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トゥ・ザ・ワンダー ★★★

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『ツリー・オブ・ライフ』などの巨匠テレンス・マリックがメガホンを取り、愛の移ろいを圧倒的な映像美とともに描いたヒューマンドラマ。エンジニアの男性を主人公に、シングルマザーの女性との恋が生まれる瞬間や心の擦れ違い、学生時代の女友達との間に抱く安らぎを繊細につづる。主演は、『アルゴ』などのベン・アフレックをはじめ、オルガ・キュリレンコ、レイチェル・マクアダムス、ハビエル・バルデムが共演する。はかなく美しい愛の物語と、フランスのモン・サン・ミッシェルなどを捉えた流麗なカメラワークに陶酔する。
あらすじ:エンジニアのニール(ベン・アフレック)は旅行で訪れたフランスのモン・サン・ミッシェルで、シングルマザーのマリーナ(オルガ・キュリレンコ)と出会い付き合うことになる。アメリカで一緒に暮らし始めた二人だったが、やがて心が離れていくように。そんなある日、ニールは学生時代の友人ジェーン(レイチェル・マクアダムス)と久しぶりに会い、やがて彼女に心の安息を感じるようになり……。

<感想>ワンダーとは、テレンス・マリック監督によると一義的には、この映画の冒頭の舞台となる、ワンダー「驚異」大自然の驚きと呼ばれるフランス・ノルマンディー海岸の島、モン・サン・ミッシェルのことである。しかし、それは人が人を愛することの驚異=ワンダーであり、ワンダーが幾重にも重なって広がり、展開されていく、それは映画の未来を照らす光かもしれない。

男女の不毛とも取れる愛憎と、信仰に苦しむ牧師の姿が描かれる。描きようによっては醜く、耐え難いはずのドラマだが、マリック監督は、そんなドラマの中にもあらゆるものに「ワンダー」を見出そうとする。フランス・ノルマンディー海岸の自然が繊細に捉えられているのは当然としても、監督はオクラホマのスーパーマーケットの店内にさえ繊細な美しさを見出している。
ベン・アフレックが演じる主人公は、環境保護調査員の仕事に就いている。人の営みを包み込む自然を、人が自らの手で破壊していることにマリック監督はさりげなく、しかし、真摯な姿勢で触れている。しかしそれとて、例え人が自らの手によって滅んだとしても、それは永遠の宇宙の「ワンダー」からすれば取るに足らないことだろう。

物語は主に登場人物たちのモノローグによって語られ、進んでいく。セリフとセリフのやりとりによる、登場人物どうしの葛藤や演劇性はほんのわずかである。というかエピソードの断片として見せられるだけ。これほど演劇性から遠ざかっている映画はない。
ストーリーはそんなに若くない男女の恋のドラマ。アメリカの男性がフランスで、フランスの女性と恋に落ちる。10代で結婚し、失敗した女には、小学生くらいの娘がいた。3人はアメリカへ行き一緒に暮らす。しかし、うまくいかず、彼女と娘はフランスへ戻り、娘は父親のもとへ引き取られる。女は再びアメリカへ行くが、二人は決してうまくはいかない。どうなるのか?・・・。

男女の愛の高揚と終焉という単純で、かつある意味下世話な物語を、超越的な主題と結びつけているも、今回は無理がない。フランス女は情熱的で、結婚という決まり事に縛られたくないようだ。家庭的ではなく、いつも男とベットを楽しみたい。男は仕事で疲れ苦しんでいる。家庭に帰っても洗濯も炊事もしないフランス女。愛しているから一緒にいようでは済まされない何かが存在する。

「愛」という、見えないけれども絶対的に思えるもの。「神」という、見えないからこそ信じたいもの。「結婚」という、信じるに足るらしい制度。つまるところ孤独と表裏一体の愛というものに還っていく何かを、映画にするための試みなのだろうか。俳優たちが全力で、監督から提示された普遍的な「何か」と、アメリカの現実の表し方に挑戦して苦しんでいるように見えた。
叙情的な映像が美しいのは間違いない。撮影は「ツリー・オブ・ライフ」のエマニュエル・ルベッキ。言ってみれば難解な映画だが、今やマリック監督は、映像=心象を求め続ける。人に分かってもらう映画を作る気はないのに違いないのだから。
2013年劇場鑑賞作品・・・256 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


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