「パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロが監督・脚本・製作を手がけ、2017年・第74回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したファンタジーラブストーリー。「ブルージャスミン」のサリー・ホーキンスがイライザ役で主演を務め、イライザを支える友人役に「ドリーム」のオクタビア・スペンサーと「扉をたたく人」のリチャード・ジェンキンス、イライザと“彼”を追い詰める軍人ストリックランド役に「マン・オブ・スティール」のマイケル・シャノン。
あらすじ:1962年、冷戦下のアメリカ。政府の極秘研究所に務めるイライザ(サリー・ホーキンス)は、アマゾンの奥地から運ばれた“クリーチャー”に惹かれ、恋に落ちる。しかし、冷酷な軍人ストリックランド(マイケル・シャノン)は容赦なく“彼”を虐待し、果ては生体解剖を提案する。一方で、背後では熾烈な宇宙開発競争でしのぎをけずるソ連が暗躍し、イライザは無謀にも“彼”を救出する計画を思いつく――。
<感想>舞台は1960年代、冷戦時代のアメリカ──画面の隅々まで監督のこだわりが詰まっている。清掃員として政府の極秘研究所に勤めるイライザは、水中に生息する謎の生き物と出会う。「彼」を愛するイライザ役のサリー・ホーキンスは、アカデミー賞主演女優賞ノミネート。イライザの友人を演じたリチャード・ジェンキンス(左)も、助演男優賞にノミネートされている。
この映画の冒頭で、サリー・ホーキンス演じるイライザが、お風呂の中で自慰行為にふけるシーンから始まるショッキングなことといったら。いきなり体を張った演技で驚かされるも、イライザは言葉を発することが出来ずに手話で人とコミニケーションを取っている。
彼女の親友である絵描きのリチャード・ジャンキンス扮するシャイルズや、オクタビア・スペンサー演じる彼女の同僚のゼルダとは手話で会話が出来るが、肝心の恋の相手となるアマゾンから来た“彼”とは一切言葉のコミニケーションがないのだ。
仕事中、奇妙な人型の生物に遭遇したイライザは、手話やジュスチュアで意思の疎通を図るのだが、まるでサイレント映画のようでもある。口のきけないイライザは音楽が好きで、2人のデートはレコードを使っての音楽鑑賞である。イライザの感情が高まった時、歌を歌うイライザなのだが、ミュージカル映画でもない。
食べ物は魚でも与えているのかと思えば、映してないので、イライザの持参した茹で卵を美味しそうに食べ、彼も彼女の気持ちを理解するようになり、二人の間には不思議な感情が芽生え始まるのだ。水槽の中へ入りセックスをしているようなシーンもある。半魚人を演じているのがダグ・ジョーンズで、着ぐるみを着ているのか、ずっと見ていると可愛く見えて来る。
良かったのは、あの彼らの心の高ぶりや、恋の芽生え、慈しみ合う感情が観ている者の心へにも届くからなのだ。それはまるでサイレント時代の純愛映画を観ているような美しさであり、イライザを熱演したサリー・ホーキンスと、彼女を支える人々を演じた脇役の名優たちが、上手いからだと思う。
ホフステトラー博士を演じたマイケル・スタールバーグは、ソ連のスパイのようでもある。高圧的な軍人ストリックランドに扮したマイケル・シャノンは、生物管理を担当し、毎日のように半魚人に対して電流の入る鉄棒で暴力を振るっていた。自分の手の指が喰いちぎられて床に落ちていたとは。イライザが拾って届けるも、そのまま指を付けたみたいで、最後には指が腐って真っ黒になっている。さらには、彼は軍事利用のために半魚人を生体解剖し、その機能を調べようと画策するわけ。
それでは彼は殺されてしまうと思ったイライザは、彼を研究室から自分のアパートへ運ぼうと計画。手伝ってくれるのが、彼女の部屋の隣人シャイルズに車の運転をたのみ、同僚のオクタビアにもそのことを知らせる。洗濯物を入れるかごに乗せて運び、車に押し込み、イライザの部屋のバスタブへと上手くいったかのように見えたのだが。
それでも、イライザの暮らしぶりに親近感を覚え、彼女と半魚人との心の距離が近づいていく過程にときめき、彼を施設から運び出す作戦には心躍らせましたね。しかし、彼をアパートのバスタブに入れて匿うあたりで、これってトム・ハンクスの「スプラッシュ」に似ているのでは。まぁ、あちらは青年と人魚の恋であり、男女の性を入れ替えたラブロマンスもの。
ですが、アパートのバスタブでは半魚人もだんだんと弱ってしまう。それにお隣のジャンキンスが飼っている子猫も食べてしまう。怖いですよ、肉食系なのね。それを見てイライザがお風呂場を締め切り、水を流してバスルーム全体が水浸しに。イライザは全裸になり、半魚人とセックスをするのだ。映画館の上にあるイライザの部屋、映画館もシャイルズの部屋も雨漏りがして大変なことになる。
イライザが、雨の降る夜に海へと彼を逃がしてやることを計画する。終盤では、埠頭で軍人ストリックランドに見つかり銃撃戦になってしまう。もちろん半魚人は撃たれてしまうのだが、イライザもシャイルズも撃たれてしまう。シャイルズが残った力でストリックランドをやっつけてその後に、半魚人はイライザを抱いて海の中へと帰っていく。海の中では、イライザが半魚人の手によって、蘇りエラ呼吸も出来て、二人は抱き合って海の底へと。
この構成あたりが、何だかなぁという気持ちもあり、現実離れしているようで、ファンタジーに仕上がている分、恋の描写もリアルで大人っぽくてユーモアもあり、独特な世界観で良かったのではないかと思います。
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