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3月のライオン【前編】★★★★

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羽海野チカの人気コミックを、2部作で実写化したドラマの前編。家族を亡くして孤独に生きてきた17歳のプロ棋士が、ある3姉妹と心を通わせながら厳しい将棋の世界を突き進む。メガホンを取るのは、『るろうに剣心』シリーズなどの大友啓史。『るろうに剣心』シリーズにも出演した神木隆之介、『映画 ビリギャル』などの有村架純、『ヒミズ』などの染谷将太、テレビドラマ「カインとアベル」などの倉科カナらが出演。緊張感に満ちた対局シーンに目を奪われる。
あらすじ:幼少期に交通事故で両親と妹を亡くした17歳のプロ棋士、桐山零(神木隆之介)。父の友人である棋士・幸田柾近(豊川悦司)に引き取られるが、そこから離れざるを得なくなってしまう。以来、東京の下町で一人暮らしをする彼だったが、川向こうに暮らす川本家の3姉妹のもとで一緒に食事をするように。彼女たちとの触れ合いを支えにする桐山だったが……。

<感想>原作コミックは未読ですし、TVアニメも見ていません。ですが、前の「聖の青春」を見てとても感慨深くこういう人生もあるのだと思いました。将棋の事もあまり知らないので、将棋の対局の場面になるとチンプンカンプンで、「聖の青春」では、場面ごとに観客にもわかるように丁寧に描かれていて面白かった。
ですが、こちらは、どちらかというと、主人公の零が小学校の3年生の時に、交通事故で家族を亡くし、突如現れた父親の親友である幸田に「君は将棋が好きか」と聞かれ、零は「はい」と答え、何処にも居場所のない彼は、そう答えるしか生きる術はなかった、つまりウソなんですね。やがて幸田家で暮らすことになった零は、養父の幸田に認められ、振り向いてもらうには将棋が強くなることしかなかった。そういう、人の顔色を窺いながら自分の本音も抑え込んで生きてきた少年零の成長を描いている。

幸田家では、姉の香子と弟の歩も将棋をしておりプロを目指していた。だから零が将棋が強くなるのを、妬み悔しがり虐めるという過酷な生活を強いられ、彼が将棋を好きと言えないのは、自分が将棋に打ち込めば打ち込むほど、幸田家の人を不幸にしてしまったからだと思ってついには家を出て行く。

桐山が叫ぶ「俺には将棋しかないんだ、後戻りはできないんだ」という苦しさに気づく瞬間。努力をしても報われる保証のない、シビアな勝負の世界を生きる人間の孤独。そんな孤独を抱えながら、安住の場所である“三日月堂”があるからこそ、孤独に耐え忍んで将棋にまい進する。それに、高校の担任の教師村田先生(高橋一生)もさりげなく零を応援する。

彼の収入は、自分でプロ相手に将棋の世界で勝ち進んで、賞金を稼いでその金で生活をしている。だから食事は殆どがカップラーメンという生活の中で、彼が棋士として養父の幸田と対戦をして勝った後で、友人に誘われ無理やり酒を飲まされて道端に倒れているところを、親切な娘の家族に救われる。その時に、零が酔っぱらいながら道端で言うセリフに「お父さん、ごめんなさい」がある。

零の存在によって家庭が崩壊していく幸田家と対照的なのが、孤独な零とひょうんなことから知り合い、彼を迎え入れて家族のように接する川本家は、勝負の世界に生きる零が、ホッと息をつける温かさに包まれている安らぎの場所。

川本家の長女であるあかりが、零が道端で泣いて「お父さん」という言葉に心が動き、実は川本家もお父さんのことで問題を抱えている家庭なんですね。それからは、その家族と仲良くなり、食事も栄養のあるものを食べるようになり、家庭の温かいさも知り益々将棋に熱が入るようになる。

目指すは頂点に上り詰めたいと、島田開の研究生となり、師匠として将棋を指導してもらうのだが、島田は持病の胃痛が欠点でもあり、対戦中にキリキリと胃が痛み出す苦痛の島田棋士を演じる、佐々木蔵之介が上手い。

上へあがるようにと友達の二海堂、染谷君が演じていた故・村山聖だと思うが、持病に苦しむ太ったむくんだ男を染谷くんが演じている。よくよく見ていても、彼と分からないほど顔が変わっていて、太ったわけではなく、上手く顔と体に肉付けしたらしい手法。松山ケンイチが体重を増量して頑張った村山聖とは大違い。

そして、零が反発するコワモテの先輩棋士・後藤には、伊藤英明が扮しており、幸田家の姉、香子が愛人となり悪女有村架純に驚く。

後藤は病気の妻のいる身であり、零に対しても無礼極まりない先輩棋士である。彼と勝負して是が非でも勝ちたいと思う零、それには上段に上がらなければ対局できないのだ。

例えば、すべての棋士が目標にする天才棋士・宗谷冬司にしても、原作では神様的な超越した存在に描かれていて、この役を加藤亮が扮してまさに羽生名人と言える静かな演技が上手い。

佐々木蔵之介扮する島田と伊藤英明扮する後藤との対局では、合間におやつタイムがあり、干し柿を食べる島田に対して後藤も甘いものを食べるシーンもある。この対局では、後藤の勝利でしたね。それに、島田と桐山零の対局戦もあり、完全に零くんの負けがありありであった。
ですが、宗谷は神様ではないということ、実は零くんと幸田家の子供たちは、昔、幸田と宗谷が対局して幸田が破れた瞬間を見ている。そこから幸田家の中で何かが狂っていったと思うわけで、零君が運命に導かれてやがて天才棋士・宗谷と向き合うことになるのは後編ですかね。

ですが、零は宗谷を倒したくて将棋をしていたわけではなく、自分が生きるために将棋をやっていた分けで、棋士として生きていく先に天才棋士・宗谷がいた。ラストの土砂降りの雨の中での横顔が、宗谷自身もその運命の中にいる人と捉えているように見えた。
それに、新人戦でのクライマックス、桐谷とスキンヘッド山崎順慶・五段との勝負はどちらに軍配が?・・・これは零君の勝で決まりでした。

マンガ的な過剰さを活かしつつも、盛り込み過ぎると思うほどドラマを作りながら、演出は逆に抑え気味にすることで、絶妙な調和を見せている。それに、奇をてらわない対局描写、あまり将棋の盤の上での駒の動き方を、多くは見せないところも、どっちが勝ってるのか、置いてけぼりにするのも良かった。これは、将棋が好きだとウソをついた少年が、最後には将棋が好きだと思えるようになる物語なのであります

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