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俺はまだ本気出してないだけ ★★★

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小学館「月刊IKKI」で連載されていた青野春秋の人気漫画を実写化したコメディー・ドラマ。何となく会社を辞めた42歳のバツイチ中年男が、漫画家になると宣言したことから巻き起こる騒動を追い掛ける。『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの堤真一が、ゲームに明け暮れ、娘に借金し、グズった果てに家出するという、父親にも大人にも成り切れていないダメな主人公を怪演。メガホンを取るのは、『コドモ警察』シリーズなどの福田雄一。共演には、『さよならドビュッシー』の橋本愛をはじめ、生瀬勝久、山田孝之らが名を連ねる。

<感想>予告で観て面白そうなので、それに主人公のダメ人間をあの真面目に見える堤真一が演じるのだから。この主人公は、バブリーな80年代に多感な時期を過ごし、遊ぶことがどこか人生のステータスになっている今の40代〜50代は、ある意味もっとも世間を舐めている脆弱な世代といってもいいのかもしれない。60年代の高度経済成長期の男たちと比べれば、単身赴任とか会社のために残業も多くひたすら家族のために働いた。だから時代のひとつの追い風になっていたような気もするが、シズオの世代にはそれは無理というもの。
一方で周りを見渡せば、取り敢えず生きていくために必要なものは何でも手に入る。お金がなくてもインスタントやファーストフードで飯は食えるし、100円ショップで生活必需品も大方まかなえるのだ。都会に住んでいる限り中年でもバイトはあるし、本当にお金がない時は、それこそ飯も食わずにTVゲームでもしていれば、そのうち疲れ果てて寝てしまうだろうから。それはそれで経済的なのだ。
もちろんそこには将来性などは微塵もないわけで、だからこそシズオも「本当の自分探し」などといい加減なこと言って誤魔化して、ついには「俺はまだ本気出してないだけ」と強がっているものの、だからといって何か生産性のあることを始めるわけでもない。何よりも40過ぎて漫画家になろうという発想そのものが、実にオタッキーで世の中を舐めきっているのだ。

父親の石橋蓮司ならずとも「甘えるんじゃない!」などと、もはや映画評とは呼べない喝が飛ぶのは仕方がない。しかし、この大黒シズオって男は幸せな男だ。バツイチでも娘は一緒に住んでくれて、父親も一緒に住んでいる。この年で開き直って好きなことをしようとするには、かなりの決断がいる。それに父親にも娘にも見放されるのがオチというもの。
若いころはそこそこ不良で、それでも何とか大学まで進学して、ちょっとばかり音楽などもかじったりして、まだバブルが弾ける直前の就職戦線をくぐり抜け、とりあえずサラリーマンとしてやってきたものの、何故か突然会社を辞めて、朝からゲーム三昧の42歳、バツイチ子持ちの中年、大黒シズオ。

この設定だけで、同世代は何となく溜息をついてしまうところがあるのではないかと思う。しかも、この大黒シズオは、一念発起してめざすのが漫画家ときた日には、・・・女性からして見ると、もうこういう男はダメ人間で、奥さんに出て行かれても仕方ありませんね。「そういうことは独身時代にしろ」って言いたい。
それにしても、年頃の娘・鈴子の橋本愛ちゃん可愛いですよね。普通だったらこんなお父さん見捨てるか、母親の所へ行くかするのだろうが、優しいというか父親に対して好きなことしていいよ、なんて応援している。一家を支える大黒柱がこうでは、仕事だってファストフード店でバイトでは、安い賃金で生活も苦しいだろう。娘からお金を平気で2万円借りて、だらしない父親なのだ。だからなのか、それとも娘が外国に留学したいと資金稼ぎなのか、ヘルス嬢でバイトしているとは、これには参ってしまった。父親として落第ですから。それに、何度も漫画がボツになっているのに、諦めない精神力というか石頭なのか。自転車で階段から落ちて頭に大怪我したのに、どうってことないなんて信じられませんよね。

そして、また笑ってしまうのがシズオの周りにいる人間たち、例えば友人の真面目で気のいいサラリーマンの生瀬勝久、喧嘩は強いが無気力な人生からどう脱却すればいいのか、密かに悩んでいる茶髪の20代の青年山田孝之。無口なのか台詞がない役どころだ。そしてシズオの漫画の投稿を毎回チェックする、中学館出版社の編集者濱田岳などなど。彼らはいつしかシズオの何の根拠もない表向きの強がりに翻弄され、感化され、ついには己を見誤っていく。
いや、観る人によればあの人たちは前向きに自分の人生を歩み出したのだと思っている人たちもいるだろうが、世の中そんなに甘くはないのだ。現に生瀬と山田が立ち上げるパン屋さん。その店を出す物件がクワセモノだと、あの不動産屋ウサンクサイ予感したのだが、その先の不安を暗示しているようにも取れるのだ。

他人のことなんてどうでもいいと、脳天気な困った中年男シズオを堤真一が、意外なまでにハマリ具合で好演している。原作漫画は読んでないが、原作の主人公は、それこそ絵に描いたようなチビデブの中年男だという。それをイケメンの堤真一が演じると、「イケメンだけどダメダメな奴」って不思議なリアリティが面白おかしく醸し出されていくのだから。監督があの「HK/変態仮面」の福田雄一なのだから、こういう作品も難なく上手く演出できたのだろう。
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