渉役を引き受けると、残忍で狡猾な犯人を相手にギリギリの駆け引きを展開し、徐々に追い詰めていくスカダーだったが…。
strong><感想>62歳のリーアムが、またもや猟奇殺人犯をシバくハードボイルドのアクション映画に出演しているのだ。原作はローレンス・ブロックの傑作ミステリー小説「獣たちの墓」。人気シリーズで17作も描かれているらしい。
今作では、アルコール依存症のリハビリを続けている元刑事の私立探偵が、免許をもっていないからもぐりの私立探偵なんだけど、心に傷を負い、一度はアルコール依存症で人生のどん底に落ちながらも、今では立ち直ろうとして、断酒会へとせっせと通いづめているのだ。リーアムが演じると男の哀愁漂うキャラクターが際立って見えるのだ。
そんなスカダーが戦う今回の敵は、超異常な誘拐犯で、女性を誘拐しては身代金をせしめるだけでなく、自分たちの倒錯的な欲望を満たすために人質を残虐な方法で殺害し、その死体をバラバラにしては送り返すか、墓場や川などに小さくした肉片にしてビニール袋に包んで捨てるという。
快楽のためには手段を選ばない。異常な欲望のために、誘拐を繰り返しているのがこの男たち。抵抗されないよう、ターゲットにするのは若い女性か少女のみ。しかも、警察に通報できない弱みを持つ麻薬ディーラーの近親者を狙う卑劣さだ。
綿密でズル賢いのも、この男たちの特徴。雄弁で頭がいいリーダー格と無口な実行犯という、サイコキラーとしては珍しい2人組みなのにも注目。街を徘徊していても怪しまれない修理業者のバン(反抗のたびに車体の色やロゴを塗り替える)を装って獲物を物色する。
そして、誘拐した後は、残忍な手口で背筋も凍る拷問器具を使い、拘束して声を上げられないようにしたうえで、苦痛にゆがむ顔を撮影しながら楽しむのだ。身代金の要求はするが、生きて帰すつもりなど元々ないという凶悪さ。惨殺したあとは、バラバラにして処分する異常ぶりだ。
犯行の異常性と緻密さを感じさせる描写の積み重ねが、不穏な空気を見る物に与えていく構成は、「羊たちの沈黙」や最近ではヒュー・ジャックマンの「プリズナーズ」など、猟奇サスペンスのエッセンスを受け継ぐものであります。
グロテスクなシーンは、画面上では、殆ど映らないが、その冷酷さは伝わってきますから。通常の誘拐のルールが通用しない相手というのもやっかいだし。
犯人は麻薬ディラーなど、後ろ暗いところがあって、警察に通報できない連中の家族をターゲットにしているのだ。しかも、用意周到な準備をして目標を尾行して、相手の行動パターンを知った上で、特に白昼どうどうと犯行に及ぶんだから、手におえないよ、こつらは。
そんな、殺すこと自体が目的の誘拐犯を相手に、どう交渉すれば、人質を生きたまま奪還できるのだろうか。
最初に、妻を誘拐されたケニー(ダン・スティーヴンス)が、身代金を犯人に支払ったのに、妻は惨殺されて殺されていた。そのこともあり、ケニー本人も、麻薬の売人で、その売人繋がりで次のターゲットとなるのが、ロシア系麻薬ディーラーの娘ルシア。
このルシア役を演じているのが、本作が映画デビューとなるダニエル・ローズ・ラッセル。獲物を物色する誘拐犯たちの車の前を、赤いダッフル・コート姿で横切る美しいスローモーションのシーンが見逃せない。
初めに掴んだ情報で、墓の管理人というデブの男を狙うも、尾行してあるビルの屋上へと、そこには誘拐され殺された女の写真があり、こいつが犯人なのかと思ったのだが、リーアムの目の前で投身自殺をされてしまう。
そこで、リーアムが元刑事の勘で見つけたのが、麻薬取締捜査官の2人組みである。この悪徳捜査官の2人は、証拠を見つけないと捕まえられないので、相手の隙を狙って尾行する。そのリーアムの相棒となるのが、図書館や施設で寝泊まりする皮肉屋の黒人少年“TJ”だ。
ホームレスの少年と心を通わせ、やがてコンビとして事件解決へと挑んでいく姿も見逃せませんね。
犯人のアジトへと、黒人少年が2人組みのバンに乗り込み突き止めるお手柄である。しかし、そのアジトでは、女を拷問したり、その後に切り刻んだりする道具が地下室にあるのを見ると、背筋が凍りつきますから。
そ
して、リーアムとケニーことダン・スティーヴンスが、そのアジトに侵入していきます。その後は、どうしたかというと、そこは観てのお楽しみということで、もう一つのテーマは「贖罪」でもあるのです。スカダーは、かつて冒頭で起こした事件で、通りがかりの少女を拳銃の流れ弾で死亡させてしまうという記憶に、今も苦しめられているし、他の登場人物にも、それぞれ自らの罪や過ちと向き合わなければならない瞬間がやって来るわけなんです。単に異常犯罪者と探偵の駆け引きを描いたサイコ・サスペンスというだけでなく、人間ドラマの深みも加えたことが、この映画の魅力といってもいいでしょう。
2015年劇場鑑賞作品・・・110
あらすじ:1999年、ニューヨーク。かつて酒に溺れ、刑事を辞めた冴えない私立探偵マット・スカダー(リーアム・ニーソン)。ある日、ドラッグ・ディーラーの男から、“妻を誘拐して惨殺した犯人を突き止め、捕まえて欲しい”との依頼が舞い込む。やがて犯人は2人組で、警察に通報できない麻薬関係者の身内ばかりを狙い、猟奇的な凶行を繰り返していることが明らかとなってくる。そんな中、新たな誘拐事件が発生する。被害者は別のディーラーの14歳になる娘ルシア。同一犯の仕業と確信し交渉役を引き受けると、残忍で狡猾な犯人を相手にギリギリの駆け引きを展開し、徐々に追い詰めていくスカダーだったが…。
strong><感想>62歳のリーアムが、またもや猟奇殺人犯をシバくハードボイルドのアクション映画に出演しているのだ。原作はローレンス・ブロックの傑作ミステリー小説「獣たちの墓」。人気シリーズで17作も描かれているらしい。
今作では、アルコール依存症のリハビリを続けている元刑事の私立探偵が、免許をもっていないからもぐりの私立探偵なんだけど、心に傷を負い、一度はアルコール依存症で人生のどん底に落ちながらも、今では立ち直ろうとして、断酒会へとせっせと通いづめているのだ。リーアムが演じると男の哀愁漂うキャラクターが際立って見えるのだ。
そんなスカダーが戦う今回の敵は、超異常な誘拐犯で、女性を誘拐しては身代金をせしめるだけでなく、自分たちの倒錯的な欲望を満たすために人質を残虐な方法で殺害し、その死体をバラバラにしては送り返すか、墓場や川などに小さくした肉片にしてビニール袋に包んで捨てるという。
快楽のためには手段を選ばない。異常な欲望のために、誘拐を繰り返しているのがこの男たち。抵抗されないよう、ターゲットにするのは若い女性か少女のみ。しかも、警察に通報できない弱みを持つ麻薬ディーラーの近親者を狙う卑劣さだ。
綿密でズル賢いのも、この男たちの特徴。雄弁で頭がいいリーダー格と無口な実行犯という、サイコキラーとしては珍しい2人組みなのにも注目。街を徘徊していても怪しまれない修理業者のバン(反抗のたびに車体の色やロゴを塗り替える)を装って獲物を物色する。
そして、誘拐した後は、残忍な手口で背筋も凍る拷問器具を使い、拘束して声を上げられないようにしたうえで、苦痛にゆがむ顔を撮影しながら楽しむのだ。身代金の要求はするが、生きて帰すつもりなど元々ないという凶悪さ。惨殺したあとは、バラバラにして処分する異常ぶりだ。
犯行の異常性と緻密さを感じさせる描写の積み重ねが、不穏な空気を見る物に与えていく構成は、「羊たちの沈黙」や最近ではヒュー・ジャックマンの「プリズナーズ」など、猟奇サスペンスのエッセンスを受け継ぐものであります。
グロテスクなシーンは、画面上では、殆ど映らないが、その冷酷さは伝わってきますから。通常の誘拐のルールが通用しない相手というのもやっかいだし。
犯人は麻薬ディラーなど、後ろ暗いところがあって、警察に通報できない連中の家族をターゲットにしているのだ。しかも、用意周到な準備をして目標を尾行して、相手の行動パターンを知った上で、特に白昼どうどうと犯行に及ぶんだから、手におえないよ、こつらは。
そんな、殺すこと自体が目的の誘拐犯を相手に、どう交渉すれば、人質を生きたまま奪還できるのだろうか。
最初に、妻を誘拐されたケニー(ダン・スティーヴンス)が、身代金を犯人に支払ったのに、妻は惨殺されて殺されていた。そのこともあり、ケニー本人も、麻薬の売人で、その売人繋がりで次のターゲットとなるのが、ロシア系麻薬ディーラーの娘ルシア。
このルシア役を演じているのが、本作が映画デビューとなるダニエル・ローズ・ラッセル。獲物を物色する誘拐犯たちの車の前を、赤いダッフル・コート姿で横切る美しいスローモーションのシーンが見逃せない。
初めに掴んだ情報で、墓の管理人というデブの男を狙うも、尾行してあるビルの屋上へと、そこには誘拐され殺された女の写真があり、こいつが犯人なのかと思ったのだが、リーアムの目の前で投身自殺をされてしまう。
そこで、リーアムが元刑事の勘で見つけたのが、麻薬取締捜査官の2人組みである。この悪徳捜査官の2人は、証拠を見つけないと捕まえられないので、相手の隙を狙って尾行する。そのリーアムの相棒となるのが、図書館や施設で寝泊まりする皮肉屋の黒人少年“TJ”だ。
ホームレスの少年と心を通わせ、やがてコンビとして事件解決へと挑んでいく姿も見逃せませんね。
犯人のアジトへと、黒人少年が2人組みのバンに乗り込み突き止めるお手柄である。しかし、そのアジトでは、女を拷問したり、その後に切り刻んだりする道具が地下室にあるのを見ると、背筋が凍りつきますから。
そ
して、リーアムとケニーことダン・スティーヴンスが、そのアジトに侵入していきます。その後は、どうしたかというと、そこは観てのお楽しみということで、もう一つのテーマは「贖罪」でもあるのです。スカダーは、かつて冒頭で起こした事件で、通りがかりの少女を拳銃の流れ弾で死亡させてしまうという記憶に、今も苦しめられているし、他の登場人物にも、それぞれ自らの罪や過ちと向き合わなければならない瞬間がやって来るわけなんです。単に異常犯罪者と探偵の駆け引きを描いたサイコ・サスペンスというだけでなく、人間ドラマの深みも加えたことが、この映画の魅力といってもいいでしょう。
2015年劇場鑑賞作品・・・110