テレビドラマ「実験刑事トトリ」シリーズや『アフロ田中』などに携った脚本家・西田征史が、初監督に挑んで放つコメディードラマ。一軒家に暮らす恋愛に消極的な弟とパワフルな姉が、誤って配達された手紙をめぐってそれぞれの恋と人生が懸かった騒動を巻き起こしていく。2013年に上演された舞台版でも主演を務めた、数々の出演作を誇る片桐はいりとテレビドラマ「S -最後の警官-」などの向井理が主人公の姉弟を快演。彼らの息の合った姉弟ぶりもさることながら、涙と笑いが絶妙に配分された人情味満点の物語も見どころ。
あらすじ:両親を早くに亡くしてから、離れることなく2人で一つ屋根の下で暮らしている、40歳のより子(片桐はいり)と33歳の進(向井理)の小野寺姉弟。過去の失恋がトラウマとなって恋愛に臆病になってしまった進、こだわりが人一倍ある上に生命力が異常に強いより子と、クセのある姉弟だったがほどよい距離を保ちながら共同生活を送っていた。そんな中、彼らのもとに一通の郵便が誤配達されてくる。その手紙をきっかけに、姉弟の恋と人生が思わぬ方向へと転がりだしていく。
<感想>実写版「怪物くん」の脚本家である西田征史が、監督に初挑戦したコメディドラマ。不器用な姉弟の暮らしを温かな視点でつづり、舞台化もされた自身の小説を映画化したもの。舞台版に続いての姉弟となる向井理と片桐はいりが、息の合った演技を見せています。
幼い頃に両親を亡くし、姉のより子が弟の面倒を見ながら、姉弟が仲良く暮らしている微笑ましいコメディふうの物語。とにかく姉の片桐はいりさんのインパクトが強すぎて、数十年オカッパ頭を貫き、風水にこだわり気の強いより子さん。四角い顔だけじゃなくて、仕草とか笑える部分が多すぎて、始終ニコニコしながら画面を見ていました。
姉も結婚を諦めたわけではないのですが、弟を自転車の後ろへ乗せていたところ、弟がふざけて姉の目をふさいだところ、自転車が激突して姉の前歯が折れてしまった。どうみてもブサイクな顔の姉、引け目を感じているのだと思っていたら、天真爛漫の陽気な性格だった。
いつでもどこからみても仲がよさそうだが、“姉と弟”という互いのポジションを意識して、気を使っている印象もそこはかとなく漂っているのだ。安定しているようで、実はちょっとタイトロープのような距離感。二人の関係は、郵便受けに入っていた1通の誤配達の手紙をキッカケにゆっくりと変化していくのです。
でも、二人は姉弟であると同時に、どこか母と息子のような関係でもあって。そんなことからも、より互いを気遣い思いやりつつ、時に不器用な行動を取ってしまうのが、この二人なのです。
どういうわけか、町内の眼鏡屋さんへ勤めているより子さんにも春が訪れたと思っていたら、ななんと、業者のイケメン浅野(及川光博)さんがより子さんに近づいてくる。ひょうきんなところが二人とも息が合っていて、とても仲が好さそうだったのにね。まさか、お向かいの洋品店の若い女性にお熱だったとは、より子さんが勘違いをしてしまって、可愛そうにまた失恋してしまった。
弟はと、以前に恋をした彼女(麻生久美子)とは、姉のことで問題になり「私を取るの、お姉さんが大事なの」なんて言われて、別れてしまった苦い経験がある。ところが、調香師をしている進くん、上司の大森南朋のむちゃぶりで、「ありがとうの香り」を依頼されて困っている。公園の生垣をくんくん匂いを嗅いでいると、美人の山本美月が犬を連れて散歩に来ていて、なんかいい感じになっていく二人。山本美月演じる女性は、あの郵便ぶつ誤配達で届けにいった人で、絵本の押し絵を描いている。弟の恋も、相手に伝えるタイミングが遅れてしまい、彼女は外国へ押し絵の勉強に行くことを決意する。
この二人の姉弟の空気とはどんなものを指すのだろう。互いに恋人の気配もない、三十路を過ぎた中年の姉弟が、生まれ育った実家を出ないまま二人で暮らしている。
端からみれば少々気の毒なようにもうつるこの関係はしかし、本人たちからすれば子供のころからの延長線上であり、互いにいて当然の存在なのだ。だが、そんな中にもそこはかと漂う“近しい間柄だこその微妙なあれこれ”。
きょうだいの空気とは、そういう言葉にしがたき繊細なものの混在を指すのであり、それを漂わせているのがこの映画だと思うのですね。
姉は姉の、弟は弟の人生を歩んではいるのですが、心の底では「相手よりも先に幸せを掴んではいけない」という負い目を感じており、優しさが空回りしてついつい事態がややこしくしてしまうのです。
その関係性と、微妙な押し引きによる距離感のドラマが、本作の魅力なんですね。そう、“ありがとうの香り“とは、有難い匂い、朝ご飯の炊きたての匂いとか、テーブルに飾ってある薔薇や百合の花の香りとか、玄関を入った時の我が家の匂いとか、人によっては違うんと思うんですね。だから、その香りを作るというのは難しいのかもしれませんね。ちなみに、私の”ありがとうの香り”は、娘がお風呂掃除をしてくれ、必ず毎日違うバスクリーンを入れてくれるので、お風呂に入ると本当に素直に”ありがとう”といいたくなる匂いです。
弟の進くんが、家のタタミの下に1000札を並べて貯金している。そのお札を姉の誕生日プレゼントにと、好きな物でも買ってと、タタミの匂いがする1000札の匂いも、姉にしてみれば“ありがとうの匂い”なのかもしれませんね。
2014年劇場鑑賞作品・・・327 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:両親を早くに亡くしてから、離れることなく2人で一つ屋根の下で暮らしている、40歳のより子(片桐はいり)と33歳の進(向井理)の小野寺姉弟。過去の失恋がトラウマとなって恋愛に臆病になってしまった進、こだわりが人一倍ある上に生命力が異常に強いより子と、クセのある姉弟だったがほどよい距離を保ちながら共同生活を送っていた。そんな中、彼らのもとに一通の郵便が誤配達されてくる。その手紙をきっかけに、姉弟の恋と人生が思わぬ方向へと転がりだしていく。
<感想>実写版「怪物くん」の脚本家である西田征史が、監督に初挑戦したコメディドラマ。不器用な姉弟の暮らしを温かな視点でつづり、舞台化もされた自身の小説を映画化したもの。舞台版に続いての姉弟となる向井理と片桐はいりが、息の合った演技を見せています。
幼い頃に両親を亡くし、姉のより子が弟の面倒を見ながら、姉弟が仲良く暮らしている微笑ましいコメディふうの物語。とにかく姉の片桐はいりさんのインパクトが強すぎて、数十年オカッパ頭を貫き、風水にこだわり気の強いより子さん。四角い顔だけじゃなくて、仕草とか笑える部分が多すぎて、始終ニコニコしながら画面を見ていました。
姉も結婚を諦めたわけではないのですが、弟を自転車の後ろへ乗せていたところ、弟がふざけて姉の目をふさいだところ、自転車が激突して姉の前歯が折れてしまった。どうみてもブサイクな顔の姉、引け目を感じているのだと思っていたら、天真爛漫の陽気な性格だった。
いつでもどこからみても仲がよさそうだが、“姉と弟”という互いのポジションを意識して、気を使っている印象もそこはかとなく漂っているのだ。安定しているようで、実はちょっとタイトロープのような距離感。二人の関係は、郵便受けに入っていた1通の誤配達の手紙をキッカケにゆっくりと変化していくのです。
でも、二人は姉弟であると同時に、どこか母と息子のような関係でもあって。そんなことからも、より互いを気遣い思いやりつつ、時に不器用な行動を取ってしまうのが、この二人なのです。
どういうわけか、町内の眼鏡屋さんへ勤めているより子さんにも春が訪れたと思っていたら、ななんと、業者のイケメン浅野(及川光博)さんがより子さんに近づいてくる。ひょうきんなところが二人とも息が合っていて、とても仲が好さそうだったのにね。まさか、お向かいの洋品店の若い女性にお熱だったとは、より子さんが勘違いをしてしまって、可愛そうにまた失恋してしまった。
弟はと、以前に恋をした彼女(麻生久美子)とは、姉のことで問題になり「私を取るの、お姉さんが大事なの」なんて言われて、別れてしまった苦い経験がある。ところが、調香師をしている進くん、上司の大森南朋のむちゃぶりで、「ありがとうの香り」を依頼されて困っている。公園の生垣をくんくん匂いを嗅いでいると、美人の山本美月が犬を連れて散歩に来ていて、なんかいい感じになっていく二人。山本美月演じる女性は、あの郵便ぶつ誤配達で届けにいった人で、絵本の押し絵を描いている。弟の恋も、相手に伝えるタイミングが遅れてしまい、彼女は外国へ押し絵の勉強に行くことを決意する。
この二人の姉弟の空気とはどんなものを指すのだろう。互いに恋人の気配もない、三十路を過ぎた中年の姉弟が、生まれ育った実家を出ないまま二人で暮らしている。
端からみれば少々気の毒なようにもうつるこの関係はしかし、本人たちからすれば子供のころからの延長線上であり、互いにいて当然の存在なのだ。だが、そんな中にもそこはかと漂う“近しい間柄だこその微妙なあれこれ”。
きょうだいの空気とは、そういう言葉にしがたき繊細なものの混在を指すのであり、それを漂わせているのがこの映画だと思うのですね。
姉は姉の、弟は弟の人生を歩んではいるのですが、心の底では「相手よりも先に幸せを掴んではいけない」という負い目を感じており、優しさが空回りしてついつい事態がややこしくしてしまうのです。
その関係性と、微妙な押し引きによる距離感のドラマが、本作の魅力なんですね。そう、“ありがとうの香り“とは、有難い匂い、朝ご飯の炊きたての匂いとか、テーブルに飾ってある薔薇や百合の花の香りとか、玄関を入った時の我が家の匂いとか、人によっては違うんと思うんですね。だから、その香りを作るというのは難しいのかもしれませんね。ちなみに、私の”ありがとうの香り”は、娘がお風呂掃除をしてくれ、必ず毎日違うバスクリーンを入れてくれるので、お風呂に入ると本当に素直に”ありがとう”といいたくなる匂いです。
弟の進くんが、家のタタミの下に1000札を並べて貯金している。そのお札を姉の誕生日プレゼントにと、好きな物でも買ってと、タタミの匂いがする1000札の匂いも、姉にしてみれば“ありがとうの匂い”なのかもしれませんね。
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