『長江哀歌(エレジー)』などで世界的に評価の高いジャ・ジャンクー監督が、実際の事件を基に変化を遂げる中国で必死に生きる人たちを描くヒューマンドラマ。実業家に利益を吸い上げられてきた山西省の炭鉱作業員、職を転々としながらホステスとの恋に苦悩する広東省の若者ら4人の平凡な男女を通して、中国の現代を浮き彫りにする。出演は、ジャ・ジャンクー監督作品に欠かせないチャオ・タオなど。急激な発展の陰で虐げられる人々の営みや、彼らが抱えるかなしみや怒りが心に響く。
あらすじ:山西省の村で共同所有していた炭鉱で、利益を吸い上げられてきた炭鉱作業員(チアン・ウー)。重慶の妻子に出稼ぎとうそをつき、仕送りを送る強盗(ワン・バオチャン)。かなわぬ恋を続けて年を重ねきた湖北省の女(チャオ・タオ)。職を転々とし、ナイトクラブのホステスとの恋に思い悩む男(ルオ・ランシャン)。虐げられてきた彼らはついに事件を起こしてしまう。
<感想>現代の中国で実際に起きた4つの事件の映画化である。日本のヤクザ世界の実録ものよりも観客を不安に陥れるのは、登場人物たちが貧富の格差や、固定化した社会体制に日常的に苦悩する等身大の男女だからだ。
路上に散らばる真っ赤なトマト、炭鉱で働く負け犬の中年男、貧乏で独り身で、惨めな境遇にイラ立ちを隠せない彼は、自分たちを搾取する汚職事件に怒りを燃やし、猟銃を手にして村の要人どもを次々に殺害していく。それと、同級生の中で、大物実業家となった彼を至近距離から猟銃をぶっ放す。
次は、重慶に妻子を残して各地で強盗を繰り返す男。人を殺すのが罪ではないとばかりに、拳銃をぶっ放す。故郷の妻はそのことを知らないのだ。
そして、身分違いの未来のない不倫にハマリ、社会の底辺を生きる女。サウナの受けつけ嬢をしながらも、客から売春婦扱いを受け、札束で顔を殴られキレてしまい、持っていた果物ナイフで男を切り付ける女。蛇の結婚占い師も出て来て、サウナの男をナイフで刺し殺した後、逃げ惑う女の前に蛇が出て来る。
広東省の工場労働者の若者は、仕事中にお喋りをしながら仕事に身が入らない。すると、隣の友達が手を機械に挟まれてケガをする。上司はケガの治療費は会社で払うが、怪我人の経費はお前の給料から差し引くと言われ辞めてしまう。仕事にも恋愛にも絶望する四面楚歌の青年は、ビルの屋上から投身自殺する。
4つのエピソードをオムニバスふうの構成で鮮烈に活写する物語。「オフィス北野」が制作に参加しているというからには、暴力が共通のテーマだとはいえ、その質、色、パターンは4話ごとに実にマチマチで、トマトをぶちまけたような、盛大な血しぶき祭りがあるかと思えば、寡黙な一瞬の殺傷劇があったりして、暴力の暴発、遂行、反射がある一方で、暴力の不発というか、暴力を回避した結果としての自殺もある。4話の中に、確かにパラレルものはあまりないのだ。
そして、大気汚染された空に向かって高層ビルが立ち並ぶ、バブル経済が狂い咲く一方、猛烈な格差が広がっている中国の現実を、生々しく反映した実録犯罪ものであり、追い詰められた弱者や愚か者がうごめく壮絶なる群像劇になっていると思う。
2014年劇場鑑賞作品・・・261 260 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:山西省の村で共同所有していた炭鉱で、利益を吸い上げられてきた炭鉱作業員(チアン・ウー)。重慶の妻子に出稼ぎとうそをつき、仕送りを送る強盗(ワン・バオチャン)。かなわぬ恋を続けて年を重ねきた湖北省の女(チャオ・タオ)。職を転々とし、ナイトクラブのホステスとの恋に思い悩む男(ルオ・ランシャン)。虐げられてきた彼らはついに事件を起こしてしまう。
<感想>現代の中国で実際に起きた4つの事件の映画化である。日本のヤクザ世界の実録ものよりも観客を不安に陥れるのは、登場人物たちが貧富の格差や、固定化した社会体制に日常的に苦悩する等身大の男女だからだ。
路上に散らばる真っ赤なトマト、炭鉱で働く負け犬の中年男、貧乏で独り身で、惨めな境遇にイラ立ちを隠せない彼は、自分たちを搾取する汚職事件に怒りを燃やし、猟銃を手にして村の要人どもを次々に殺害していく。それと、同級生の中で、大物実業家となった彼を至近距離から猟銃をぶっ放す。
次は、重慶に妻子を残して各地で強盗を繰り返す男。人を殺すのが罪ではないとばかりに、拳銃をぶっ放す。故郷の妻はそのことを知らないのだ。
そして、身分違いの未来のない不倫にハマリ、社会の底辺を生きる女。サウナの受けつけ嬢をしながらも、客から売春婦扱いを受け、札束で顔を殴られキレてしまい、持っていた果物ナイフで男を切り付ける女。蛇の結婚占い師も出て来て、サウナの男をナイフで刺し殺した後、逃げ惑う女の前に蛇が出て来る。
広東省の工場労働者の若者は、仕事中にお喋りをしながら仕事に身が入らない。すると、隣の友達が手を機械に挟まれてケガをする。上司はケガの治療費は会社で払うが、怪我人の経費はお前の給料から差し引くと言われ辞めてしまう。仕事にも恋愛にも絶望する四面楚歌の青年は、ビルの屋上から投身自殺する。
4つのエピソードをオムニバスふうの構成で鮮烈に活写する物語。「オフィス北野」が制作に参加しているというからには、暴力が共通のテーマだとはいえ、その質、色、パターンは4話ごとに実にマチマチで、トマトをぶちまけたような、盛大な血しぶき祭りがあるかと思えば、寡黙な一瞬の殺傷劇があったりして、暴力の暴発、遂行、反射がある一方で、暴力の不発というか、暴力を回避した結果としての自殺もある。4話の中に、確かにパラレルものはあまりないのだ。
そして、大気汚染された空に向かって高層ビルが立ち並ぶ、バブル経済が狂い咲く一方、猛烈な格差が広がっている中国の現実を、生々しく反映した実録犯罪ものであり、追い詰められた弱者や愚か者がうごめく壮絶なる群像劇になっていると思う。
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