寡作ながらも世界が注目する巨匠、テレンス・マリック監督による人間ドラマ。成功を手にしたものの心にむなしさを抱える脚本家が、6人の女性たちとの出会いを通じ、自らの過去と向き合うさまを描く。自分の進むべき道を求めてさまよう主人公をクリスチャン・ベイルが演じるほか、ケイト・ブランシェット、ナタリー・ポートマンら豪華キャストが集結。マリック監督とは4度目のタッグとなる撮影監督エマニュエル・ルベツキによる詩的な映像にも注目。
あらすじ:気鋭の脚本家として注目を浴びるリック(クリスチャン・ベイル)は、ハリウッド映画の脚本執筆を引き受けたことから華やかな生活に溺れ、自分を見失っていく。その一方で、心の奥底にあるむなしさを払拭(ふっしょく)できず、自分が進むべき道を求めてさまよう日々を送っていた。そんな彼が、巡り合った6人の女性たちに導かれるように、自らの過去と向き合い始める。
<感想>タイトルにある“聖杯”とは中世ヨーロッパの伝説で、聖杯さがしを国王から命じられた騎士が、紆余曲折の末に聖杯を手に入れ、王国の再興を果たすというものである。本作では、クリスチャン・ベイルが現代の騎士となり、聖杯=理想の女を探すことになる。原題は「ナイト・オブ・カップス」と女性を意味するカップが複数になっている。つまり、たくさんの女をゲットした女たらしとも言えよう。この映画の中では、聖杯=女と二つの意味を持たせている。簡単に言えばテレンス・マリック監督の自叙伝みたいなもの。
タロットカードにちなんで作中に出てくる8つのワード。「月」「吊るされた男」「隠者」「審判」「塔」「女教皇」「死」「自由」それぞれに、女優が入れ替わっており、
最初の「月」ではデラ(イモージェン・ブーツ)が派手目な化粧で、パーティで出会うセレブたちは、リックに助言を与える刺激的な存在。奔放な女性デラは、「違う生き方があるはず」とリックに提言し、ポールダンサーのカレン(テリー・パーマー)は、「周りに闇が見える」と告げて、束の間の逢瀬を楽しむ。
すれ違いの生活が続き、離婚するはめになる献身的な女医で妻のナンシー(ケイト・ブランシェット)とは、リックにとって安らぎと喜びを共有できる理想の女。
だが、多忙な日々に追われるナンシーと、刺激的な世界に溺れていくリックの心は、いつしか妻との生活がすれ違っていく。
モデルのヘレン(フリーダ・ピント)や、そして運命の黒いドレスを身にまとう人妻エリザベス(ナタリー・ポートマン)と激しい恋に落ちたリックだが、2人は互いに運命の人だと確信し合い、リックはエリザベスに結婚を申し込むのだが、・・・。彼女は妊娠をしたけれど、夫の子供かもしれないといい別れてしまう。
享楽的な日々の中で自身を見失った脚本家と美しい女たちとの出会いを描いている。女たちとの出会いと別れと共に、父親との葛藤、仲の良かった弟の自殺、もう一人の弟は心を病んでいる。名門ハーバード大学を卒業し将来を嘱望されながらも、映画界の華やかさに惹かれて脚本家となった経緯など、これはテレンス・マリック監督の実体験が盛り込まれているといっていいでしょう。
主人公がしばしば水に飛び込み、死と再生の儀式を行い、新しい世界を見ようとする。この映画では聖杯は真珠であるとされているが、それは、他者の目に宿る光がその真珠なのだろう。
特に良かったのが、撮影監督のエマニュエル・ルベツキが撮る海辺のシーンの映像が心に残るのだが、リックがナタリー・ポートマンの足の指を舐めるシーンがとてもエロくて、主人公の心象風景にシンクロするとおぼしき光景を捉えた、ルベツキの壮大な映像を快楽として受ける成熟したセンスは持ち合わせていない。
従来ならば前衛映画や、実験映画と言われたような作品だと思う。豪邸にプールサイドでの乱痴気騒ぎ、美しい誘惑的なプレイメイトたち。次々と女たちがあらわれ、そして束の間のセックス・フレンドたち。そのような快楽的な生活の中でも主人公は、何故私はここにいるのか?・・・という問いに戸惑っている。ちなみに男優もたくさん出てきているが、何故かアントニオ・バンデラスだけはカッコよかった。
映像は確かに美しいが、売れっ子脚本家の目に映るハリウッドは、荒涼たる荒地なのだ。「甘い生活」の現代版と類似しているが、どうも好きになれない。
2016年劇場鑑賞作品・・・282<映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング/
あらすじ:気鋭の脚本家として注目を浴びるリック(クリスチャン・ベイル)は、ハリウッド映画の脚本執筆を引き受けたことから華やかな生活に溺れ、自分を見失っていく。その一方で、心の奥底にあるむなしさを払拭(ふっしょく)できず、自分が進むべき道を求めてさまよう日々を送っていた。そんな彼が、巡り合った6人の女性たちに導かれるように、自らの過去と向き合い始める。
<感想>タイトルにある“聖杯”とは中世ヨーロッパの伝説で、聖杯さがしを国王から命じられた騎士が、紆余曲折の末に聖杯を手に入れ、王国の再興を果たすというものである。本作では、クリスチャン・ベイルが現代の騎士となり、聖杯=理想の女を探すことになる。原題は「ナイト・オブ・カップス」と女性を意味するカップが複数になっている。つまり、たくさんの女をゲットした女たらしとも言えよう。この映画の中では、聖杯=女と二つの意味を持たせている。簡単に言えばテレンス・マリック監督の自叙伝みたいなもの。
タロットカードにちなんで作中に出てくる8つのワード。「月」「吊るされた男」「隠者」「審判」「塔」「女教皇」「死」「自由」それぞれに、女優が入れ替わっており、
最初の「月」ではデラ(イモージェン・ブーツ)が派手目な化粧で、パーティで出会うセレブたちは、リックに助言を与える刺激的な存在。奔放な女性デラは、「違う生き方があるはず」とリックに提言し、ポールダンサーのカレン(テリー・パーマー)は、「周りに闇が見える」と告げて、束の間の逢瀬を楽しむ。
すれ違いの生活が続き、離婚するはめになる献身的な女医で妻のナンシー(ケイト・ブランシェット)とは、リックにとって安らぎと喜びを共有できる理想の女。
だが、多忙な日々に追われるナンシーと、刺激的な世界に溺れていくリックの心は、いつしか妻との生活がすれ違っていく。
モデルのヘレン(フリーダ・ピント)や、そして運命の黒いドレスを身にまとう人妻エリザベス(ナタリー・ポートマン)と激しい恋に落ちたリックだが、2人は互いに運命の人だと確信し合い、リックはエリザベスに結婚を申し込むのだが、・・・。彼女は妊娠をしたけれど、夫の子供かもしれないといい別れてしまう。
享楽的な日々の中で自身を見失った脚本家と美しい女たちとの出会いを描いている。女たちとの出会いと別れと共に、父親との葛藤、仲の良かった弟の自殺、もう一人の弟は心を病んでいる。名門ハーバード大学を卒業し将来を嘱望されながらも、映画界の華やかさに惹かれて脚本家となった経緯など、これはテレンス・マリック監督の実体験が盛り込まれているといっていいでしょう。
主人公がしばしば水に飛び込み、死と再生の儀式を行い、新しい世界を見ようとする。この映画では聖杯は真珠であるとされているが、それは、他者の目に宿る光がその真珠なのだろう。
特に良かったのが、撮影監督のエマニュエル・ルベツキが撮る海辺のシーンの映像が心に残るのだが、リックがナタリー・ポートマンの足の指を舐めるシーンがとてもエロくて、主人公の心象風景にシンクロするとおぼしき光景を捉えた、ルベツキの壮大な映像を快楽として受ける成熟したセンスは持ち合わせていない。
従来ならば前衛映画や、実験映画と言われたような作品だと思う。豪邸にプールサイドでの乱痴気騒ぎ、美しい誘惑的なプレイメイトたち。次々と女たちがあらわれ、そして束の間のセックス・フレンドたち。そのような快楽的な生活の中でも主人公は、何故私はここにいるのか?・・・という問いに戸惑っている。ちなみに男優もたくさん出てきているが、何故かアントニオ・バンデラスだけはカッコよかった。
映像は確かに美しいが、売れっ子脚本家の目に映るハリウッドは、荒涼たる荒地なのだ。「甘い生活」の現代版と類似しているが、どうも好きになれない。
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