ダイアン・アッカーマンのベストセラー・ノンフィクション『ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語』を「ゼロ・ダーク・サーティ」「クリムゾン・ピーク」のジェシカ・チャステイン主演で映画化した感動ドラマ。ナチス占領下のポーランドで300人ものユダヤ人の命を救った動物園の園長夫婦の信念と勇気を描く。共演はヨハン・ヘルデンベルグ、ダニエル・ブリュール。監督は「クジラの島の少女」「スタンドアップ」のニキ・カーロ。
あらすじ:1939年、ポーランドのワルシャワ。夫のヤンとともにヨーロッパ最大規模のワルシャワ動物園を運営するアントニーナ。すべての動物たちに深い愛情を注ぎ、献身的に世話をしていた。そんな中、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発、動物園の存続が危うくなる。そこへヒトラー直属の動物学者ヘックが現われ、“希少動物を救いたい”と申し出る。一方でユダヤ人は次々とゲットー(ユダヤ人強制居住区)に連行され、見かねたヤンは、動物園に彼らを匿おうと考える。自分たちの命さえも危険に晒す夫の提案をためらうことなく受け入れ、全力でサポートしていくアントニーナだったが…。
<感想>ユダヤ人300名を動物園に匿い、その命を救った勇気ある女性の感動の実話。ナチスを題材にした様々な作品が公開される中、また新たな感動作出来上がった。例えば「シンドラーのリスト」や「杉原千畝」のような勇気溢れる行動で、ホロコーストからユダヤ人を救った人物の物語は、これまでもたくさん映画化されてきたが、本作のように、女性の視点から描いた作品はなかったのではないか。
本作では、第二次大戦中のワルシャワ動物園でナチスに追われたユダヤ人を30人も救った、驚くべき事実を記したノンフィクションを、ジェシカ・チャステイン演じる主人公アントニーナの感動秘話が描かれている。
時には、狡猾なナチスの将校に相手に駆け引きを繰り広げ、聖なる場所を守り抜く凛々しいアントニーナ。知恵と勇気と愛を武器に闘った一人の女性の生き方が胸を打つエモーショナルな一作である。
監督を務めたのは、ニュージランド出身のニキ・カーロ。「クジラの島の少女」が数々の映画祭で高い評価を受け、ヒロインのパイケア・アピラナが演じたケイシャ・キャッスル=ヒューズはアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。カーロ監督は「ワルシャワのゲットーや動物園についてのリサーチを重ねて、リアルな映画を目指した」と語っています。
これまでも男性社会の中で負けずに戦う女性像を演じてきたジェシカ・チャステインは、本作で初めてフェミニンな演技にも挑戦している。「女神の見えざる手」でも素晴らしかった彼女の演技が、まったく違う役柄を演じた今回も素晴らしかった。圧倒的な支配に怯えながらも、善き人間であり続けようとする女性を、初めて見る表情とセリフ回しの彼女が見事に体現しているのだ。
アントニーナは、戦う力強い人物というありがちなヒーロー像としては描かれてはいない。彼女は動物を愛し、子供たちを愛し、戦時中でも可能な限り女性らしい服を着ようする。冒頭でのパーティで、母親象の前で、小象の鼻がねじれて中に詰まっている物を取り出し、息を吹き返すシーンに感動した。
彼女の唯一の武器は愛なのだ。戦わないことで戦ってみせる。嫌悪や対立に満ちた世界に愛を返そうとする。愛で本当に命を救ったという事実が、嫌悪に満ちているかのように思える。常軌を逸した事態が文字どうり女性の視点で描かれており、いくらでも扇動的にできる題材を丁寧に、かつ上品に扱っているのがとても良かった。
夫の変化に説得力があるのもさることながら、教養と礼節ある紳士だったドイツ人動物学者の、演じるダニエル・ブリュールが権力を手にした途端に変貌する恐ろしさ。珍奇な動物をベルリンに運ぼうとし、すでに絶滅した動物の復活を図り、その牛の交配をするためにアントニーナの手を借りる。そして、夫婦の中へと割り込んで来る。
自分たちの危険を顧みずにユダヤ人を救う主人公夫妻の行動には、ストレートに感動します。ただし、ゲットーからユダヤ人を連れ出すシーンの数々は、どれも緊迫感が足らず、夫婦愛と親子愛に迫った部分や、ワルシャワ蜂起の描写もこれといって密度が高いわけでもなく、なんだか散漫な仕上がりになっている。そんな中でも驚いたのが、ゲットーの門前で記念撮影するカップルの姿。こうした下劣な連中ガ、ナチスのような存在をのさばらせた訳でもあり、そのあたりを無視しないで描いたのも良かった。
緊迫した時代を舞台にしながらも、戦闘シーンは最小限にしか描かず、愛や希望や思いやりで物語を貫こうとしているところがまず新鮮であります。今のこの世界に投げかけるメッセージは、あまりにも強烈であります。
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