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凍える牙 ★★.5

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直木賞を受賞した乃南アサの『凍える牙』。このベストセラーを韓国映画界が総力を結集して映画化。監督・脚本は『マルチュク青春通り』のユ・ハ。

主演には『殺人の追憶』のソン・ガンホ、『悲夢』のイ・ナヨンという実力派俳優が共演。出世競争に負けっぱなしで、妻は家出、公私ともに行きづまっている中年男サンギルと、典型的な男社会である警察組織で不当な扱いを受けながらもがく孤児ウニョンの、従来のヒーロー&ヒロインとは程遠いコンビが、難事件の裏に渦巻く闇に切り込んでいく様はスリリングかつドラマチック。殺人兵器に育てられたウルフドック“疾風(チルプン)”と共にウニョンが駆け抜けるシーンは心揺さぶられずにはいられない。
あらすじ:ソウルで奇妙な焼死体が発見された。停車中の車の中にいた男の体が突然発火、車ごと炎上したという。現場を訪れた中年刑事チョ・サンギル(ソン・ガンホ)は、班長から元白バイ警官の若き女性刑事チャ・ウニョン(イ・ナヨン)とコンビで捜査を行うよう命じられる。検証の結果、死体の太股には獣に噛まれた傷痕があり、尿からは覚醒剤が検出、ベルトのバックル内からはタイマーと点火装置が見つかり、引火性の強い化学物質が仕込まれていた。ヤクの売人から被害者の連絡先である塾の場所を聞き出したサンギルは、ウニョンとともに内部を捜査。隠し扉の奥のイメージクラブで、生前の被害者が未成年の少女たちを働かせ、薬物漬けにしていたことを突き止める。そんな中、新たな事件が発生。路上で大型犬に襲われて死亡した被害者は、麻薬と未成年買春の前科を持つナム・サンフンという男で、第一の被害者オ・ギョンイルとは知人同士であった。しかも首の傷痕と現場で採取された動物の毛を分析すると、ギョンイルは狼に噛み殺されたことが判明する。やがてミン・テシクという闘犬賭博に関わっている元ヤクザの存在が浮上、捜査チームはテシクの元恋人ミンジョンが出入りする売春組織のアジトへの手入れを敢行する。だがテシクは不在、車でその場にやってきたミンジョンは猛然と現れた狼に似た大型犬に襲われ、あえなく死亡。ウニョンはその捜査中に肋骨を折る大怪我を負う。(作品資料より)

<感想>景気よく燃え上がる人体自然発火で幕を開け、オオカミのような犬の噛み跡が遺体に残る連続殺人を追うクライム・サスペンス。第115回直木賞を受賞した、乃南アサのベストセラー小説「凍える牙」が韓国で映画化です。監督は「マルチュク青春通り」(04)で高い評価を得たユ・ハ。
これまで日本でも、主役の女刑事“音道貴子”を天海祐希や木村佳乃が演じ、TVドラマ化されてきましたが、どうやら原作者の乃南先生は改変などがお気に召さなかったご様子。しかし、今回の韓国版「凍える牙」は、著者の太鼓判つきだそうです。
本作の主演は、ソン・ガンホ。女刑事ものなのに、何故かガンホ推しな作品に仕上がっています。女房に離婚され出世が遅れている冴えない刑事で、同僚にからかわれたら見事な飛び蹴り炸裂!・・・「ガンホの飛び蹴りが見たい」という世界中の切なる要望に久々答えた豪快なキックですから。

馬鹿で無気力な刑事を演じさせたら世界屈指のソン・ガンホは、今回、大事件の手柄を独り占めしようとして、一人では抱えきれなくなり、大チョンボをカマすという期待を裏切らない活躍を見せています。
そしていつでも仲間がキレる心の準備ができているような、全力で速やかに仲裁する同僚など、韓国警察へ期待するものがありますね。ドロドロの出世競争で刑事が証拠や手柄として抱え込み、捜査が後手後手に回ってしまうなど、エゴが先に進むイヤーな描写も綿密で面白い。

ヒロインの女刑事ウニョンには、キム・ギドク監督作「悲夢」(08)などに出演した戸田恵梨香似の、イ・ナヨンが。男ばかりのチームへ新たに配属されて、想像を上回る露骨な男女差別の標的にされる気の毒な役なのだが、彼女が邦画の「英二」で長淵剛出演のヒロインだったことを思えばそれほどでもないのかも。
TVドラマの中で、カラオケルームで婦警が下着姿にさせられた神奈川県警ほどではないですが、やはり当然のようにセクハラをされ、拒絶すると今度はパワハラと、過酷な職場における容赦のないイジメが展開する。

職場の差別やイジメが怖いのは、情報を共有させてもらえないため、作業場でも孤立してしまうことです。特に警察では、頭の回る彼女が誰より早く容疑者を見つけても、彼女の発する言葉は黙殺されてしまい、犯人がいるかもしれない現場へ結局一人で乗り込むという、どう考えてもヤバいフラグが何度も立ちまくることになります。
そんな中で少しづつ、彼女の俊敏な頭脳に気付いてバディになりかけつつ、同時に男社会で虚勢を張らなければいけないガンホの戸惑いもさすがに芸達者だと思った。
そして狼犬(疾風、チルプン)の強く美しく、同時に犬の優しさを兼ね備えた姿。スカイブルーの獰猛な殺し屋の目をしながら、キューンと甘え声で鳴いたりするのが可愛いって。
結局、女が男社会な警察で居場所を確保する難しさや、原作にそもそもあった無理な設定が残されているのは欠点としても、イケメンが一人も出てこないのが残念ですよね。
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