1989年に映画化されたスティーブン・キングの同名小説を、新たな設定で再映画化したホラー。主人公のルイス役を「猿の惑星:新世紀(ライジペット・セメタリーング)」のジェイソン・クラーク、妻のレイチェル役を「エイリアン コヴェナント」のエイミー・サイメッツ、一家の隣人役を「インターステラー」のジョン・リスゴー、子役のジェテ・ローレンスが娘エリー役をそれぞれ演じる。監督は「セーラ 少女のめざめ」を手がけたケビン・コルシュ&デニス・ウィドマイヤー。
あらすじ:家族ともに田舎に越した医師ルイスの新居の裏には動物の墓地「ペット・セメタリー」があった。ある日、飼い猫が事故で死んでしまったため、ルイスは墓地ではなく、さらに奥深い森に猫を埋葬する。翌日、死んだはずの飼い猫が凶暴に豹変し、ルイス一家の前に姿を現わす。その地は、先住民が語り継ぐ秘密の森だった。誕生日を迎えた娘のエリーが交通事故で亡くなってしまったことから、ルイスはある行動に出るが……。
<感想>この作品は、あまりにも恐ろしく、あまりにも切ないホラーである。キング自ら脚本を書いた「ペット・セメタリー」(1989)は見ていませんが、新たな設定で再映画化している。キングが原体験にインスパイアされた悲しき問題作のホラーが、新たな設定で蘇っている。映画の中では、キングの私的要素が特に強く、違和感を覚える展開の連続だった。主人公一家が住む家は、小さな子供がいるのに、大型トラックがバンバン通る道路の前の家に引っ越すなど。全編にわたって、強引なフリにみえるが、本作では「生と死の狭間の存在」を深化させるために、後半の展開を変えたようだ。
ルイス家が住む新居の裏の森にある、謎めいた動物の墓地”ペット・セメタリー”。さらに奥深くの土地には、「死者が蘇る」と語り継がれている秘密の場所だった。事故で死んだ飼い猫を森の奥に埋めると、再び姿をあらわすが、それは依然のままではなく、毛並みのボロボロで、狂暴で死臭がする。
地を這う霧、十字架の林、動物の仮面の子供たち、夜の窓、恐怖音の演出、そういったものが、こちらの神経を逆なでするのだ。ホラー映画というよりも、もっと昔からある古典的な恐怖映画のような、子供のころに観て、脳裏に住み着いてしまうような怖さがある。
目の前の道路で、息子がトラックに轢かれそうになり、それを助けようと姉のエリーがトラックの前に出る。不慮の交通事故が起き、突然娘のエリーを失ってしまった夫婦。その悲しみに耐えられずに父親はある決断を下すのですね。元気な娘にもう一度会いたいと、強く願う父親のルイスは、死者が蘇る禁じられている土地へと足を運ぶ。
森は、先住民の間に伝わる悪霊“ウェンディゴ”が棲みつく禁断の土地。隣に住む老人のジャドは、父親のルイスを神妙に諭す。「死なせてやれ。時には死のほうがいい」。しかし……禁忌の行動の代償は、想像を絶する惨劇だった。禁慧を犯してしまった家族に、想像を絶する恐怖が降りかかるのです。蘇った娘エリーは、人間ではなく、まるでゾンビのようでもあり、死臭をまき散らし、狂暴となり家族に襲い掛かかってくる。
スティーブン・キングが原作で描こうとしたのは、生理的な恐怖であり、大型トラックの迫力満点ではなく、愛する人を失った悲しみからタブーを犯してしまう人間の究極の恐怖だろう。残念ながらそれは小説以外のメディアでは表現しにくいものなのかもしれませんね。だから、父親の葛藤の欠落、呪われた力で帰ってくる子供のラストなど、原作とは違い、脚色の愛の限界を感じてしまった。
最近のゾンビ映画では、拳銃、こん棒、塔といった男性のメタファーが支配するが、この映画では森の中、沼、家といった女性の性的イメージ群に浸されているようだ。父と娘の絆をより深く描くことで、恐怖を一層増すことに成功しているようですね。
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