ネットを通じてセレブ女優のプライベートをのぞき見した青年が、予想外の事態に陥っていく姿を描いたスリラー。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのイライジャ・ウッドが主人公の青年に、「ガールフレンド・エクスペリエンス」のサーシャ・グレイがのぞき見される女優を演じた。新作映画のプロモーションキャンペーンで、人気女優と試写会のレッドカーペットを歩き、一緒にディナーもできるという企画に当選した青年ニック。イベント当日、ホテルに宿泊していた彼のもとに女優のマネージャーという男から電話が入り、女優が体調を崩して予定をキャンセルしたと知らされる。お詫びとして彼女の部屋を盗撮したライブ映像をパソコンで見られるようにすると言われたニックは、疑心を抱きながらも興味本位で女優のプライベートライブ映像をのぞき見し、やがて予想もつかない事態に陥っていく。
<感想>これは実に特異なサスペンス映画であります。主人公のニックの持つパソコンの画面が、そのまま映画自体の画面となり、その中に映し出されるウェブカメラの映像だけで物語の進行を見せ切ってしまうのである。
これはまさしく、インターネットやパソコンが普及して、スマホの普及で小さなPCが身に着けられるようになった、現代ならではの映画ですよね。
その一方で、主人公が我が意に反して事件の当事者になってしまう。巻き込まれ型スリラーの形ともいえるわけで、前半は見事にヒッチコックのパニック映画「裏窓」そのもので、覗き絡みのサスペンスであることなど、サスペンスたっぷりのヒッチコック作品の要素を盛り込んであります。
一つの画面の中で、複数の場所や登場人物の動きを一度に見せると言う手法は、過去作品にもあるような分割画面の効果的な活用を思い出せます。ですが、これらの作品では、この手法が要所だけで使われていたのに対して、本作ではほぼ全編に渡って用いられているのだ。
本作における複数の登場人物たちは、インターネットによって繋がっていることで、それぞれ離れた場所にいるにもかかわらず、お互いの行動に様々な影響を及ぼす。ちょっとした情報で個人が特定され、なりすまされてしまう。
それは観る者に、まるで彼らが一つの限られた空間の中に、存在しているかのような印象を与えるのだ。そのせいだろうか、本作には、70年代に量産されたパニック映画の雰囲気も感じる。多彩な登場人物が、災害などの異常事態の中で、時に協力し時に自分だけ助かろうとエゴを剥き出しにする。
そこまでのスケールの広がりはないものの、密室系のサスペンスの域を超えている本作は、パニック映画のスケールに近いと言えそうだ。
ですが、ネットで繋がった複数の登場人物による、ある意味では閉ざされた物語ではあるが、映画の中盤では、ニックがフランス人ハッカー集団の助けを借りて、誘拐された女優のジルを救出しようとするカーチェイスがかなり長く展開するのだ。
ですが、カメラを車のダッシュボードに装着させての、カーチェイスも迫力も抜群ですから。警察や自力でも脱出を試みるジルの動きも加わるこのシークエンスでは、サスペンス映画でもあるスケールの大きい類のものでもあると思う。
主人公のニックを演じたイライジャ・ウッドも、ホテルの部屋でのPC画面を見ているだけの演技。その時を待っていたかのように、PCに送られてきたURAをアクセスすると、ジルの真上の監視カメラからの映像が見られ、次のURAをクリックすると彼女のスマホがハッキングできてしまうのだ。
さらには、送らてきたソフトをインストールして、隣のホテルへ向けてビデオカメラを置くと、彼女の室内の様子が丸見えとは。ヒロイン役のサーシャ・グレイは、180本以上のハードコア・ポルノ出演でアメリカポルノ界を制圧した彼女の、見事な肢体に目が釘付けになりますから。
PCの技術を駆使した物語は、相当に手が込んでいて、不気味である。日ごろパソコンに向かい好奇心のあまり、押さなくてもいいところをつい、クリックしてしまい、嫌な思いをした経験は誰しもあるからだ。
その極限を描いたサスペンスものだけれど、全体のトーンは実験映画の面白さだろう。マニアックな映画ファンは、メインのカメラがどのくらい長くワンショットでいくのか気になってしまう。職場でも黙々とPCに向かっている時代だが、この作品に映画的快感があるかは別ものですから。
確かに、PC上で何もかもが進み、その新鮮な撮影や仕上げの合成が、大変な労力と技術で支えられ、スタッフの仕事ぶりにうたれます。でも、物語のサスペンスには驚きがありません。
多分、もう私たちにはこの映画にある、インターネットによる状況の変化に慣れているからで、何故それは起こるのか、その技術で何をやりたいのか、の方に映画の醍醐味というのは宿るのではないかと思う。
2015年DVD鑑賞作品・・・28映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>これは実に特異なサスペンス映画であります。主人公のニックの持つパソコンの画面が、そのまま映画自体の画面となり、その中に映し出されるウェブカメラの映像だけで物語の進行を見せ切ってしまうのである。
これはまさしく、インターネットやパソコンが普及して、スマホの普及で小さなPCが身に着けられるようになった、現代ならではの映画ですよね。
その一方で、主人公が我が意に反して事件の当事者になってしまう。巻き込まれ型スリラーの形ともいえるわけで、前半は見事にヒッチコックのパニック映画「裏窓」そのもので、覗き絡みのサスペンスであることなど、サスペンスたっぷりのヒッチコック作品の要素を盛り込んであります。
一つの画面の中で、複数の場所や登場人物の動きを一度に見せると言う手法は、過去作品にもあるような分割画面の効果的な活用を思い出せます。ですが、これらの作品では、この手法が要所だけで使われていたのに対して、本作ではほぼ全編に渡って用いられているのだ。
本作における複数の登場人物たちは、インターネットによって繋がっていることで、それぞれ離れた場所にいるにもかかわらず、お互いの行動に様々な影響を及ぼす。ちょっとした情報で個人が特定され、なりすまされてしまう。
それは観る者に、まるで彼らが一つの限られた空間の中に、存在しているかのような印象を与えるのだ。そのせいだろうか、本作には、70年代に量産されたパニック映画の雰囲気も感じる。多彩な登場人物が、災害などの異常事態の中で、時に協力し時に自分だけ助かろうとエゴを剥き出しにする。
そこまでのスケールの広がりはないものの、密室系のサスペンスの域を超えている本作は、パニック映画のスケールに近いと言えそうだ。
ですが、ネットで繋がった複数の登場人物による、ある意味では閉ざされた物語ではあるが、映画の中盤では、ニックがフランス人ハッカー集団の助けを借りて、誘拐された女優のジルを救出しようとするカーチェイスがかなり長く展開するのだ。
ですが、カメラを車のダッシュボードに装着させての、カーチェイスも迫力も抜群ですから。警察や自力でも脱出を試みるジルの動きも加わるこのシークエンスでは、サスペンス映画でもあるスケールの大きい類のものでもあると思う。
主人公のニックを演じたイライジャ・ウッドも、ホテルの部屋でのPC画面を見ているだけの演技。その時を待っていたかのように、PCに送られてきたURAをアクセスすると、ジルの真上の監視カメラからの映像が見られ、次のURAをクリックすると彼女のスマホがハッキングできてしまうのだ。
さらには、送らてきたソフトをインストールして、隣のホテルへ向けてビデオカメラを置くと、彼女の室内の様子が丸見えとは。ヒロイン役のサーシャ・グレイは、180本以上のハードコア・ポルノ出演でアメリカポルノ界を制圧した彼女の、見事な肢体に目が釘付けになりますから。
PCの技術を駆使した物語は、相当に手が込んでいて、不気味である。日ごろパソコンに向かい好奇心のあまり、押さなくてもいいところをつい、クリックしてしまい、嫌な思いをした経験は誰しもあるからだ。
その極限を描いたサスペンスものだけれど、全体のトーンは実験映画の面白さだろう。マニアックな映画ファンは、メインのカメラがどのくらい長くワンショットでいくのか気になってしまう。職場でも黙々とPCに向かっている時代だが、この作品に映画的快感があるかは別ものですから。
確かに、PC上で何もかもが進み、その新鮮な撮影や仕上げの合成が、大変な労力と技術で支えられ、スタッフの仕事ぶりにうたれます。でも、物語のサスペンスには驚きがありません。
多分、もう私たちにはこの映画にある、インターネットによる状況の変化に慣れているからで、何故それは起こるのか、その技術で何をやりたいのか、の方に映画の醍醐味というのは宿るのではないかと思う。
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