「グレート・ビューティー/追憶のローマ」のパオロ・ソレンティーノ監督がマイケル・ケインを主演に迎え、セレブが集うアルプスの高級ホテルで友人の映画監督と優雅なバカンスを送る老作曲家の憂鬱と葛藤を美しくゴージャスな映像で描き出した人生ドラマ。共演はハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ジェーン・フォンダ。
あらすじ:英国を代表する世界的音楽家のフレッド・バリンジャー。80歳を過ぎ、現役を引退し、作曲や指揮をすることもなくなった。今は、アルプスの山々を間近に見晴らすスイスの高級リゾートホテルに宿泊し、優雅なバカンスを送っていた。一方、同じホテルに宿泊する長年の親友で映画監督のミックは、現役にこだわり、若いスタッフたちと新作の準備に精を出していた。それでも2人で顔を合わせれば、もっぱら互いのままならない肉体についてグチをこぼす日々。そんなフレッドのもとに、英国の女王陛下からある依頼が舞い込む。それは、彼が書いた不朽の名曲『シンプル・ソング』を彼の指揮で演奏してほしいというものだった。そんな栄誉ある依頼を、なぜか頑なに断るフレッドだったが…。
<感想>スイスの伝統的なリゾ-トホテル、トーマス・マンが「魔の山」を執筆したアルプスの山麓にある高級ホテルを舞台に、引退した音楽家と映画監督を中心に描かれる絢爛たる人間模様を描いている。他にも伝説的なサッカー選手、マラドーナ似の肥満男を初めとして、芸術家の苦悩を描く時代錯誤な企画でもある。
見どころは、主人公の音楽家にマイケル・ケインが、映画監督にはハーヴェイ・カイテル、フレッドの娘にレイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ハリウッドの大女優として出てくるジェーン・フォンダ。それにしても、名優たちの無駄遣いをしているように見えた。
こういう重厚な世界観、空気感を生み出せるというのは、すごい才能だと思います。イタリアの若き巨匠、パオロ・ソレンティーノ。1970年生まれというから、しかし映画は巨匠の貫禄が伺われ騙されます。
引退した音楽家マイケル・ケインと遺作映画を撮ろうとしている監督のハーヴェイ・カイテルが主演では、渋過ぎると思っていたら、物語も仕掛けも派手な作品になっていた。それは、物語の中盤で、ホテルの出し物として野外ステージで、大道芸人たちがショーを披露するのである。それを見ているフレッドたち。
そのうち一人の人気俳優が、ありきたりでちっとも面白くないと大道芸人を批判する。火を吹く男と言えばフェリーニが好んで映画の中で演出したもの。それに対して「面白くない」と毒づかせるのは、監督がフェリーニへのオマージュを裏返して表現したかったのかもしれない。
金髪に黄色いドレスで、黄色づくめのジェーン・フォンダが、映画監督のミックに向かい、「あんたのクソったれ映画なんかなくっても、人生は続くのよ」とハリウッドからわざわざ言いにきて、映画をぶち壊すし。全編がめまぐるしい娯楽映画になっている。
だが、主人公の二人は物理的に衰えた肉体を丹念に写し取ることで、徹底的に老いと向き合いながら、そこに新たな美が形成されていく。最もビジュアル的な現象の一つである老いを、人間の老いについては、年齢を重ねた人物を画面に登場させるだけで語ろうとするのは、余りにも無頓着すぎるのではと思える。
女性マッサージ師の素手で揉み解される老境の音楽家の肌、マラドーナを思わせる巨漢の男の体積と重力たるや。これみよがしに美の価値観を表すミス・ユニバースの若さあふれた肢体よりも、ずっと豊で雄弁であります。
ラストのイギリス女王の前で、不朽の名曲『シンプル・ソング』をオーケストラと共に、指揮をするマイケルの堂々たる人生を物語るようで、絶対に歌手は自分の妻でなければならぬと決めていたのに、妻は認知症で歌を忘れたカナリアであった。だから、アジア系のオペラ女性歌手の歌う場面では、本当に見とれてしまった。
2016年劇場鑑賞作品・・・120映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:英国を代表する世界的音楽家のフレッド・バリンジャー。80歳を過ぎ、現役を引退し、作曲や指揮をすることもなくなった。今は、アルプスの山々を間近に見晴らすスイスの高級リゾートホテルに宿泊し、優雅なバカンスを送っていた。一方、同じホテルに宿泊する長年の親友で映画監督のミックは、現役にこだわり、若いスタッフたちと新作の準備に精を出していた。それでも2人で顔を合わせれば、もっぱら互いのままならない肉体についてグチをこぼす日々。そんなフレッドのもとに、英国の女王陛下からある依頼が舞い込む。それは、彼が書いた不朽の名曲『シンプル・ソング』を彼の指揮で演奏してほしいというものだった。そんな栄誉ある依頼を、なぜか頑なに断るフレッドだったが…。
<感想>スイスの伝統的なリゾ-トホテル、トーマス・マンが「魔の山」を執筆したアルプスの山麓にある高級ホテルを舞台に、引退した音楽家と映画監督を中心に描かれる絢爛たる人間模様を描いている。他にも伝説的なサッカー選手、マラドーナ似の肥満男を初めとして、芸術家の苦悩を描く時代錯誤な企画でもある。
見どころは、主人公の音楽家にマイケル・ケインが、映画監督にはハーヴェイ・カイテル、フレッドの娘にレイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ハリウッドの大女優として出てくるジェーン・フォンダ。それにしても、名優たちの無駄遣いをしているように見えた。
こういう重厚な世界観、空気感を生み出せるというのは、すごい才能だと思います。イタリアの若き巨匠、パオロ・ソレンティーノ。1970年生まれというから、しかし映画は巨匠の貫禄が伺われ騙されます。
引退した音楽家マイケル・ケインと遺作映画を撮ろうとしている監督のハーヴェイ・カイテルが主演では、渋過ぎると思っていたら、物語も仕掛けも派手な作品になっていた。それは、物語の中盤で、ホテルの出し物として野外ステージで、大道芸人たちがショーを披露するのである。それを見ているフレッドたち。
そのうち一人の人気俳優が、ありきたりでちっとも面白くないと大道芸人を批判する。火を吹く男と言えばフェリーニが好んで映画の中で演出したもの。それに対して「面白くない」と毒づかせるのは、監督がフェリーニへのオマージュを裏返して表現したかったのかもしれない。
金髪に黄色いドレスで、黄色づくめのジェーン・フォンダが、映画監督のミックに向かい、「あんたのクソったれ映画なんかなくっても、人生は続くのよ」とハリウッドからわざわざ言いにきて、映画をぶち壊すし。全編がめまぐるしい娯楽映画になっている。
だが、主人公の二人は物理的に衰えた肉体を丹念に写し取ることで、徹底的に老いと向き合いながら、そこに新たな美が形成されていく。最もビジュアル的な現象の一つである老いを、人間の老いについては、年齢を重ねた人物を画面に登場させるだけで語ろうとするのは、余りにも無頓着すぎるのではと思える。
女性マッサージ師の素手で揉み解される老境の音楽家の肌、マラドーナを思わせる巨漢の男の体積と重力たるや。これみよがしに美の価値観を表すミス・ユニバースの若さあふれた肢体よりも、ずっと豊で雄弁であります。
ラストのイギリス女王の前で、不朽の名曲『シンプル・ソング』をオーケストラと共に、指揮をするマイケルの堂々たる人生を物語るようで、絶対に歌手は自分の妻でなければならぬと決めていたのに、妻は認知症で歌を忘れたカナリアであった。だから、アジア系のオペラ女性歌手の歌う場面では、本当に見とれてしまった。
2016年劇場鑑賞作品・・・120映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング