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ボーダーライン ★★★★

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メキシコの麻薬組織壊滅を目的とする特殊チームにスカウトされた正義感あふれるFBI女性捜査官が、突然放り込まれた麻薬戦争の最前線で目の当たりにする衝撃の実態をリアルかつ極限の緊張感で描き出した社会派サスペンス・アクション。主演は「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のエミリー・ブラント、共演にベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン。監督は「灼熱の魂」「プリズナーズ」のドゥニ・ヴィルヌーヴ。
あらすじ:FBIの誘拐即応班を指揮する女性捜査官、ケイト・メイサー(エミリー・ブラント)。ある日その活躍が認められ、メキシコの麻薬組織“ソノラ・カルテル”の壊滅と最高幹部マヌエル・ディアスの拘束という極秘任務を帯びた特殊部隊にスカウトされる。こうしてリーダーの特別捜査官マット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)やコンサルタントとしてチームに同行する謎のコロンビア人アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)ともに国境を越えてメキシコのフアレスに向かったケイト。しかしそこで待っていたのは、正義や法の手続きなどが一切通用しない、暴力のみが支配する麻薬戦争のあまりにも深い闇だった。

<感想>善悪の境界を曖昧にさせる麻薬戦争の過酷な現実。メキシコから国境を越えてアメリカへ運び込まれ、人々の心身をむしばむ“麻薬”という深刻な社会問題であり、その危機に対するために結成された特殊チームのミッションの行方を骨太にかつリアルに描き出している。
メキシコの麻薬王が率いるカルテルを、FBIが中心となって追い詰める物語であるが、カルテルによる残虐な行為や、裏取引、さらには捜査チームの内紛など、あらゆる要素がリアリティ満点に迫ってくるのだ。観ているこちら側にも、犯罪と捜査の現場に立ち会う感覚になってくるようでした。

それに、主人公のFBI捜査官が女性なのも斬新であり、演じているエミリー・ブラントが、正義感と現実の板挟みになる苦悩はもちろんのこと、激しいアクションも見事にこなして作品のテンションを盛り上げてくれる。
2時間緊張しっぱなしで、極限の臨場感が凄いのだ。誘拐事件捜査から、一軒家の壁の中から死体発見という冒頭部分に異様なドキドキ感にさせられる。その後も、緊迫感が一瞬たりとも途切れないのだ。

メキシコでの突然の銃撃戦や、拷問まがいの取り調べも、さらにはヒロインのケイトを襲う悪夢のような訓練など、臨場感満点でとらえた激烈なシーンがあちこちに散らばっているのだ。特に気を許して飲み屋でダンスを踊り、見知らぬ男との一夜を過ごそうとラブシーンかと思えば、いきなり首を絞められるケイト。助けてくれたのは、ベニチオ演じるアレハンドロ。ということは、ケイトはここでは、エサであり喰いついた麻薬密売人の男を捕まえるために泳がせていたわけ。

カルテルを混乱させたい特別捜査官のマットは、口座の凍結などさまざまな裏工作を仕掛けるのだ。その操作方法に違和感を覚えるケイトなのだが、・・・。
法と無法の境界線があり、それをFBIの駆け出し女性捜査官が越えていくのだが、その葛藤を中心に捉えたのも上手くいったと思う。

国境で繰り広げられる攻防、想像を絶する現実がそこにある。メキシコで取引された大量の麻薬が、国境をすりぬけてアメリカへと流れ、巨万の富みを稼ぐやつら。もちろんアメリカ&メキシコ政府も黙ってはいない。
国境付近での両者のバトルが、護衛のメキシコ側の警察関係者は、殆どといっていいほど麻薬の売人側であり、信用ならないものばかり。だから観る者の背筋を凍らせる。

本作ではベニチオ演じるアレハンドロが刺客となり、仮眠中の彼を悪夢が襲うのは、それは妻が麻薬王のカルテルに首を切断され、娘は酸に入れられ殺されてしまったという、その強烈なトラウマ体験を映画では描いておらず、彼の内なる地獄絵図を安易には映し出してはいない。それはアレハンドロ復讐の意味でもカルテルを恨む気持ちも分るのだ。
一歩描き方を間違うと、ヤバい映画になってしまうテーマなのだが、「正義」の名の下に国境を越え、合法性も踏み越えて「悪」の打倒を叫ぶアメリカのレトリックには、世界がうんざりしているのだから。

麻薬犯罪は悪だが、それだけでは済まない現実に唖然とさせられる。ケイトが衝動的に、国家の不法性に食って掛かるのだが、そんなヒロインを視点人物に据えたことで、ヤバイテーマが爽快に感じた。

映画の中盤では、カルテルの信じがたい「国境越え」の作戦が明るみになるのだ。国境の近くで、地下にトンネルを掘りアリゾナへと通じていると言うのだ。そこから楽に出入りしているカルテルの麻薬売人たち。メキシコ警察のパトカーが待っていて、メキシコ人警官が麻薬の運び人となっている。

そのトンネルに入って行く捜査官ケイトたち。腐敗した現地警察に利用される警官「シカリオ」。映画のタイトルにもなっており、彼の家族を描く始まりと終わりがこの映画を右派アメリカ人の醜い喝采から救っていると思う。だから結末では激しく心がざわめくはずです。

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