セルフレス／覚醒した記憶 ★★★・５

『デッドプール』などのライアン・レイノルズが主演を務め、『白雪姫と鏡の女王』などのターセム・シン監督がメガホンを取って放つSFアクション。余命半年と宣告された資産家が新たな肉体を得て復活したものの、思いがけないトラブルに巻き込まれる姿を活写する。復活前の主人公を、『ガンジー』などの名優ベン・キングズレーが好演。明晰な頭脳と高度な戦闘能力を持つハイブリッドの男が繰り広げる孤独な戦いに興奮。

＜感想＞体を癌に侵されて余命半年を言い渡され大富豪の男が、意識だけを別の肉体に転送して、若い肉体を手に入れることができたら、というそんな斬新な発想のＳＦアクション。監督は「ザ・セル」、「落下の王国」（０６）、「インモータルズ・神々の戦い」「白雪姫と鏡の女王」など、ド派手なVFX映像を得意とし、圧倒的な映像美で知られるターセム・シンである。
過剰なまでの装飾を排し、リアルなテーマとスピード感あふれるアクションを魅せる近未来ＳＦ作品になっています。主人公には「デッドプール」の大ヒットも記憶に新しいライアン・レイノルズのセクシーな魅力もさることながら、大富豪の老ダミアン役を演じるベン・キングズレーの渋みも作品に奥行きをもたらしているようです。

斬新なテーマは不死と道徳。近未来の題材ながら、これまでのどのターセム作品よりも現代性に富んでいるといっていい。現代人の寿命は延び、老後が長くなっているけれど、そういう中で人間が長寿を求める傾向を強く感じる昨今。
実際に、発展途上国の貧しい人の臓器が富裕層の長寿に利用されているわけで、そこには格差社会の現実もある。富める者は長寿のために、どこまでやるのか。モラルの点も含めて、面白いテーマの作品ですよね。
中でもターセム監督らしき煌びやかさが垣間見えるのが、冒頭のダミアンが住むマンションの部屋の金ぴかな室内。そのマンションは、今話題のあの人（ドナルド・トランプ）の所有物だそうです。

物語は、ニューヨークの超セレブの建築家ダミアン（ベン・キングズレー）は、ある日余命半年を言い渡される。一人娘との関係もぎくしゃくしたままの彼は自らの運命を呪うが、天才科学者オルブライト（マシュー・グード）に勧められ、遺伝子操作で作り出した新たな肉体に、68歳のダミアンの頭脳を転送するというものだったが……。そして、新たな肉体の名前はエドワードで、若く健康な体を手に入れる。彼は天涯孤独の身だ。

訓練で体が馴染むと若者としての新生活が始まった。だが、１日１錠必ず飲むように言われていた拒絶反応抑制剤を飲み忘れたダミアンは、強烈な幻覚が彼を襲う。
ある時あまりにもリアルな幻覚であって、そのビジョンを追ってセントルイスに赴き、自分の肉体が実は培養されたものではなく、マークという元特殊部隊の兵士のものだったことを知る。

それに、給水塔のある家に行くと、若い女性とその幼い娘が、若い体のエドワードには妻マデリーンがいて病弱な娘がいることを知る。女性は、ダミアンの姿を見て激しく動揺し、夫は死んだと知らされていたからだ。
そしてその秘密を知ったダミアンの元に、博士オルブライトの放った暗殺者が現れるのだ。体は元特殊部隊の兵士なので、強いのなんのと襲撃してくる敵を殺して、キッチンの床下から３人は逃げ出し、車で逃走する。

物凄いカーチェイス・アクションも、暗殺者との格闘もなんのそのでダミアンは傷一つ受けてないのだ。友人のマーティンに電話をして、彼の豪邸へ身を隠す３人。そこで見たものは、マーティンの死んだはずの息子だった。彼の息子もダミアンと同じオルブライトの力で脳を転送した別人の男の子だった。

結果として、娘は姿が父親のダミアンに懐いており、マークは優しい子煩悩の父親だったのだろう。自分は娘とはギクシャクとした関係なのに、目の前にいる幼い娘が自分に懐いてくる。だから、ダミアンが自分の身体であるマークに戻るということで、薬を飲まずに潜在意識のマークに戻ることにするわけ。病気の娘の手術の金のために、自分の身体をオルブライトに差し出したマーク。
今後の生活のお金は、ダミアンが生きている時に、スイス銀行に預けていた金を自分の墓に埋めて置いたことだ。その金で、マークに戻って、遠いカリブ島で妻と娘と３人の家族で暮らすことを選んだダミアン。それに、疎遠だった娘クレアとも最後に会い、父親から預かったという、娘を愛する気持ちを綴った手紙を渡すのだ。ラストが、ハッピーエンドで終わるのも良かった。

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