『レッド・オクトーバーを追え!』などの原作で知られる、トム・クランシーの人気小説「ジャック・ライアン」シリーズを新たに実写化したサスペンスアクション。投資銀行員という表向きの顔を持つCIA情報分析アナリストのジャック・ライアンが、世界恐慌勃発を狙う巨大な陰謀に立ち向かう。主演は『スター・トレック』シリーズのクリス・パイン。共演には、監督も務めるケネス・ブラナーに『プライドと偏見』などのキーラ・ナイトレイ、ベテランのケヴィン・コスナーと、実力派が結集する。
<感想>前作から十数年余り、紆余曲折を経てこの新作「ジャック・ライアン生誕30周年記念」に位置づけられるが、奇しくも原作者クランシーは劇場公開を前にして、13年10月1日に急死、映画はクランシー追悼の意も抱えることになってしまった。
新生「エージェント:ライアン」は、経済学博士課程に学ぶ青年ライアンが、CIAに入局し活躍していく、まったくの新シリーズとしてリブートされたもの。ニューフエルドが示したライアン役の条件は、第一にグッド・アクターであること、そして魅力的であること、信頼できる人物で、スマートかつ頭脳派であること。これをクリアし、トム・クランシーにも承認されたのが新進男優のクリス・パインなのだ。
物語の背景は現代、ライアンの大学生時代にNYでの9.11の惨劇、その後にリーマンショック以降に相応しく経済テロを扱い、80年代を生きていたライアンが様々な意味で“いま”という舞台に還って来る。人物造形は原作そのままに、しかも激動の過ぎ去りし国際情勢から解放され、今日の映画リアリズムに沿ったスパイ映画シリーズとして再生するのである。
さて、どんな人物かというと、頭脳明晰だが、ある種平凡な男であるということ。ジェームズ・ボンドや、ジェイソン・ボーンのようなヒーローではない。天才的なエコノミストで経済危機がいつ訪れるのか予測はできても、それ以外の部分ではエリート育ちの普通の男。だからこそ、そんな彼が何故危険を犯してまでCIAに入るかという動機が肝心になってくる。
そんなわけで、映画の冒頭3分の一は、特に興味深いと思う。ケヴィン・コスナー演じるCIA上官が、ポスト冷戦時代に生きるライアンに対して、使命を果たし国を助けることがいかに意義のあるかということを納得させる。
冷戦以後も世界には様々な対立があるけれど、この映画の場合は、旧帝国アメリカと新興財閥による新帝国ロシア。そして金融界や政治情勢がその境界線を曖昧にしていく。ライアンは経済アナリストとしてそこに関心を持つと同時に、多くの疑問も抱くわけなんですね。
監督のケネス・ブラナー自身も、ライアンの宿敵となるロシアの投資家、ヴィクター役で巧みなロシア語とロシア訛りの英語で悪役を怪演している。キャサリン役のキーラも素晴らしく、今回もその美貌を振りまき、仕事熱心な役回り。ライアンの恋人でもあるキャサリンは、眼科医で賢くて、情熱的な女性。この手にありがちな恐怖におののく女性とは違って、強くて自立している。
彼がキャサリンと出会ったのは、海兵隊員だったころで、アフガニスタンで搭乗していたヘリが襲撃され墜落し、仲間の二人を助けて自分は背骨を折るという重傷を負う。その時にリハビリを担当して心身ともに彼を再生させてくれたのが彼女だった。当時は医学生だったが、立派な眼科医である。
モスクワの投資会社の不穏な動きに気付き、投資会社チェレヴィンの持つアメリカの財政を左右するほどの巨大な外資口座がアクセス不能になっている。
ジャックをCIAに採用した上官ハーパーに事態を報告するが、いつものように現場エージェントを派遣するのではなく、ジャックにモスクワに飛ぶように指令する。現場経験のない、いわばデスクワークの彼が何故?・・・不思議に思いながらモスクワへと入り、行動を開始するのだが、そんな彼に同グループの警護員が襲い掛かってくる。巨漢の黒人でとても力技にはかなわない。しかし、格闘の末に風呂場に追い込んで水責めにして殺してしまう。
ジャックは初めて人を殺した事に動揺して、エージェントのルールすら知らないため、CIA本部に規定違反となる一般回線で連絡。指示を仰ぐしかなかった。指定された公園で、いつの間にかモスクワに来ていたハーパーと出会う。
チェレヴィン・グループの企みが成功すれば、世界は数週間の内に恐慌に陥り、暴動や食糧難で莫大な人数が命を落とすことになるというのだ。
監査の続行を命じたハーパーは、ジャックに拳銃を渡し、エージェントとして働くように指示する。ケヴィン・コスナーの上官役は、海軍の制服が決まっていて素敵ですよね。でも、狙撃手って美味しい役回りじゃん。アクションシーンがあまりないので、年には勝てないってことなのか。
翌日チェレヴィン・グループの代表に面会するが、すでに証拠は隠滅されていた。それに、ホテルには、パリで落ち合うはずの恋人キャサリンが部屋で待っているではないか。しかも、彼女の傍には拳銃が。誰を信用すべきなのか、何が真実なのか、ジャックの孤独な戦いはどのような結末を迎えるのか。
自分の危険な仕事場に恋人が現れ、彼女を危険な目に遭わせることになる。どうみてもお邪魔虫なのだが、キャサリンが機転を利かして、お金好き、女好きな男であるチェレヴィン・グループの代表を誘い出して時間稼ぎをすることに。
ケネス・ブラナーを上手く騙して、その間に彼の会社に潜り込むジャック。
この辺りは、エージェントならお手の物でしょうに、CIAの協力でPCからダウンロードするジャック。しかし、普通だったらPCの中に大事なファイルはしまって置かないはずなのに。それに、警備もユルユルで難なくパスするなんてね。
ケネス・ブラナーが感づいてからが大変な騒ぎで、キャサリンも拉致されるし、でもダイヤの婚約指輪にGPSが付いているし。ここからが、ジャックのアクション開始なんですが、すぐに浮かぶのが、ハリソン・フォードが演じた「パトリオット・ゲーム」、「今そこにある危機」でのアクションシーンの派手だったこと、カーチェイスとかも普通だし何か物足りなさを感じてしまった。
2014年劇場鑑賞作品・・・41 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>前作から十数年余り、紆余曲折を経てこの新作「ジャック・ライアン生誕30周年記念」に位置づけられるが、奇しくも原作者クランシーは劇場公開を前にして、13年10月1日に急死、映画はクランシー追悼の意も抱えることになってしまった。
新生「エージェント:ライアン」は、経済学博士課程に学ぶ青年ライアンが、CIAに入局し活躍していく、まったくの新シリーズとしてリブートされたもの。ニューフエルドが示したライアン役の条件は、第一にグッド・アクターであること、そして魅力的であること、信頼できる人物で、スマートかつ頭脳派であること。これをクリアし、トム・クランシーにも承認されたのが新進男優のクリス・パインなのだ。
物語の背景は現代、ライアンの大学生時代にNYでの9.11の惨劇、その後にリーマンショック以降に相応しく経済テロを扱い、80年代を生きていたライアンが様々な意味で“いま”という舞台に還って来る。人物造形は原作そのままに、しかも激動の過ぎ去りし国際情勢から解放され、今日の映画リアリズムに沿ったスパイ映画シリーズとして再生するのである。
さて、どんな人物かというと、頭脳明晰だが、ある種平凡な男であるということ。ジェームズ・ボンドや、ジェイソン・ボーンのようなヒーローではない。天才的なエコノミストで経済危機がいつ訪れるのか予測はできても、それ以外の部分ではエリート育ちの普通の男。だからこそ、そんな彼が何故危険を犯してまでCIAに入るかという動機が肝心になってくる。
そんなわけで、映画の冒頭3分の一は、特に興味深いと思う。ケヴィン・コスナー演じるCIA上官が、ポスト冷戦時代に生きるライアンに対して、使命を果たし国を助けることがいかに意義のあるかということを納得させる。
冷戦以後も世界には様々な対立があるけれど、この映画の場合は、旧帝国アメリカと新興財閥による新帝国ロシア。そして金融界や政治情勢がその境界線を曖昧にしていく。ライアンは経済アナリストとしてそこに関心を持つと同時に、多くの疑問も抱くわけなんですね。
監督のケネス・ブラナー自身も、ライアンの宿敵となるロシアの投資家、ヴィクター役で巧みなロシア語とロシア訛りの英語で悪役を怪演している。キャサリン役のキーラも素晴らしく、今回もその美貌を振りまき、仕事熱心な役回り。ライアンの恋人でもあるキャサリンは、眼科医で賢くて、情熱的な女性。この手にありがちな恐怖におののく女性とは違って、強くて自立している。
彼がキャサリンと出会ったのは、海兵隊員だったころで、アフガニスタンで搭乗していたヘリが襲撃され墜落し、仲間の二人を助けて自分は背骨を折るという重傷を負う。その時にリハビリを担当して心身ともに彼を再生させてくれたのが彼女だった。当時は医学生だったが、立派な眼科医である。
モスクワの投資会社の不穏な動きに気付き、投資会社チェレヴィンの持つアメリカの財政を左右するほどの巨大な外資口座がアクセス不能になっている。
ジャックをCIAに採用した上官ハーパーに事態を報告するが、いつものように現場エージェントを派遣するのではなく、ジャックにモスクワに飛ぶように指令する。現場経験のない、いわばデスクワークの彼が何故?・・・不思議に思いながらモスクワへと入り、行動を開始するのだが、そんな彼に同グループの警護員が襲い掛かってくる。巨漢の黒人でとても力技にはかなわない。しかし、格闘の末に風呂場に追い込んで水責めにして殺してしまう。
ジャックは初めて人を殺した事に動揺して、エージェントのルールすら知らないため、CIA本部に規定違反となる一般回線で連絡。指示を仰ぐしかなかった。指定された公園で、いつの間にかモスクワに来ていたハーパーと出会う。
チェレヴィン・グループの企みが成功すれば、世界は数週間の内に恐慌に陥り、暴動や食糧難で莫大な人数が命を落とすことになるというのだ。
監査の続行を命じたハーパーは、ジャックに拳銃を渡し、エージェントとして働くように指示する。ケヴィン・コスナーの上官役は、海軍の制服が決まっていて素敵ですよね。でも、狙撃手って美味しい役回りじゃん。アクションシーンがあまりないので、年には勝てないってことなのか。
翌日チェレヴィン・グループの代表に面会するが、すでに証拠は隠滅されていた。それに、ホテルには、パリで落ち合うはずの恋人キャサリンが部屋で待っているではないか。しかも、彼女の傍には拳銃が。誰を信用すべきなのか、何が真実なのか、ジャックの孤独な戦いはどのような結末を迎えるのか。
自分の危険な仕事場に恋人が現れ、彼女を危険な目に遭わせることになる。どうみてもお邪魔虫なのだが、キャサリンが機転を利かして、お金好き、女好きな男であるチェレヴィン・グループの代表を誘い出して時間稼ぎをすることに。
ケネス・ブラナーを上手く騙して、その間に彼の会社に潜り込むジャック。
この辺りは、エージェントならお手の物でしょうに、CIAの協力でPCからダウンロードするジャック。しかし、普通だったらPCの中に大事なファイルはしまって置かないはずなのに。それに、警備もユルユルで難なくパスするなんてね。
ケネス・ブラナーが感づいてからが大変な騒ぎで、キャサリンも拉致されるし、でもダイヤの婚約指輪にGPSが付いているし。ここからが、ジャックのアクション開始なんですが、すぐに浮かぶのが、ハリソン・フォードが演じた「パトリオット・ゲーム」、「今そこにある危機」でのアクションシーンの派手だったこと、カーチェイスとかも普通だし何か物足りなさを感じてしまった。
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