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ビッグ・アイズ ★★★.5

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世界中でブームとなった絵画シリーズをめぐり、実在の画家マーガレット&ウォルター・キーン夫妻が引き起こした事件の行方を描く伝記作品。妻が描いた絵を夫が自分名義で販売し名声を手にしていたことから、アート界を揺るがす大スキャンダルへと発展していく。監督は、自身もBIG EYESシリーズのファンであるティム・バートン。マーガレットに『アメリカン・ハッスル』などのエイミー・アダムス、夫ウォルターをオスカー俳優クリストフ・ヴァルツが演じる。

<感想>60年代のアメリカで一大ブームを起こした絵画「ビッグ・アイズ」シリーズ。大きな目をした可愛い子供がこちらを見据えているような、今でいう“不気味可愛い“の元祖ともいえそうなもの。その生みの親は、ウォルター・キーンだとされていたが、実は妻のマーガレット・キーンが一枚残らず描いていたという、嘘のような本当の話です。

ハンサムな画家のウォルター・キーンは、少女の絵を大量に売って大富豪となる。彼は、50年代に中流家庭向けに安価なリプリントの絵画を提供して大成功をおさめた。だが、そこには秘密があったのですね。実は絵を描いているのはウォルターではなく妻のマーガレットの方だったのです。

物語のヒロインはもちろんエイミー・アダムズ演じるマーガレット・キーンであり、彼女の夫の洗脳と暴力からの解放が語られる。ですが、この映画の真の主人公は夫のウォルターの方にも見える。クリストフ・ヴァルツのはじけきったテンションで演じるウォルターは、口から先に生まれてきたような男である。

パリ帰りを吹聴し、パリの街角を描いた絵を売っている彼は、隣で似顔絵描きをしていたマーガレットに目を付け、口説き落として結婚にこぎつける。
マーガレットと自分の絵を並べて売って、マーガレットの絵を買った人から作者と勘違いされると、一瞬戸惑いながらも認めてしまう。ウォルターが自分の嘘を自覚しているのは、おそらくそこが最後であり、そこから後は嘘で塗り固められた人生に、後悔かけらもも見えない。それからは、狂騒的なテンションで、売り込みと金儲けに精を出す夫のウォルター。

そして、ウォルターは儲けたお金でプールのある豪邸を購入。その中には、ひっそりとマーガレットのアトリエがあり、陽の光も差し込まない暗い部屋で、マーガレットは一人絵を描き続けている。それに、実はウォルターは結婚していて、娘がいて一緒に住むということに、これには、マーガレットもバツイチだということを聞いていないので怒るのだが、適当に丸め込まれてしまうのだ。
夫のウォルターは空っぽな人間であり、何もない中身を隠そうとするかのように、四六時中しゃべり続ける。まったく絵画の才能を持たず努力もしていない。画家への憧れだけは人一倍ある彼は、パリの街角を描いた絵も他人の絵であり、パリへも一度も行ったことがなく、空っぽな人間は自分の中身を捏造しようとするのだ。

マーガレットの「エスプレッソって大麻か何か?」と聞くほどに世間知らずで、保守的な50年代型の主婦であった彼女に対して、ウォルターは詐欺師のごとく口が達者で商才もあった。だから「ビッグ・アイズ」が評判になりギャラリーにたくさんの人が押し寄せてきても、絵は売れず無料のチラシだけがもらわれていく。真のアーチストだったなら怒りを感じるところだろうが、ウォルターは、チラシも無料ではなく代金を貰い、絵の方は「では、コピーを売ろう」という発想でもってバンバン売って富を築いていく。

俗物的な欲でポップアート界での立ち位置を、定めてしまうすごさは否定できない。夫がセレブと遊びあるいている間は、毎日16時間もアトリエで描き続けながら、名誉も称賛も得られないマーガレットの苦悩はいかばかりだったであろうか。

64年のNY万国博覧会用に、ユニセフに贈った絵がタイムズ紙で酷評され、ウォルターは怒り心頭に、娘にも嘘をつく現実に心を痛めていたマーガレットは、娘を連れて家を飛び出し、ついに真実を公表する。しかし、世間を味方につけた夫のウォルターから狂言扱いされてしまう。

当時は男尊女卑の時代だったから、夫に騙されていることに気付いても、それを訴えてまでということはなかったのだろう。名誉棄損罪で夫と新聞社を訴えたマーガレットだが、新聞社は不起訴処分で退席。残された夫は、裁判官から弁護士をつける準備を促されるも、「二流の弁護士なんて必要ない」と、自分で自分の弁護を始める。
女性の権利を主張するマーガレットに、最終判定では、裁判官の目の前でキャンバスに「ビッグ・アイズ」を描くという前代未聞の事態に。弁護士と原告の1人2役で演じる夫のヴァルツの寸劇は、確かにオスカー俳優らしく実に巧い。
2015年劇場鑑賞作品・・・45 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


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