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グロリアの青春 ★★★.5

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結婚や子育て、離婚を経験したキャリアウーマンの58歳の女性をヒロインに、新しいパートナー、息子や娘との関係を赤裸々に描くチリ発のヒューマンドラマ。仕事をこなし、余暇にはダンスを楽しむ中年女性がある男性と出会うも、前妻や子どもたちに振り回される相手に失望し、とある行動に出るまでをつづる。監督は、チリの新星セバスティアン・レリオ。主演のパウリーナ・ガルシアは中年の恋愛模様を繊細に演じ、かつ大胆なベッドシーンに挑むなど、その熱演でベルリン国際映画祭主演女優賞を受賞。孤独ながらも力強く生きるヒロインの姿に感動する。

<感想>夫と離婚、子供も独立した中年キャリアウーマンが次の人生へ踏み出す姿を描いている。主演のグロリア役で昨年のベルリン国際映画祭で主演女優賞を受賞したパウリーナ・ガルシア。甘えない、愚痴らない、過去や思い出に執着しない。ときにはついコントロールを斬りそこなうこともあるが、自分の人生の舵は自分で取る。
とにかく、グロリアを演じるパウリーナ・ガルシアに息を呑む。別れた夫への、息子への、娘への、新たなパートナーへの想いが、さりげない仕草と言葉で伝わる魔法のような作品。

それにしても、舞台はチリ。自由な生活を楽しむことには積極的なグロリアは、中高年が集まるダンスホールに気楽に出かけ、気の合う相手が見つかれば一夜を共にすることもある。「大胆な熟年セックスシーンつき、元気が出るシニア女性応援映画」かと思いきや、そうそう一筋縄にはいかないのだ。

誰に気兼ねするわけではない大人同士のフィフティ、フィフティの関係なのだから。ホールは大賑わいで、グロリアが実業家のロドルフォと出会ったのも、始めはあくまでも後腐れのない関係としてだったのだが、セックスの相性の良さと、自分のために誌を囁いてくれる彼にいつしかほだされるようになる。
劇中のグロリアには、ワインを飲みながらチリの政治や社会を語る友人たちはいても、家族のことや自分のこと、あるいは男のことなど好きに喋って大声で笑いあう気の置けない女友達は出てこない。だが、別に彼女に女友達が一人もいないというのではなく、グロリアの行動のみに焦点を当てたこの作品では必要なかったということなのだろう。

とはいえ、ここでメインとなるのは、かなりありきたりの出会いと別れである。誰かと親密な関係になるのは久しぶりであるグロリアは、息子の誕生パーティーにロドルフォを同伴して行く。娘や元夫も再婚相手の女と来ていた。ですが、1年前に離婚したというロドルフォは、生活は別でもまだ完全には妻子と縁を切ったわけではなく、父親、そして夫という立場を引きずっている。だから、息子の家でも、娘からの電話に出て急に飛び出しいなくなるのだ。
私には、元夫とグロリアが、仲良く自分たちの結婚式の写真を見て楽しそうに話しているのに、嫉妬をして腹を立てて帰ったのかと思ったのだが、違うようだ。

この作品の合間、合間にグロリアの住んでいる上階の部屋の飼い猫、毛のない猫がグロリアの部屋に迷い込んでくる。それに、上階の部屋の住人、初めは夫婦喧嘩の罵声が煩くて、次には妻に逃げられたらしく、独り言だと思うがやはり怒鳴り声が煩く聞こえる。これは堪りませんよね、ヘンッドホンをして音楽でも聞いて寝るかしないと気になって仕方ありませんもの。
グロリアが自分の生活を楽しまないと、どちらも不幸になると、ロドルフォに言うのだが、男の描き込みが不徹底でなんと男らしくないことか。どの男もである。息子だって離婚して幼子を育てているのだ。

ですが、グロリアだって格別に強い女ってことではない。スェーデン人の男の子供を妊娠した娘を空港で見送るシーンでは、つい我を忘れて娘を追いながら、隠れてこっそりと涙する姿もある。それに、緑内障と診断されても目薬を点し、あるいは、打ちひしがれたグロリアが、路上で操り人形のガイコツによるポップな踊りに自分の死を感じるシーンもある。
後半で、グロリアは一度は愛想を尽かしたロドルフォに何度も電話を貰い誘われて、リゾート地の高級ホテルに出かけるのだが、そこでも家族からの電話で元妻が事故に遭ったという知らせに気もそぞろで、家族離れのできないロドルフォに置き去りにされる。
その後の彼女の行動には、危険を省みない無防備すぎるグロリアと、一方ではエネルギッシュなテンションの高さに驚いたり、つまり捨てられた腹いせに、行きずりの男と酒を飲みダンスをして、酩酊状態でバックを盗られ乱暴されて海岸の波打ち際で無ざまに目覚める惨めな彼女がいた。

けれどもドッコイ、そんなことではヘコタレナイ。女は何度でも復活するとばかりに、優柔不断なロドルフォの家へ行き、トランクの中にあるおもちゃの機関銃で、帰って来るロドルフォを待ち、彼目がけてカラーの破裂する弾を何発も撃つのだ。
その後は、娘の結婚式へ行き、楽しそうに踊る狂う勝利者のようなグロリアの姿があった。この映画は、あくまでもグロリアの行動のみを追いながら、グロリアが出会った人たち、家族や友人にしても、グロリア側から描かれるだけで、それはロドルフォとの関係でも同じであり、その徹底した一貫性から、グロリアが時に感じる苛立ちや孤独、所在な様まで、まさにありのままに伝わってくる。
2014年劇場鑑賞作品・・・93  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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