「幸せのちから」「パパが遺した物語」のガブリエレ・ムッチーノ監督がイタリアのイスキア島を舞台に、金婚式のお祝いのために集まった親戚一同が繰り広げる大騒動の行方をステファノ・アコルシ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ステファニア・サンドレッリをはじめとするイタリアを代表する俳優陣の豪華共演で描いた群像コメディ・ドラマ。
あらすじ:イタリアの美しい島、イスキア島に暮らすピエトロとアルバは結婚50年目を迎えたベテラン夫婦。その金婚式を祝うため、20人近い親族が一堂に会した。宴は和やかに進み、いよいよお開きになろうとした頃、天候の急変で帰りのフェリーが欠航となってしまう。思いがけない足止めで、そのまま夫妻の屋敷に全員が泊まるハメに。すると、それまでは抑えていた本音が少しずつ露わとなり、次々と家族の秘密が暴かれていき、いつしかあちらこちらで感情的な衝突が巻き起こっていくのだったが…。
<感想>乾杯のグラスに注がれたのは、美しき家族19人の甘い嘘と苦い真実。大人数のドタバタ家族劇ですね。両親の金婚式のため、実家に集まったのがその一族。リッチなステキ家族は、まるで絵に描いたように幸せな食卓を囲み、楽しむのですが帰ろうとすると、その夜のフェリーが欠航し、島で一晩を過ごすことになるのですね。
途端ににさまざまな事情、子供たちの仲のよさとか、夫婦喧嘩や姪と叔父の恋愛などと、本音が炸裂していくという展開になっていく。
私は、子供のころに、お正月に親戚一同が顔を揃えるという新年会が好きだった。大人になると、世代の異なる人々が集まり、酒で酔いがまわると隠されていた欲望や不満があらわになり、大人たちが醜聞を繰り広げはじまる。
本作では、イタリアの離れ島に祖父母の金婚式のために、大家族が集まって来る。認知症の夫を持つ娘、腹違いの子供を持つ娘、倦怠期の夫婦、そして不倫、初恋、仕事の妬みなど。
あるシチュエイションで集まった家族の暴露劇は、もやは一つのジャンルだと思う。悲劇でも喜劇でも、あるいはその両方でもいい。そこで差別化を決定づけるのは、イタリアというお国柄にほかならない。
ただでさえ、言葉数が多くダイナミックで、攻撃的にも聞こえるイタリア語のセリフの応酬は、それだけでパワフルだ。家族という奇妙な関係が孕む修羅場の普遍性と、その発露の仕方に表れる決定的な違いが面白いのだ。
イスキア島の美しくもワイルドなロケーションと同様、その場にいるよりは観る方が楽しい。娘を連れての離婚をした女が、子供のころから好きだった従兄弟に、恋をしていたことを暴露する。
そして、二人は抱き合いセックスをしてしまう。その後に起こる出来事などは、考えていない。その連れっ子と、おばさんが連れてきた男の子(いとこ同士)が、恋愛をしてセックスをしてしまう。
それに、妊娠をした嫁を連れてきた弟は、兄貴の店で働きたいと願い、借金の金の工面まで両親に相談するのだ。お目出度い集まりなのに、兄弟、姉妹が集まると、自分勝手に自己主張をして、兄弟の暮らしを妬み羨むのだ。
一見して、問題がなさそうな家族も、一皮めくればこんな当たり前の、それも浮気や介護や借金などと、一般人には身近なことばかりを、会話の応酬で展開するこのドラマは、島全体を舞台装置に使った一幕ものの舞台劇のようだった。
不満や怒りを爆発させる感情のぶつけ合いは、まるで爆竹の連続破裂音のように聞こえる。G・ムッチーノは登場人物に主役と脇役の序列をつけずに、全員をフラットに描き、かつ相関関係をはっきりと解らせている。その技量が、素晴らしい。加えて、味わい深い俳優の演技が話しを面白くしていた。
家族や親せき内でおこるあらゆる問題や、確執が噴き出して来る。監督はそれを滑らかに移動撮影して、群像劇として複雑で、解きほぐせなくなった人生や関係性を見せてくれるのだ。
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