1930年代初頭の激動の上海を舞台に、歴史の波に翻弄される一組の男女の切ない運命を描いた本格的ラブ・サスペンス。2003年第56回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、高い評価を受けている。主演は超大作「SAYURI」が控える、アジアが誇る女優チャン・ツィイー。監督は「ふたりの人魚」でロッテルダム映画祭グランプリを獲得したロウ・イエ。
あらすじ:1928年、満州。日中関係の緊張が高まるなかで、彼女の兄は地下活動に身を投じていた。ついにシンシアが怖れていた日がやって来た。伊丹が日本軍に召集されたのだ。旅立つ駅のホームで、約束の時間になっても現れないシンシアを捜す伊丹。シンシアは行き交う人の影から、泣きながら伊丹を見送るのだった。そんな彼女にさらなる悲しみが襲いかかる。
目の前で、兄が日本の愛国主義者に暗殺されたのだ。1931年、上海。楽しい時を過ごす恋人たちの瞳には、何の翳りもなかった。まだ、この時は。永遠の愛を誓い合ったスードゥー(リィウ・イェ)とイーリン(リー・ビンビン)は、日本軍によって占領された街を席巻する激しい抗議運動よりも、2人の未来だけが気がかりだった。
ある日、イーリンは仕事で上海を離れていたスードゥーを迎えるために駅へ向かっていた。スードゥーが誤って、隣席の男の蝶のブローチが付いた上着を着てホームに降り立った時から、運命の歯車が狂い始めた。男はテロ組織“パープル・バタフライ"が、日本軍諜報機関の最高責任者・山本を暗殺するために雇った殺し屋だったのだ。(作品資料より)
<感想>1928年の満州、日本人の伊丹(仲村トオル)は、まだ少女のようなあどけなさが残る愛らしい顔立ちの女の名は、シンシア(チャン・ツィイー)。シンシアという中国人少女と恋に落ちるが、突如、東京に召還される。それから3年後の上海。シンシアは、兄を日本人の愛国主義者に殺され、“パープル・バタフライ”という反日組織のメンバーになっていた。一方、伊丹は、日本軍の諜報部員として上海に赴任する。そこで2人は再会するのですが・・・。
シンシアにチャン・ツィイー、伊丹に仲村トオル、反日組織の一員と間違われて婚約者を殺された男には、「山の郵便配達」のリィウ・イエ、彼の婚約者にリー・ビンビン。演技力と存在感のある4人が、愛と宿命と使命感、そしてどうしようもない感情の間で揺れ動きます。そこに、シンシアに想いを寄せる“パープル・バタフライ”のリーダーも絡め、さらに関係も感情も複雑に交錯していきます。
混沌とした時代のムード、そんな中でも恋人たちの熱い想いは誰も侵すことのできない領域にあり、余計に刹那さの情熱を昂めていきます。
激動の時代の波に翻弄される2組の恋人たちの悲しい運命を、ロマンチックなムードたっぷりに、中国の新鋭監督ロウ・イエが、甘く鋭く描き出していて・・・、 “ムード”の濃厚さで全てを包み込み、物語の切なさを、常に薄暗く、くすぶったような、雨に濡れた湿った映像に魅了させられます。
それにしても長いカットシーンがあります。スードゥーの恋人が彼を迎えに長い駅のプラットフォームを歩いている、・・・向こうには、三人連れが自動車の前をゆっくりと歩いていくのが見えます、・・・そして画面はその三人連れに変わり、かれらがレールをまたぎ歩道橋を渡り、こちら側へ来る頃に列車がその下を潜って来る。三人は橋の階段を下りて列車を待つ人ごみの中にへと・・・、長い長いシーンがあります。
この長い長いシーンはやがて起こる事件を予感させており、この時代の中国に対する日本人の思い入れは強く、深いものです。この頃を題材にして日本人が作った映画は中国に対する罪悪感を甘い感傷で包んだものが多いのですが、この映画ほどその当時の本当の雰囲気をリアルに表現している作品はないと想います。
この映画は政治的なメッセージを意図しているのか、ひっきりなしに反日デモのシーンが出てきますが、当時の上海市中でこれ程までに過激な抗議が繰り返されていたことは知らなかった。特に最後の上海事変や南京虐殺の場面が実写で出てくると、その意図は?・・・何だったのだろう。私がこの作品での“上海”の持つイメージは、もっと甘く切ない“上海”のノスタルジックなイメージ?・・・だけだと想います。でも、やはり史実も忘れてはならないと伝えたかったのですね。
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あらすじ:1928年、満州。日中関係の緊張が高まるなかで、彼女の兄は地下活動に身を投じていた。ついにシンシアが怖れていた日がやって来た。伊丹が日本軍に召集されたのだ。旅立つ駅のホームで、約束の時間になっても現れないシンシアを捜す伊丹。シンシアは行き交う人の影から、泣きながら伊丹を見送るのだった。そんな彼女にさらなる悲しみが襲いかかる。
目の前で、兄が日本の愛国主義者に暗殺されたのだ。1931年、上海。楽しい時を過ごす恋人たちの瞳には、何の翳りもなかった。まだ、この時は。永遠の愛を誓い合ったスードゥー(リィウ・イェ)とイーリン(リー・ビンビン)は、日本軍によって占領された街を席巻する激しい抗議運動よりも、2人の未来だけが気がかりだった。
ある日、イーリンは仕事で上海を離れていたスードゥーを迎えるために駅へ向かっていた。スードゥーが誤って、隣席の男の蝶のブローチが付いた上着を着てホームに降り立った時から、運命の歯車が狂い始めた。男はテロ組織“パープル・バタフライ"が、日本軍諜報機関の最高責任者・山本を暗殺するために雇った殺し屋だったのだ。(作品資料より)
<感想>1928年の満州、日本人の伊丹(仲村トオル)は、まだ少女のようなあどけなさが残る愛らしい顔立ちの女の名は、シンシア(チャン・ツィイー)。シンシアという中国人少女と恋に落ちるが、突如、東京に召還される。それから3年後の上海。シンシアは、兄を日本人の愛国主義者に殺され、“パープル・バタフライ”という反日組織のメンバーになっていた。一方、伊丹は、日本軍の諜報部員として上海に赴任する。そこで2人は再会するのですが・・・。
シンシアにチャン・ツィイー、伊丹に仲村トオル、反日組織の一員と間違われて婚約者を殺された男には、「山の郵便配達」のリィウ・イエ、彼の婚約者にリー・ビンビン。演技力と存在感のある4人が、愛と宿命と使命感、そしてどうしようもない感情の間で揺れ動きます。そこに、シンシアに想いを寄せる“パープル・バタフライ”のリーダーも絡め、さらに関係も感情も複雑に交錯していきます。
混沌とした時代のムード、そんな中でも恋人たちの熱い想いは誰も侵すことのできない領域にあり、余計に刹那さの情熱を昂めていきます。
激動の時代の波に翻弄される2組の恋人たちの悲しい運命を、ロマンチックなムードたっぷりに、中国の新鋭監督ロウ・イエが、甘く鋭く描き出していて・・・、 “ムード”の濃厚さで全てを包み込み、物語の切なさを、常に薄暗く、くすぶったような、雨に濡れた湿った映像に魅了させられます。
それにしても長いカットシーンがあります。スードゥーの恋人が彼を迎えに長い駅のプラットフォームを歩いている、・・・向こうには、三人連れが自動車の前をゆっくりと歩いていくのが見えます、・・・そして画面はその三人連れに変わり、かれらがレールをまたぎ歩道橋を渡り、こちら側へ来る頃に列車がその下を潜って来る。三人は橋の階段を下りて列車を待つ人ごみの中にへと・・・、長い長いシーンがあります。
この長い長いシーンはやがて起こる事件を予感させており、この時代の中国に対する日本人の思い入れは強く、深いものです。この頃を題材にして日本人が作った映画は中国に対する罪悪感を甘い感傷で包んだものが多いのですが、この映画ほどその当時の本当の雰囲気をリアルに表現している作品はないと想います。
この映画は政治的なメッセージを意図しているのか、ひっきりなしに反日デモのシーンが出てきますが、当時の上海市中でこれ程までに過激な抗議が繰り返されていたことは知らなかった。特に最後の上海事変や南京虐殺の場面が実写で出てくると、その意図は?・・・何だったのだろう。私がこの作品での“上海”の持つイメージは、もっと甘く切ない“上海”のノスタルジックなイメージ?・・・だけだと想います。でも、やはり史実も忘れてはならないと伝えたかったのですね。
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