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ノア 約束の舟 ★★★.5

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旧約聖書の創世記に記された「ノアの箱舟」の物語を実写化した大作。大洪水による世界滅亡を知らされた男ノアとその家族が、ある重大な使命を全うしようと巨大な箱舟の建造に乗り出していく。メガホンを取るのは、『ブラック・スワン』などの鬼才ダーレン・アロノフスキー。ノアにふんするラッセル・クロウを筆頭に、ジェニファー・コネリー、アンソニー・ホプキンスら、実力派スターが共演する。壮大な物語はもちろん、大洪水の描写にも息をのんでしまう。

<感想>日本人の多くにとって、旧約聖書は馴染みが薄いというのが本音ですよね。以前の映画で「十戒」や「天地創造」を観たことがある人たちには、そのビジョンやビジュアルが印象に残って、イメージが定着していると思います。
この映画では、従来の宗教的な映画と違って、神様を偶像として登場させていません。つまり、旧約聖書では主なる神は“世界”つまりあらゆるものを創った存在で、我々はその“世界”の内に存在するものの一つなんです。

この物語は、聖書の創世記の中でも初期に起こっている出来事で、神の予言で大洪水が起こるシーンに、聖書に記されている通りに箱舟の大きさ高さ13m、幅約22m、長さ約133mと実際に実物大のセットを建造したというから、さすがにダーレン・アロノフスキー監督の手腕とこだわりに驚きます。普通だったら一部をセットで作り、CGIで処理するのが最近の傾向なのに。ロング・アイランドのオイスター湾にあるブランティング・フィールズ・アーボリータム州立公園で5か月に渡って組み立てられ、実物の3分の1に当たる約52m分の箱舟が作り上げられたというのだ。

それに何よりも、神の啓示を受け、憑りつかれたように巨大な箱舟を建造するノアには、ラッセル・クロウが扮して少々デブっていて貫録ついて、いかにも頑固親父的な役柄にぴったりでした。箱舟が出来上がり大嵐が来て、大勢の人間が押し寄せてくるシーンでは、まるで「グラディエーター」のような迫力がありましたね。

物語は、アダムとイヴの時代から十世代後。アダムの三番目の息子セトの子孫であるノアが、幼い頃に父と弟を殺したカインの末裔トバル・カイン(レイ・ウィンストン)に殺されたが、何とかその場を逃れ妻のナーマ(ジェニファー・コネリー)と3人の息子、長男セム(ダグラス・ブース)次男ハム(ローガン・ラーマン)、三男のヤフェトと平穏な暮らしをしていた。だが、ある夜、眠りの中で造物主のお告げを目にする。悪行に染まった人類を滅ぼすため、世界は洪水に見舞われるというのだ。人間以外の生物を救うという自らの使命に目覚めたノアは、相談のために祖父メトシェラ(アンソニー・ホプキンス)のいる山に向かう。
途中で、腹に傷を負った少女イラ(エマ・ワトソン)を救い、祖父の元に着いたノアたちは、祖父からエデンの園の種を渡される。その種を蒔くとたちまち樹木が生え揃い森になる。ノアはその木材を材料に箱舟の建造に取りかかる。手伝うのは「番人」と呼ばれる堕天使たちも、始めはノアを敵視していたがやがてはノアを手伝ってくれるようになる。

いやはやさすがにデカイ建造物に驚き、始めに鳥たちがツガイでたくさん飛んできて、次は動物たちもかってにツガイで乗り込んでくるのだ。大嫌いな爬虫類の蛇までもがにょろにょろ来るのにびっくり。
それに、カインが率いる悪人どもが箱舟を狙って襲ってくるのを防御する「番人」たち。岩でできた巨大ロボットのようだ。ノアのために神が創ったのだろう。彼らは最後は光となって還っていくわけで、唯一神様の使いとして現れる存在なんですね。

それにしても、ノアの息子たち3人である。長男セムには子供の産めないイラという女がいるのだが、祖父のホプキンスがイラの腹を触って奇跡をおこし子供が産める体にしてくれたのだ。次男のハムは自分で女を見つけようと森の中へ行き、気に入った女を見つけるも帰り道で動物の罠に足を取られてしまう。助けようともがくもダメで、父親のノアに懇願するも洪水が押し寄せてくる前触れで、神のお告げには動物たちツガイを箱舟に乗せて救えという啓示を必死に守り、次男の女を助けることはなかった。これが後で、箱舟に押し入ったカインを見つけた次男が、父親に報告せずに裏切ることになる。

そして、長男にも至難が起こる。それはイラのお腹の子供が男の子ならいいと。女の子なら、その場で殺してしまうという残酷な父親なのだ。要するに新たな世界には、人類は存在するべきではないという造物主の意志だからというのだ。
それが、生まれてきたのは、双子の女の子で母親になったイラは、どうしても殺すというなら双子を抱いて心中しようと箱舟の上で決心したようなそぶり。母親の慈悲と長男セムの願いがノアに聞き届いたのか、双子の女の子は死なずにすんだのだ。あぁ、ノアも愛に満ちているんだと感情移入させるところが甘いと言えばそうですよね。

そして、神から選ばれた人間であるノアでさえ使命に縛られるあまり壊れていく。雨が降りやまぬ箱舟の中で、酒を飲んで裸で寝ているとは。洪水の中で閉ざされて薄暗い箱舟で、騙し合い憎み合う家族の姿は、ただただ重苦しく見える。次男のハムが腹いせにカインの言うことを聞き、獣を殺してノアをおびき寄せる。人間に備わっている邪心みたいな悪い部分を含めて人間だから、そこに感情移入して観る映画なのかもしれません。二人の取っ組み合いは、やはりノアに勝算ありということなのか。
一番の見どころは、記録破りの大洪水のシーンですね。通常の雨のシーンの3倍の雨を降らせて視覚化した豪雨と大洪水のシーンは飛んでもなく迫力ありました。箱舟の中に入った動物たちや鳥などは、薬草で眠らせられていました。そして、7日間の大雨が止み、鳥が新緑の芽がついた枝を加えてきた。新大陸が見え虹が綺麗です。ですが、新しい世界が訪れても彼らは迷い続けるのだ。

堕落した人間を地上から消し去るという神の宣告を受けたノアだったが、果たして人類に未来はあるのか?・・・滅びに向かうというのがノアの神からの啓示だったはず。新しい命に対してはノアは手を下せなかったわけで、神に背く行為とも言えます。けれども、そもそも神の意志というのは、ノアが勝手に思ったことなわけで、神の意志に関係なくそこに至ったということ。
それにしても人類が栄える日が来るのかは謎のままで終わる。美しい映像やアクションにも息を呑むが、創世記の壮大なストーリーの中で描かれる人間の生々しい姿こそが、心を揺さぶり続ける。
2014年劇場鑑賞作品・・・214 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


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