落ち目の作家が引っ越してきたとある殺人事件の現場となった一軒家を舞台に、のろいにまつわる恐怖体験を描いたホラー。『ビフォア・サンセット』『クロッシング』などのイーサン・ホーク演じる作家が、8ミリフィルムに殺人現場と共に記録されていた仮面の男と血の記号の謎にとらわれていくさまを映し出す。『エミリー・ローズ』『地球が静止する日』のスコット・デリクソンがメガホンを取る。凄惨(せいさん)で不気味な殺人事件の映像や、ストーリーを追うごとに深まる謎に背筋が凍る。
あらすじ:作家のエリソン(イーサン・ホーク)は、妻と子どもの一家4人で郊外の家に転居してくる。そこは一家が首をつるという残酷な事件の現場となった家で、エリソンは事件に関する新作を書くために越してきたのだった。その夜、エリソンは屋根裏部屋で映写機と8ミリフィルムを見つける。フィルムには楽しそうな家族が、一転して首をつられていく様子が記録されていた。
<感想>もしもこの映画についてどんなホラーなのか、と聞かれたら、「シャイニング」と「リング」と「呪怨」を混ぜこぜしたような感じかなぁ、と答えるだろう。こんなふうに過去の作品を引用しておおまかなイメージを伝えられるのが、ホラー映画というジャンルの便利なところだと思う。
しかしながら、用意周到かつ濃密に撮られた本作品の魅力は、それだけではとうてい表現しきれず、さらなる見どころや優れたディテールを吹聴したくなるのが本音だろう。
まず興味深いのは、実録犯罪ミステリーのテイストが取り入れられていることである。猟奇事件専門のクライム・ライターである主人公エリソンは、捜査本部に仕立てた書斎の壁一面に、写真や地図などの資料を貼り付け、ある未解決事件の真相究明に乗り出す。
しかも、エリソンの新たな引っ越し先は、“一家4人が首吊り殺人事件“の犯行現場となった一軒家なのだ。また題名の「フッテージ」とは、この家の屋根裏から発見されるコダックのスーパー8フィルムを指している。
迷宮入りした一家惨殺事件、失踪した少年少女たち、殺人現場を記録した年代の異なる、5つの殺人事件が記録されたそれらは、不幸を招くスナッフ・フィルムである。
悪魔を崇拝する異教、・・・と米国に流布する都市伝説が巧みに散りばめられ、不気味なリアリティを醸し出している。
これはエリソンの息子が癲癇の発作を起こして箱の中から出てきたところである。これにはびっくりさせられました。息子や娘にはこの屋敷の庭の木で首吊りされていた家族の亡霊が見えるのだ。
それからこの映画の恐怖をそそるのが、家の中の暗さですね。それと主人公がフィルムを映写機にセットする際に生じる機械音や、摩擦音、映写中のリールの回転音、デジタル時代の現代にあえて手触り感のあるアナログ素材ゆえの恐怖に、思わず目を背けたくなる。
それに、音響効果を強調し、前世紀の遺物たる8ミリをモチーフにしたこの映画は、世界をパニックに陥れたJホラーの最高傑作「リング」をヒントにしたものだが、米国各地で起きた未解決事件と結びつき、神経を逆なでする怖さがある。夜、一人で映画が観られなくなりそうですね。
かくして「リング」さながらの呪いのフッテージに取り憑つかれた主人公は、「シャイニング」のジャック・ニコルソンばりに狂気をみなぎらせていくわけだが、・・・身の毛がよだつホラーサスペンスに仕上がっている。
本作をクライムスリラーならぬ純然たるホラー映画にしている重要な要素は、画面の異様な暗さである。とりわけ初めの主人公一家が夕食を囲むシーンから始まり、昼間でも太陽の日差しが差し込まないのか暗い。それは綿密に練られた光と闇とのコントラストにゾクリとさせられるのだが、とにかく暗闇が多くてホラーの様式へとこだわりぬいているのだ。
その一方で、主人公がパソコンに取り込んだフッテージを解析するうちに、殺人の記録フィルムが、“心霊動画”へと変換されていくところなど、当然ながら事件の全貌を知り尽くしている主人公の身も安泰ではない。
ラスト近くで、暗がりの中「呪怨」の男の子そっくりの子が出て来るのにニヤリとした。日本のオカルトホラーも捨てたもんじゃないと思った。とにかく、中盤からこの屋敷で起こる怪奇な出来事が、人間の仕業ではないことを主人公がまだ信じていないことだ。だから、この家から脱出して元の家へ引っ越ししても、悪霊は憑いてくる。それも娘に取り憑いているのだから。そんな理不尽なラストシーンは、もはや感動的でもあります。
2013年劇場鑑賞作品・・・100 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:作家のエリソン(イーサン・ホーク)は、妻と子どもの一家4人で郊外の家に転居してくる。そこは一家が首をつるという残酷な事件の現場となった家で、エリソンは事件に関する新作を書くために越してきたのだった。その夜、エリソンは屋根裏部屋で映写機と8ミリフィルムを見つける。フィルムには楽しそうな家族が、一転して首をつられていく様子が記録されていた。
<感想>もしもこの映画についてどんなホラーなのか、と聞かれたら、「シャイニング」と「リング」と「呪怨」を混ぜこぜしたような感じかなぁ、と答えるだろう。こんなふうに過去の作品を引用しておおまかなイメージを伝えられるのが、ホラー映画というジャンルの便利なところだと思う。
しかしながら、用意周到かつ濃密に撮られた本作品の魅力は、それだけではとうてい表現しきれず、さらなる見どころや優れたディテールを吹聴したくなるのが本音だろう。
まず興味深いのは、実録犯罪ミステリーのテイストが取り入れられていることである。猟奇事件専門のクライム・ライターである主人公エリソンは、捜査本部に仕立てた書斎の壁一面に、写真や地図などの資料を貼り付け、ある未解決事件の真相究明に乗り出す。
しかも、エリソンの新たな引っ越し先は、“一家4人が首吊り殺人事件“の犯行現場となった一軒家なのだ。また題名の「フッテージ」とは、この家の屋根裏から発見されるコダックのスーパー8フィルムを指している。
迷宮入りした一家惨殺事件、失踪した少年少女たち、殺人現場を記録した年代の異なる、5つの殺人事件が記録されたそれらは、不幸を招くスナッフ・フィルムである。
悪魔を崇拝する異教、・・・と米国に流布する都市伝説が巧みに散りばめられ、不気味なリアリティを醸し出している。
これはエリソンの息子が癲癇の発作を起こして箱の中から出てきたところである。これにはびっくりさせられました。息子や娘にはこの屋敷の庭の木で首吊りされていた家族の亡霊が見えるのだ。
それからこの映画の恐怖をそそるのが、家の中の暗さですね。それと主人公がフィルムを映写機にセットする際に生じる機械音や、摩擦音、映写中のリールの回転音、デジタル時代の現代にあえて手触り感のあるアナログ素材ゆえの恐怖に、思わず目を背けたくなる。
それに、音響効果を強調し、前世紀の遺物たる8ミリをモチーフにしたこの映画は、世界をパニックに陥れたJホラーの最高傑作「リング」をヒントにしたものだが、米国各地で起きた未解決事件と結びつき、神経を逆なでする怖さがある。夜、一人で映画が観られなくなりそうですね。
かくして「リング」さながらの呪いのフッテージに取り憑つかれた主人公は、「シャイニング」のジャック・ニコルソンばりに狂気をみなぎらせていくわけだが、・・・身の毛がよだつホラーサスペンスに仕上がっている。
本作をクライムスリラーならぬ純然たるホラー映画にしている重要な要素は、画面の異様な暗さである。とりわけ初めの主人公一家が夕食を囲むシーンから始まり、昼間でも太陽の日差しが差し込まないのか暗い。それは綿密に練られた光と闇とのコントラストにゾクリとさせられるのだが、とにかく暗闇が多くてホラーの様式へとこだわりぬいているのだ。
その一方で、主人公がパソコンに取り込んだフッテージを解析するうちに、殺人の記録フィルムが、“心霊動画”へと変換されていくところなど、当然ながら事件の全貌を知り尽くしている主人公の身も安泰ではない。
ラスト近くで、暗がりの中「呪怨」の男の子そっくりの子が出て来るのにニヤリとした。日本のオカルトホラーも捨てたもんじゃないと思った。とにかく、中盤からこの屋敷で起こる怪奇な出来事が、人間の仕業ではないことを主人公がまだ信じていないことだ。だから、この家から脱出して元の家へ引っ越ししても、悪霊は憑いてくる。それも娘に取り憑いているのだから。そんな理不尽なラストシーンは、もはや感動的でもあります。
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