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東京難民 ★★★

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学費未払いを理由に大学から除籍された青年が、ネットカフェ難民からホスト、さらにホームレスへと転落していく青春群像劇。『ツレがうつになりまして。』の監督、脚本コンビの佐々部清と青島武が福澤徹三の小説を原作に、現代社会が抱える闇をリアルに描く。格差社会の底辺でもがく主人公を、『行け!男子高校演劇部』などの中村蒼が熱演。共演には『パートナーズ』などの大塚千弘、劇団EXILEの青柳翔、『桐島、部活やめるってよ』などの山本美月ら多彩な顔ぶれがそろう。
あらすじ:堕落した大学生活を送ってきた時枝修(中村蒼)は、生活費を工面してくれた父親が借金を抱えて行方をくらまし、授業料未納によって大学を除籍される。家賃も払えずアパートを追い出された彼は、ネットカフェで宿泊しながら日払いのアルバイトで過ごしていた。さらにはホストクラブで働くはめになり、ついにはホームレスになってしまう。
<感想>この映画を観て思ったのは、過酷な生活をしている人たちはたくさんいるが、そこから努力して成功した人だっているのだ。境遇を恨んで犯行に及んだ加害者は腐っているとしか言えないのだが、しかし、そんなことはとても口にできるものでもない。自分がもし、そういう状況に陥ったら本当にそれでも明るく前向きに努力を続けることなど、とてもできないと知っているからだと思う。

この手の映画でも現実の事件でも同じだと思うが、判で押したように言われることだ。主人公は何処にでもいる普通の大学生。その父親が借金を抱え失踪。あっという間に大学は授業料滞納で除籍、住んでいるアパートも出なくてはならなくなる。
それでも最初のうちは、ネットカフェに身を寄せながら、新薬の実験台になる高額アルバイトなどに、半ばゲーム感覚でトライする余裕さえある。「自分が本気を出せば就職くらい何とかできるさ」、と思って居たのかも知れない。

だが、後戻りできなくなるのは、うかつにも足を踏み入れたホストクラブで料金を払えずに、結局は自分もホストとして働き始めたころからか。金のためには女性客を騙したり、仲間を裏切ったり、時には違法ビジネスにまで手を染めるのは当たり前と言う、ホストの世界に「昨日までは普通の大学生だったのに」と主人公はショックを受ける。
しかしだ、世間では評価される彼の誠実さや人間性も、裏の社会で生き延びる上では、邪魔以外の何物でもないのだ。その世界に染まることができなかった彼は、逃げるようにそこを離れて日雇い労働の現場に飛び込むのだが、そこで待っていたのは劣悪な環境と搾取である。
弱い立場の人間は、何処まで行っても“食い物”にされるだけなのだ。結局は、彼を受け入れてくれたのは、段ボールとビニールシートで作った住まいで暮らすホームレスだったというわけ。

この元学生は、親のスネをかじりヌクヌクと育った甘ちゃんだ。だから普通だったら、親の親戚に相談に行くとか、大学だって働きながら奨学金の申請を出すとか、役所の福祉課や弁護士の無料相談に行けば何とかなっただろうに。ですが、ここでは主人公はそういった社会的資源を使う情報も手段も持ち合わせていなかったのだろう。
これまで街の風景としか見てなかったネットカフェやティッシュ配りや、ホストクラブに対する見方が少し変わり、途中から主人公、時枝修の大学を除籍されてから路上へと放り出されるまでの描写は、シャープでかつ冷酷非情極まりなく、もはやスリラーの域である。

さらには、修がその時の感情に流されて、事態をどんどん悪化させていく過程を丁寧かつリアルに描き、身分証や住居がなければ普通に働くことさえできない格差社会の厳しい現実を浮き彫りに見せているのも良かった。ですが、一つ一つのエピソードのネタとなっている格差や貧困の実態はすでに知られている物ばかりで、インパクトがあるわけではない。
お金がすべての世の中に絶望的な気分になったが、井上順が演じているホームレスの優しさに救われた感じもする。主人公が対峙する連中が意外と悪いやつじゃない連中ばかりで、結局のところ、いい話で締めているところが物足りなかった。
2014年劇場鑑賞作品・・・97  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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