1970年代にアルゼンチンで実際に起きた連続殺人事件をモチーフに描くクライム青春ムービー。美しき17歳の少年が、ためらいもせずに次々と重大な犯罪に手を染めていく衝撃の犯罪遍歴を描く。主演は本作がスクリーン・デビューのロレンソ・フェロ。共演にチノ・ダリン、ダニエル・ファネゴ、セシリア・ロス。監督はアルゼンチンの俊英、ルイス・オルテガ。
あらすじ:1971年、ブエノスアイレス。何不自由ない生活を送る17歳の美少年カルリートスだったが、遊びを楽しむように犯罪に手を染め、ほとんど罪の意識を感じることもなかった。やがて彼は、転校先で野性的な魅力に溢れたラモンと出会い意気投合し、2人でコンビを組んでさらなる罪を重ねていくのだったが…。
<感想>アルゼンチン犯罪史上で最も悪名高い“死の天使”とは?・・・美青年カルリートスのモデルとなったのは、20歳で逮捕されまでのわずか数年で、12人以上を殺害したカルロス・エドゥアルド・ロブレド・ブッチである。
「青年版マリリン・モンロー」とも評価されたほどの美形で、“醜い容姿が犯罪の誘因だと信じられていた70年代初頭のアルゼンチン社会に衝撃を与えた。なお、終身刑を言い渡された彼は、今も服役中である。
ブロンドの巻き毛に吸い込まれそうな大きな瞳、艶やかに濡れた柔らかな唇、滑らかな白い肌_神様のギフトのような美貌に恵まれた少年は、悪魔も逃げ出す我儘な魂を湛えたナチュラル・ボーン・キラーだった。
71年、ブエノスアイレス。窃盗が転職だと気付いた17歳のカルリートスは、転校先で出会った青年ラモスに強く惹かれる。ふたりはチームを組み、新しい遊びに熱狂するかのごとく犯罪に手を染めてゆく。
物語の根底から誰しもが彷彿とするのが、ジャン・ジュネの犯罪や性倒錯という背徳哲学。そしてカルリートスの美しい横顔からは、ジャン・コクトーの素描であろう。本質は意外と渋い犯罪映画。プロデュ-サーのペドロ・アルモドバルの、粘り強さと道徳や気風が崩れる美しさが、監督ルイス・オルテガの持ち味らしいフィルム・ノワール風味と、良い配分で合わさっているのが良かった。それに、同性愛の傾向を示しながら、そちらに傾斜しすぎないし、独特の意固地さのようなものも、映画を乾いた空気にしている。
完全に外部で盗み続ける彼の過程は、こちら側の世界の反転した自画像なのだろう。それは、人間社会に刺さる永遠の棘とも言える。
カルリートスにとって盗みに入った家でも、牢獄であろうと、違いはさほどない。時間に関係する、生きること(盗むこと)が重要だったのだろう。美貌の冷血な主人公が、犯罪とダンスの瞬間だけ能動的になる危うさと官能性。
主人公を演じるロレンソ・フェロの容貌は、1971年という時代設定もあってか、日本の少女漫画を彷彿とさせるところもある。
そして、BGMに流れるアルゼンチンの70年代のサイケデリック・ロックにも激しく萌え、サントラが欲しくなる。
“死の天使”を体現するのは、本作で本格映画デビューを飾り、ハバナ映画祭主演男優賞に輝いた新星ロレンソ・フェロである。ベビーフェイスながらラテン男子の濃厚なフェロモンが全開で、本国では爆発的人気を獲得。「南米のディカプリオ」か「ポスト“ティモシー・シャラメ」の呼び声も高い。Kiddo Totoの名前で、ラッパーとしても作品を発表している彼の、今後の活躍に期待しよう。
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