『クリスマス・ストーリー』などのフランスの巨匠、アルノー・デプレシャンが監督と脚本を務めた人間ドラマ。長年海外生活をしてきた主人公がパリへ戻る途中、ひょんなことから若かりし日の思い出に浸る様子を丁寧に映す。新人のカンタン・ドルメールが青春時代、『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』などでデプレシャン監督と組んできたマチュー・アマルリックが現在の主人公を好演。かつて運命の恋に落ちた男女の青春の輝きに心奪われる。
あらすじ:外交官で人類学者のポール(マチュー・アマルリック)は長期に渡る海外生活に終止符を打ち、祖国フランスに帰ることに。だが、入国の際にパスポートに不備があることが判明し、彼は空港で足止めを食らう。次の日、自分と同姓同名のパスポートを持つ男性に、共産圏のスパイ容疑が掛かっていることを知り……。
<感想>偽のパスポートを巡るトラブルを機に、人類学者の脳裏に家族や若き日の旅、初恋といった思い出が色鮮やかによみがえり、人生を追走していくドラマである。主人公ポールの幼少時代と高校時代、それに大学時代の思い出を回想するシーンが多いですね。だから、マチュー・アマルリックが出演するのは、初めの空港と終わりの部分だけです。
20年前に遡り、普通ならもっと時間がかかるであろうに、2時間足らずで描いているのだが、殆どがドイツの高校生時代のエステルとの恋愛模様と、男友達との交流などが描かれているのだ。
学校の社会科見学での美術館へ行ったのに、友達に頼まれてソ連へと、緊迫のスパイ事件から、都市と田舎に引き裂かれる恋愛事情と、ジャンルまで越境するのだ。
お互いに好きなのに恋人のエステルを再登場させる時の美。女優を魅せる技という演出に驚く。裸やセックスが、実にいやらしくなく普通にご飯を食べたり、洗濯をしたりするような感覚で映っているのもいい。
青春時代の恋愛では、どうしてあんなことになったのだろうと思うのが普通だが、監督はそのことを良く捉えているようだ。青春を生きる者の生意気さとか、憧れや読んだ小説とか、聴いたレコード、ダンスに暴力沙汰などなど。すべてが懐かしく感情移入できるのは、監督が自らの記憶が作品に投影されているからだろう。
タイトルの「あの頃エッフェル塔の下で」の場面では、パリの大学に通うポールとパリから離れた田舎町に残るエステル。お互いに募る想いを毎日手紙に書き綴っていたが、異国の地にいたポールは、ある日エステルから思いがけない電話を受け取ることに。そして、エステルへの変わらぬ思いに気がついたポールは、数十年ぶりに手紙を読み返し、ある真実に気がつくのだった……。
大学時代に下宿をしたエッフェル塔の近くの屋根裏部屋での生活が映し出され、エステルも訪ねて来てくれ、それでも結婚までは成就しなかった二人の甘く切ない恋物語。
新人の俳優さんたちの若き日のポールを演じたカンタン・ドルメールとエステルを演じたルー・ロワ=ルコリネを始めとし、登場する役者たちが瑞々しくて、現在の主人公マチュー・アマルリックと、その人類学教師が印象的に映る。
エピローグの強烈な押話は、取り返しのつかない時間を失った哀しさと痛みに溢れ、誰もが一度は経験したであろう“一生一度の恋“。時を経て思い出すあの頃のことを、思い出すたびにこころの奥がチクリと痛くなる熱い思い出を。
「恋のエチュード」を越えているようで素晴らしいと思う。
2016年劇場鑑賞作品・・・36映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:外交官で人類学者のポール(マチュー・アマルリック)は長期に渡る海外生活に終止符を打ち、祖国フランスに帰ることに。だが、入国の際にパスポートに不備があることが判明し、彼は空港で足止めを食らう。次の日、自分と同姓同名のパスポートを持つ男性に、共産圏のスパイ容疑が掛かっていることを知り……。
<感想>偽のパスポートを巡るトラブルを機に、人類学者の脳裏に家族や若き日の旅、初恋といった思い出が色鮮やかによみがえり、人生を追走していくドラマである。主人公ポールの幼少時代と高校時代、それに大学時代の思い出を回想するシーンが多いですね。だから、マチュー・アマルリックが出演するのは、初めの空港と終わりの部分だけです。
20年前に遡り、普通ならもっと時間がかかるであろうに、2時間足らずで描いているのだが、殆どがドイツの高校生時代のエステルとの恋愛模様と、男友達との交流などが描かれているのだ。
学校の社会科見学での美術館へ行ったのに、友達に頼まれてソ連へと、緊迫のスパイ事件から、都市と田舎に引き裂かれる恋愛事情と、ジャンルまで越境するのだ。
お互いに好きなのに恋人のエステルを再登場させる時の美。女優を魅せる技という演出に驚く。裸やセックスが、実にいやらしくなく普通にご飯を食べたり、洗濯をしたりするような感覚で映っているのもいい。
青春時代の恋愛では、どうしてあんなことになったのだろうと思うのが普通だが、監督はそのことを良く捉えているようだ。青春を生きる者の生意気さとか、憧れや読んだ小説とか、聴いたレコード、ダンスに暴力沙汰などなど。すべてが懐かしく感情移入できるのは、監督が自らの記憶が作品に投影されているからだろう。
タイトルの「あの頃エッフェル塔の下で」の場面では、パリの大学に通うポールとパリから離れた田舎町に残るエステル。お互いに募る想いを毎日手紙に書き綴っていたが、異国の地にいたポールは、ある日エステルから思いがけない電話を受け取ることに。そして、エステルへの変わらぬ思いに気がついたポールは、数十年ぶりに手紙を読み返し、ある真実に気がつくのだった……。
大学時代に下宿をしたエッフェル塔の近くの屋根裏部屋での生活が映し出され、エステルも訪ねて来てくれ、それでも結婚までは成就しなかった二人の甘く切ない恋物語。
新人の俳優さんたちの若き日のポールを演じたカンタン・ドルメールとエステルを演じたルー・ロワ=ルコリネを始めとし、登場する役者たちが瑞々しくて、現在の主人公マチュー・アマルリックと、その人類学教師が印象的に映る。
エピローグの強烈な押話は、取り返しのつかない時間を失った哀しさと痛みに溢れ、誰もが一度は経験したであろう“一生一度の恋“。時を経て思い出すあの頃のことを、思い出すたびにこころの奥がチクリと痛くなる熱い思い出を。
「恋のエチュード」を越えているようで素晴らしいと思う。
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