ニューヨークで6年近くホームレス生活を送る、52歳のファッションモデル兼フォトグラファーの男性を取材したドキュメンタリー。スマートに高級スーツを着こなす男性が、雑居ビル街のとある建物の屋上で暮らす様子に3年にわたって密着する。監督は、自らもモデルであり企業などのプロモーション動画やスチール撮影を手掛けるトーマス・ヴィルテンゾーン。音楽を、クリント・イーストウッドの息子であるカイル・イーストウッドが担当。家を持たないという手段を選び、激しい競争社会をサバイブする男の生きざまが見どころ。
あらすじ:アメリカのニューヨーク。52歳のマーク・レイはファッションモデル兼フォトグラファーとして活動し、ブランドスーツとスマートな身のこなしが板についている。ところが、豪勢なパーティーに出席した後にマークが帰ったのは、雑居ビル街のアパートの屋上だった。家を持たず、家族や恋人も作らないマークの日常に、カメラは3年間密着する。
<感想>原題が「HOMME LESS」と言うのだが、ホームレスという意味とアパレルで使う「男」を意味するフランス語「オム」を架けていると言うのだ。モデルで写真家、52歳のイケメン親父、昼はNYを颯爽と闊歩するマーク・レイ。ニューヨークに盗り憑かれて抜け出せなくなった男の記録である。
雑居ビルの屋上の隅っこに、ビニールテントで囲って寝袋で寝ている。つまり野宿で、着替えはジムのロッカーを幾つも借りてしまう。もちろんカメラもPCも、フォトグラファーを自負しているのでカメラ持っているし、喫茶店でPCで画像処理とかしているみたいだ。
ファッション業界の片隅で仕事を探す主人公は惨めだが、己の滑稽さに自覚的でもある。ホームレスは自由な生き方、なんて発言は一欠けらもない。冬のニューヨークの寒さは厳しいもので、よく病気もせずに屋上で野宿生活をしている。夏は屋上から見える摩天楼に花火が上がって美しい眺めであるが、もし、この生活を警察に通報されたら、それで逮捕される。
お金は、写真を撮っては雑誌社へ売り込みに行き、映画のエキストラがたまにあり、クリスマスには赤いサンタの着ぐるみを着て、デパートでアルバイト。モデルの仕事なんてゼロで、金の入りが少なくて家賃のある部屋は借りられないのだ。食生活は充実しており、朝食は喫茶店でモーニングをとり、お昼もピザとか、夜はモデルたちがたむろしているパーティに潜り込むという、50過ぎの男がぐうたら生活を満喫しているようじゃ、どうしようもない。
しかし、恰好だけは崩さないので、トイレで顔の髭剃りをしアイロンを掛けたワイシャツにネクタイ、スーツ姿に身支度を整える。
時にはジムのシャワーで体を洗い流し、洗濯、アイロンがけもする。そこに彼の人としてプライドを感じるも、だが、もはや骨と皮の人生であろう。
それでも、ニューヨークという街にしがみついて生き続ける。こういう男もいるんだという、その存在を映像に刻みつけたのはいいとして、そこから先に踏み込まないことへの物足りなさもある。
ある日は、陽気でエネルギッシュで、ある日は落ち込む。だがそれだけである。彼は負け犬だと思う。負け犬でもせめて本気の遠吠えを聴かせて欲しいですね。
それでも、元モデル仲間で、今は映像作家をするオーストラリア人の監督が、彼との再会を機に始めた企画であり、この信頼関係が一番のマジカル。
生きていればいろいろあるよね。しかし、元モデルでイケメンで今は写真家という、いい意味で見始めた時と、観終わったときの被写体の印象がこんなにも変わるドキュメンタリーは珍しいと思う。
マーク・レイ(Mark Reay)履歴
1959年6月25日生まれ。ニュージャージー州出身。少年時代は5人家族(両親・兄・姉)の中で育つ。サウスカロライナのチャールストン大学の経営学部卒。ニュージャージーの輸入業者で働いた後、4年間ヨーロッパでモデルとして活動しトップフォトグラファーとの仕事を経験する。1994年、演技の学校へ行き写真家としても働き始める。2000年には再びモデルとしてヨーロッパで活動、2007年にアメリカに戻り、ファッション・ウィークの期間中、『デイズド・アンド・コンフューズド』誌用の写真を撮影。そしてニューヨークでホームレス生活をしながらモデル兼俳優、フォトグラファーとして働くようになる。
2017年劇場鑑賞作品・・・63アクション・アドベンチャーランキング
あらすじ:アメリカのニューヨーク。52歳のマーク・レイはファッションモデル兼フォトグラファーとして活動し、ブランドスーツとスマートな身のこなしが板についている。ところが、豪勢なパーティーに出席した後にマークが帰ったのは、雑居ビル街のアパートの屋上だった。家を持たず、家族や恋人も作らないマークの日常に、カメラは3年間密着する。
<感想>原題が「HOMME LESS」と言うのだが、ホームレスという意味とアパレルで使う「男」を意味するフランス語「オム」を架けていると言うのだ。モデルで写真家、52歳のイケメン親父、昼はNYを颯爽と闊歩するマーク・レイ。ニューヨークに盗り憑かれて抜け出せなくなった男の記録である。
雑居ビルの屋上の隅っこに、ビニールテントで囲って寝袋で寝ている。つまり野宿で、着替えはジムのロッカーを幾つも借りてしまう。もちろんカメラもPCも、フォトグラファーを自負しているのでカメラ持っているし、喫茶店でPCで画像処理とかしているみたいだ。
ファッション業界の片隅で仕事を探す主人公は惨めだが、己の滑稽さに自覚的でもある。ホームレスは自由な生き方、なんて発言は一欠けらもない。冬のニューヨークの寒さは厳しいもので、よく病気もせずに屋上で野宿生活をしている。夏は屋上から見える摩天楼に花火が上がって美しい眺めであるが、もし、この生活を警察に通報されたら、それで逮捕される。
お金は、写真を撮っては雑誌社へ売り込みに行き、映画のエキストラがたまにあり、クリスマスには赤いサンタの着ぐるみを着て、デパートでアルバイト。モデルの仕事なんてゼロで、金の入りが少なくて家賃のある部屋は借りられないのだ。食生活は充実しており、朝食は喫茶店でモーニングをとり、お昼もピザとか、夜はモデルたちがたむろしているパーティに潜り込むという、50過ぎの男がぐうたら生活を満喫しているようじゃ、どうしようもない。
しかし、恰好だけは崩さないので、トイレで顔の髭剃りをしアイロンを掛けたワイシャツにネクタイ、スーツ姿に身支度を整える。
時にはジムのシャワーで体を洗い流し、洗濯、アイロンがけもする。そこに彼の人としてプライドを感じるも、だが、もはや骨と皮の人生であろう。
それでも、ニューヨークという街にしがみついて生き続ける。こういう男もいるんだという、その存在を映像に刻みつけたのはいいとして、そこから先に踏み込まないことへの物足りなさもある。
ある日は、陽気でエネルギッシュで、ある日は落ち込む。だがそれだけである。彼は負け犬だと思う。負け犬でもせめて本気の遠吠えを聴かせて欲しいですね。
それでも、元モデル仲間で、今は映像作家をするオーストラリア人の監督が、彼との再会を機に始めた企画であり、この信頼関係が一番のマジカル。
生きていればいろいろあるよね。しかし、元モデルでイケメンで今は写真家という、いい意味で見始めた時と、観終わったときの被写体の印象がこんなにも変わるドキュメンタリーは珍しいと思う。
マーク・レイ(Mark Reay)履歴
1959年6月25日生まれ。ニュージャージー州出身。少年時代は5人家族(両親・兄・姉)の中で育つ。サウスカロライナのチャールストン大学の経営学部卒。ニュージャージーの輸入業者で働いた後、4年間ヨーロッパでモデルとして活動しトップフォトグラファーとの仕事を経験する。1994年、演技の学校へ行き写真家としても働き始める。2000年には再びモデルとしてヨーロッパで活動、2007年にアメリカに戻り、ファッション・ウィークの期間中、『デイズド・アンド・コンフューズド』誌用の写真を撮影。そしてニューヨークでホームレス生活をしながらモデル兼俳優、フォトグラファーとして働くようになる。
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