「きっと、うまくいく」(09)「PK ピーケイ」(14)でインドの歴代興行収入を塗り替えてきた国宝級スターのアーミル・カーンが、本作の監督ニテーシュ・ティワーリーから、父と娘の実話を聴いて主演と制作を買って出た。
あらすじ:2人の娘を世界的レスリング選手に育て上げた実在の熱血パパを演じるスポ根家族ドラマ。誰よりもレスリングを愛するマハヴィルだったが、生活のために金メダルの夢を諦め、引退を決意する。そしてその夢は、まだ見ぬ息子へと託されるのだった。ところが授かった子どもは4人とも女の子だった。こうして再び夢を諦めたマハヴィルだったが、十数年後、長女ギータと次女バビータが男の子とケンカして圧倒したことを知り、自分の格闘DNAが娘たちに受け継がれていると確信する。そしてギータとバビータを金メダリストにするべく、嫌がる2人を相手にスパルタ特訓を開始するのだったが…。
<感想>インドの大ヒット映画が、中国や香港で外国語映画興行史上1位を記録したというのだ。ストーリーは「巨人の星」ばりの父親と子供のスポ魂もの。違っているのは、父と娘の闘いであること。そして実話だと言う点である。レスリングの国内チャンピオンになった男が、引退後に息子に夢を託そうとするも、生まれて来るのは娘ばかり。やむなく夢をあきらめたが、喧嘩で男の子をボコボコにしてきた長女と次女の格闘センスに希望を見出すのだ。そんな男尊女卑の世界が背景にあるからこそ、女子のスポ根ストーリーがさらに大きな意味を持つのであります。
この映画は、ニテーシュ監督が映画会社のディズニーUTVの友人から、レスリングの選手だったマハヴィルの物語を聞いたところから始まったそうです。監督自身が彼の長女ギータ、次女のバビータにも会って脚本を書き上げたと言うのだ。
インドの女性は家事と掃除をまず教えられ、14歳で嫁に出される文化の中、父親はそれにとらわれず、自分の娘にレスリングで金メダルをとらせたいという夢を叶えようとする。たしかに村の人々の目を気にせずに、娘たちにトレーニングさせるのは近所の目もあるし、自分の夢を叶えるためのエゴイストですよね。女の子は産まれてから髪の毛を切らないし、その長い髪の毛に泥がつき不衛生だ。父親に男の子みたいに短く髪の毛を切られるし、スカートじゃなくTシャツに半ズボン姿。それと、マットがないから、土の上でのトレーニングにも、怪我をするだろうに。
自分の夢ばかり叶えたいためというと、日本でもあの有名なレスリングのコーチをしていた父親がいるけどね。何処の国にでもそういう父親っているのよね。若干の困惑はあるのが正直な気持ちです。でも娘とぶつかりあいながらも、次第に娘たちもレスリングと向き合いはじめるところが良かった。
村の大会で、男の子の中に初めて少女が出場するシーンでは、子供時代のギータの迫力に驚嘆しました。成長した娘2人のシーンも、完全にレスラーを起用したのではないかと思わされました。
その対外試合のうち、金銭または物品の報償が出るものを「ダンガル」と呼ぶのだが、肉体接触をしないと戦えないレスリングは、女子禁制。それをものともせず、主人公の長女で中学生のギータが、着衣のまま男性に挑んで勝ち上がっていくのだから、フェミニズムうんぬん以前に痛快であった。
こんな風に、男性に対して助成が活躍する作品や、男女差別批判を上手に潜ませた作品が、最近のインド映画では確実に増えている。
父親のアミールも、レスリング選手だった若い頃から、50代の太った父親になるまで肉体改造をして演じきったというから凄い。それに、レスリングの競技も極めており、撮影のためのまねごとではない。それは頭脳が求められるスポーツであり、戦略のスポーツだから。まるでドキュメンタリーのようでした。
また、この映画は地方の小さな村から、世界へと女の子が飛び出してゆく話でもあり、インドの地方性を大事にしていると思いましたね。
しかし、父親の鍛え方が押しつけがましく、後に娘たちも自覚的に取り組むようになり、当初は娘たちの意思を無視しているように見えた。しかし、娘たちが村を出て、専門の寄宿舎へ入り選手権に向かって他のコーチの指示を受ける。今までの父親の訓練とはまるで違うのだ。
決勝戦の時に、父親が観戦に来ていた、コーチと違う指示をするので、コーチは父親を監禁してしまう。結局はギータの優勝も見せてないし、父親がやっと監禁場所から脱出して娘のところへ来るところ。娘が金メダルを父親に見せて首に掛けてくれるところが感動的でした。
とはいえ、見始めると力強いストーリー展開にぐいぐい引き込まれ、些細な欠点など気にならなくなる。ところどころにユーモアが盛り込まれているのも巧みで、スポーツの試合のようにリズムに乗せられて、感動のラストまで一気に運ばれてしまう。
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